「そうだ。
「えっ!?」
「アレさ、俺に見せるために着てくれてたんじゃねぇの? すげぇ……その、……か、……か……」
「か?」
「か、わい……かった、んだけど」
愛らしい
姉の柚子に、言葉足らずなところがいけないんだと散々ダメ出しをされた
「か、可愛かった……です、か?」
ホントに?とソワソワとコチラを見つめてくる羽理に、「ああ、……か、可愛かった! だからさ、その……
***
何だか
でも、確かに
「もぉ、仕方ないですね」
照れ隠し。
ふぅ、と溜め息まじりに言って立ち上がりながら、羽理は内心(もう! 今の私の態度、全然可愛くない!)と猛反省していた。
ソワソワと脱衣所で先程脱いだ、上と揃いの短パンに履き替えて戻ってきたら、
「は、恥ずかしくなるのでそう言う反応、禁止です!」
羽理も頬を
「いや、だって……お前があんまり俺好みだから……」
言って、
「けど、……なんか
だが、ややしてポツンと落とされた言葉に羽理は「ん?」と思って。
「考えてみりゃあ俺より先にお前のコレ、
言われてみれば何となく。
「
「ああ。俺に一番をくれ」
***
「よしっ。じゃあ、今夜は俺、お前のベッド
ククッと笑ってベッド下の床を指さしたら、
考えてみれば、羽理の部屋で二人一緒に夜を明かすのは初めてなのだ。
当初の計画では羽理を上手に丸め込んで、一緒のベッドで添い寝なんか出来たら最高だ!……と
この部屋の片隅に置かれたベッドも、
(い、一応避妊具はあるけどな!?)
そうなることを全く期待していないわけではない。
その辺の準備
(羽理、そう言うの経験ねぇって言ってたし……今日気持ちを確かめ合ったばっかでそんなんは……さすがにダメだろ)
別室に移動しても距離が足りないぐらい、羽理に触れたくて
女性用ワンルームをうたっているらしいこの物件。
キッチンや風呂場があるあちら側と、リビングのあるこちら側以外には部屋がないのだ。
玄関から真っ直線に
キッチンスペースとリビングとの間に取って付けたみたいなすりガラスの仕切り戸はあるのだけれど。
戸があるからと、キッチンの床に寝そべると言うのはいくら何でもおかしいし、すぐそこに見える、リビングに
(俺は『ドラレもん』じゃねぇしな)
未来からきた、レモン色の超有名な国民的アニメの猫型ロボットが、世話になっている主人公の家の押し入れで寝起きしている。
それをふと思い出してしまった
(あ、けど……猫って部分は羽理、喜ぶかも知んねぇな)
そこまで考えて、論点はそこじゃなかったなと、
はぁ、と溜め息混じり。意図して携帯の画面に視線を落とせば、まだ
急げば、ホームセンターの閉店時間に間に合うだろうか。
(ひとっ走り行って、布団を一式買ってくるか?)
そう思いはしたものの、それだと羽理をまた一人にしてしまうと気が付いた。
(置いてってる間にまた来客があったら嫌だしなぁ)
実際、そんなことは滅多にないのだが、
かといって……連れて行くにしてもこんな太ももむき出しの可愛いルームウェアを着た羽理を、これ以上誰にも見せたくない。
もちろん、着替えさせている時間はさすがにないから、
懸命に寝床をどうすべきか思い悩んでいる様子の羽理を横目に、嫉妬心丸出しでそんなくだらないことを思ってしまっている自分はある意味バカだなと思ってしまった
***
で、結局――。
「ほっ、ホントに良いのかっ!?」
「なっ、何度も聞かないで下さいっ。決心が鈍りますっ!」
せめてもの温情というか……自分への
「あ、あの……落ちたら大変です。もっ、もうちょっとだけこっちに来ませんか?」
羽理に服のすそをキュッと引っ張られて、
「こっ、これ以上そっちへ行ったらさすがにまずい」
背中を引っ張る
「ああああーーーっ!」
と
だが――。
「う、ぁっ!」
緊張の余りバランスを崩した
羽理の顔を見下ろすようになってしまって。
結果、変な声を上げる羽目になった。
(何だってこんな薄暗がりのなか、俺の目はこんなに優秀なんだ!)
