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第28話 見てはいけないものを見つける

不審な行動する悠を知って、学校では、だんだんと咲夜は悠を避けるようになった。

学校の廊下にて、咲夜の後ろをたまたま琉偉が通りかかった。


昼休みに購買部でパンを買った後に、咲夜を見かけた。

翼は今日は欠席で1人で行動していた。


偶然だった。ふと、ひらひらと咲夜の制服肩あたりから何かが落ちた。


「咲夜、何か落ちたぞ」


別に計算していたわけではない。たまたま咲夜の後ろにいて、何かが落ちた。


「あれ、琉偉。え? なんだろう」


 振り返って琉偉が咲夜に手渡したのは、黒いぺたんとしたシール状のものだった。


「肩こりでもしてんの?」


「いや、高校生ですけど? おばあちゃんじゃないから」


 磁石のシールの肩こりを緩和するものだと勘違いした琉偉だった。咲夜は何か気になった。くるくると見つめる。


「え? もしかして、それって盗聴器じゃね?」


「うわぁ!!!」


 嫌いな虫が出たように咲夜はパッと黒いシールタイプの盗聴器を手から離した。遠くの教室でその声を聴いていた悠は、キーンと高音が耳に響いたため、

 つけていたイヤホンを外した。


「ゴキブリみたいなリアクションだな」

「気持ち悪いね。誰がこんなことするんだろう」

「貸せ。俺にまかせろ」


 琉偉は盗聴器を指先につけて、ロックな歌を大声で歌った。かなりの響きようで耳が割れるように痛くなった。鼓膜が壊れそうだった。盗聴器のスイッチを切った。


「これでいいな。撃退だ」


「そうだといいけど……怖い、尾行されてるのかな。あれ、尾行って言ったら」


 咲夜は誰かが目星がつき想像すると背筋がぞわぞわした。どうすればいいかわからなくなる。無意識に琉偉のワイシャツの裾をつかんでいた。


「おい、引っ張るなよ」


「琉偉、助けて。怖いよ。どうすればいいの」


「どうすればって、目星ついてるのか? 盗聴器とか尾行するストーカー」


「信じられないけど、知ってる人」


「は? マジか?! 本人自覚症状ないってことか?」


「そ、そうかもしれない」


「お、おう。仕方ねぇな。俺が守ればいいんだろ。咲夜をね。部活終わるまで待ってられるか?」


「うん、大丈夫」


「んじゃ、放課後、昇降口でな」


 琉偉はラッキーと思いながら、咲夜と一緒に帰る約束をした。咲夜はまさか、悠がこんなことするなんてといまだに信じられない。


 その頃の悠は、盗聴器の内容がBGMのように聴けなかったことに悔しかった。食べていたお弁当のふたを閉めた。


 中庭ではつばめの親子が鳴いていた。


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