部屋の隅、瓦礫の裏には、二人の覗き魔が身を潜めていた。
その一人である紗命は、先の言葉に心を蹂躙され、足腰が立たなくなっていた。
「……俺は紗命を愛してる」
「――ッ」
呟かれた一言を遮るものは何も無く、風に乗り一直線で彼女に届いた。
紗命は待ち望んだ告白に瞳を潤ませ、漏れ出る狂笑を必死で手で隠していた。
「凄かったぁー。まったく、モテモテねぇ紗命はっ」
「……」
彼女を弄る凜だが、いつもの反応が返ってこないのを不思議に思う。
「紗命?おーい」
「……ふふっ、ふふふっ、ふふふふふふふふふふふふっ」
「……ひっ、さ、先行ってるね!」
足早にその場を去る彼女。
笑い続ける少女の顔には、依然影が落とされたまま。
覗き込んだ先で何を見てしまったのか、それは誰にも分からない。