本来ならば見えないはずなのに、お互いの吐息すら感じ取れるくらいに近付いてしまったからだろうか?
「……
ちょっぴり
ああ、そう言えばベッドに入る前、羽理が「慣れない部屋で
(……にしたって見えすぎだろ!)
それに、そのことを思い出したからと言って、現状が変わるわけではない。
(ちょっ、待っ……、そもそも何で俺、こんなバカな格好になってる!?)
パニックの余り、羽理の上に影を落としたまま、身動きの取れなくなった
当然答えなんて返ってくるはずがない。
ばかりか――。
「あ、あの……
そっと
(ば、バカっ。その顔は反則だろ!)
と思った
本来ならば、
目のつぶり方だって、そんな力を入れたら逆にギャグだと思うのだけれど。
そう言うぎこちなさを感じさせられる全てが、羽理の不慣れさを象徴しているようで、愛しくてたまらないのだ。
「なぁ羽理。……キス、しても……いいか?」
それでも四角四面にそう問いかけてしまったのは、もしも羽理に本当はそんなつもりがなかった場合、彼女の意志を無視することになってしまうと
自分も大概スマートじゃないなと頭の片隅で苦笑しつつ……。
今まで自分はどんなふうに女性と口付けをするタイミングをはかっていたのだろう?と考えてしまった
(思い出せん!)
だが、さすが恋愛初心者の羽理というところか。
そんなグダグダな
(可愛すぎだろ、
手慣れた女性なら「聞かないで!」とか「察しなさいよ!」とか叱られていても仕方のないところだ。
そのことにも妙にドキドキと心臓を跳ねさせてしまう。
ギューッと身体を固くしてキス待ちをしてくれている羽理をこれ以上待たせるわけにはいかないと、目一杯男らしさを振り絞って羽理の唇に自分のそれを重ね合わせたのだけれど。
ふわっふわのマシュマロみたいな羽理の唇の感触に、気が付けば夢中になって何度も何度もついばむみたいに唇を重ねていた。
「や、んっ。たい、よ……息、出来なっ……」
別にディープな大人のキスをしているわけではないのに。
唇を離すたび、いくらでも呼吸のタイミングはあっただろうし、もっと言えば鼻で息すればいい。
だが、それすらままならなかったんだろう羽理が、真っ赤になって
「羽理! 何で俺はお前がこんなに可愛くて堪んないんだろうな……!?」
私に聞かれても困りますっ!と返されかねない気持ちを、もどかしさごと言葉に乗せた
「あ、あのっ。あのっ……」
突然の
そこだけは丁寧な動きでゆっくりと……。
さっきまでのついばむみたいなキスとは違って、重ね合わせたまま離される気配のない唇に、羽理がたまらずちょっとだけイヤイヤをして「ふ、ぁっ」と呼気を落とした瞬間、無防備に開かれた羽理の唇の隙間へスルリと舌を差し込んだ
「ひゃ、んっ……」
そのことに驚いたように
唇を離す時、
「――羽理?」
余りにぼんやりした様子の羽理を心配した
「わ、
と、羽理がどこかうっとりとした舌っ足らずな口調で言うから。
そうしておいて、これはもう無理だな?と早々に白旗を上げて……。
「なぁ、羽理、お願い? このまま……抱かせて?」
羽理を片腕で抱きしめたまま、自身の顔を覆っていた手を移動させた
準備してある避妊具は全部で六個。普通に考えれば十分過ぎる個数だが、羽理が相手なら何回でも出来てしまいそうだと思えるのが怖い。
とはいえ――。
(まずは最初……一回目がうまく出来るかどうかが問題だよな?)
処女を相手にするのは、
上手く……出来るだろうか?