いつも通りの朝が来て、いつもの教室で授業を受けていた。
咲夜は他人になんと言われようと、悠と一緒に過ごすのはやめていない。
友達以上の関係であることも噂で広がっていたが、気にしなかった。
ある人に声をかけられるまでは。
科学室での授業を終えて、教室に戻ろうとした時、階段の踊り場付近で2人男子生徒がウロウロと1年のクラスを眺めていた。翼と一緒に教室へ行こうとすると、咲夜は声をかけられた。
「あ、そこの1年」
男子生徒のうちの1人。どこかで見たことある男子だった。
「あ、はい。私ですか?」
「そ、そう。きみ」
「何か用でしょうか」
相手は先輩ということがわかった。履いていた上靴が色分けされていて
3年の場合は、赤色ラインがだった。1年は黄色で、2年は青色だった。
「中学って西中だろ?」
「え、ええ。まぁそうですけど……」
「咲夜だろ?」
「え?」
「俺だよ。俺。
「す、すいません。どちらの大谷さんか」
咲夜は何のことかわからなかった。突然先輩に声をかけられるなんて思ってもみない。
「るーい。覚えてないの?」
「るい……」
「咲夜、私先に行ってるね」
翼は話が長くなりそうだと先に教室に戻って行った。顎に指をつけて考える。
「あー、泣き虫のルイ!?」
「……思い出して欲しくない場面を思い出したみたいだ」
琉偉は咲夜の言葉にがっかりする。
「大きくなったねぇ!?」
「何様だ。俺はお前の年上だぞ」
「すいません、失礼しました。あまり昔のことなので……ついつい」
「琉偉、何、その子、幼馴染なわけ?」
隣にいた琉偉の同級生の和俊が話し出す。
「ああ、確かめに来て良かった。たぶん、そうかなって思ってたから。文化祭の時、演奏見に来てただろ?」
「え、琉偉が演奏していた?」
「いや、見てないのかよ。俺、ボーカルだって」
「あははは。気づかなかった。そうだったんだ。イケメンだなんだって友達が言ってたから」
「イケメン? 俺が? そうかそうか」
「そう、私イケメン興味ないって話していたところで……」
「マジかよ。なんでその話すんだよ。まぁ、いいや。連絡先交換してよ。久々に幼馴染同士で会うって話あったからさ」
「え、もしかして、やっさんとかもっくん?」
「そうそう。なんだ、覚えてんじゃん。ほら、スマホ出して」
琉偉は自然の流れで咲夜にスマホを差し出して、連絡先を交換した。
「そしたら、日程分かり次第連絡するから返事忘れるなよ」
「わかった。琉偉、ありがとう」
「先輩と呼べ。先輩と」
「はいはい。琉偉先輩!!」
手を振って咲夜は別れを告げる。 教室で待ち構えていた翼がジッと咲夜を
みつめる。
「ねぇねぇ、咲夜、どういうこと? 大谷先輩と幼馴染って話聞いてないんだけど」
「ご、ごめん。私もさっき知った」
「詳しく教えなさい!」
咲夜は、翼に缶詰になり、昼休みは幼馴染である琉偉の話で盛り上がった。
その頃の悠は、咲夜からのラインの返事がないことに寂しがっていた。