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第60話



 部屋の隅、瓦礫の裏には、二人の覗き魔が身を潜めていた。


 その一人である紗命は、先の言葉に心を蹂躙され、足腰が立たなくなっていた。




「……俺は紗命を愛してる」




「――ッ」


 呟かれた一言を遮るものは何も無く、風に乗り一直線で彼女に届いた。


 紗命は待ち望んだ告白に瞳を潤ませ、漏れ出る狂笑を必死で手で隠していた。


「凄かったぁー。まったく、モテモテねぇ紗命はっ」


「……」


 彼女を弄る凜だが、いつもの反応が返ってこないのを不思議に思う。


「紗命?おーい」


「……ふふっ、ふふふっ、ふふふふふふふふふふふふっ」


「……ひっ、さ、先行ってるね!」


 足早にその場を去る彼女。


 笑い続ける少女の顔には、依然影が落とされたまま。


 覗き込んだ先で何を見てしまったのか、それは誰にも分からない。



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