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ある日、最強の俺が異世界美少女になった件
ある日、最強の俺が異世界美少女になった件
高見もや
異世界恋愛ロマファン
2025年05月15日
公開日
1.6万字
連載中
剣道全国大会で優勝経験のある高校生、**神崎蓮(かんざきれん)は、幼馴染でありライバルでもある橘蒼真(たちばなそうま)**との真剣勝負の最中、突如として意識を失った。目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界。そして、自分の身体が"華奢な少女"に変わっていた。 目の前には、黒いローブを纏った怪しげな魔法使いが立っている。「おお、成功したか。我が王女よ!」と歓喜する声に、蓮は戦慄した。何を言っている? 俺は王女なんかじゃない。だが、鏡に映るのは、透き通るような銀髪と紅い瞳を持つ、美しすぎる少女――つまり、自分自身だった。 蓮は、**滅びた王国の姫「レイシア・フォン・アルザード」**として召喚されてしまったのだ。そして、この国を復興するための希望の存在として、王女としての役割を果たせと言われる。しかし、元々"剣を振るって生きてきた男"だった蓮が、姫として大人しく従うはずがない。 「ふざけるな、俺は男だ!」 だが、異世界ではそんな言葉は通じない。周囲の人々は「王女の気高いお言葉ですわ……!」と完全に誤解。しかも、この世界には「元の性別に戻る方法」はなく、蓮は生き抜くために仕方なく"王女として振る舞う"ことを余儀なくされる。 そんな中、蓮の前に現れたのは――異世界最強と名高い騎士団長ユージン・クラウゼ。彼は蓮を**「王女をお守りする騎士」**として支えるが、どうやら蓮に妙な感情を抱き始めているようだ。 「姫様、どうか私を信じてください」 「ちょっ……そんなに近づくな!」 さらには、幼馴染であり最強のライバルだった橘蒼真も、異世界に**「勇者」**として召喚されており、彼が蓮の正体に気づいてしまう。「まさか、神崎……お前なのか?」「違う、違うからな……!」戸惑う蓮をよそに、蒼真は「お前を守る」と宣言。男女の関係が逆転し、距離感はどんどん縮まっていく。 果たして蓮は、"王女"として生きるのか、それとも"元の性別に戻る方法"を見つけるのか? ――剣士としての誇りと、少女としての運命が交錯する、異世界転生TSラブコメ×バトルファンタジー開幕!

第1話

――まるで、水底に沈んでいくような感覚だった。




意識が朦朧とする中、ぼんやりと光が見えた。まぶたを開けようとするが、まるで異物がこびりついたように重い。それでも、何とか目を開けると、そこには荘厳なシャンデリアと金色に縁取られた天井が広がっていた。




(……どこだ?)




確か、俺は剣道の試合中だったはずだ。幼馴染であり、ライバルでもある橘蒼真と最後の一太刀を交わした瞬間、視界が真っ白になった。そして――ここにいる。




「姫様、お目覚めになりましたか?」




低く響く声に、背筋が凍りつく。姫様? 何の冗談だ? ゆっくりと首を動かし、声の主を見る。そこには、黒いローブを纏った老人がいた。銀色の髪と深い皺が刻まれた顔が、まるで魔法使いのような風貌だ。




「……誰だ、お前」




喉から漏れた声は、驚くほど澄んでいた。違和感に気づき、慌てて自分の手を見た。指が細く、白く、まるで繊細なガラス細工のようだ。腕も華奢で、筋肉質だったはずの自分のものとはかけ離れている。




そして、違和感の正体を知る。




胸の重み。長く流れる銀色の髪。視界の隅に見える繊細なレースの装飾。




「――は?」




震える手でシーツを握り、身体を起こす。膝の上に広がるのは、ふわりと広がる純白のナイトドレス。その下にある自分の身体が、これまでのものとはまったく違う。




「な、何だこれ……!」




慌ててベッドから飛び降りようとするが、足元が覚束ず、転びそうになる。すぐさま老人――いや、魔法使いらしき男が支えた。




「姫様、落ち着いてください」




「俺は姫じゃねぇ! これは、何の冗談だ!?」




自分の声が甲高く響く。違う、こんなの俺じゃない。鏡、鏡が必要だ。視線を走らせると、部屋の隅に置かれた大きな姿見が目に入った。足元がおぼつかないまま、ふらふらと鏡の前に立つ。そして――息を呑んだ。




そこに映っていたのは、自分ではない。




腰まで流れる銀髪、鮮やかな紅い瞳、白磁のような肌。長い睫毛が影を落とし、驚いたように見開かれた瞳は、まるで宝石のように輝いていた。




美しい。そう、誰が見ても認めるほどの美少女が、そこにはいた。




「これが……俺?」




震える指で頬を触れる。柔らかく、繊細な肌。




「何をした……俺の身体は……」




「姫様、ご安心ください」




魔法使いは微笑み、ひざまずくように言った。




「あなた様こそ、滅びた王国の最後の血脈。アルザード王国の王女、レイシア様なのです」




「……は?」




冗談だろ? そんな現実、受け入れられるわけがない。だが、鏡の中の自分は、どう見ても男ではなかった。




――俺は、一体どうなってしまったんだ?

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