不審な行動する悠を知って、学校では、だんだんと咲夜は悠を避けるようになった。
学校の廊下にて、咲夜の後ろをたまたま琉偉が通りかかった。
昼休みに購買部でパンを買った後に、咲夜を見かけた。
翼は今日は欠席で1人で行動していた。
偶然だった。ふと、ひらひらと咲夜の制服肩あたりから何かが落ちた。
「咲夜、何か落ちたぞ」
別に計算していたわけではない。たまたま咲夜の後ろにいて、何かが落ちた。
「あれ、琉偉。え? なんだろう」
振り返って琉偉が咲夜に手渡したのは、黒いぺたんとしたシール状のものだった。
「肩こりでもしてんの?」
「いや、高校生ですけど? おばあちゃんじゃないから」
磁石のシールの肩こりを緩和するものだと勘違いした琉偉だった。咲夜は何か気になった。くるくると見つめる。
「え? もしかして、それって盗聴器じゃね?」
「うわぁ!!!」
嫌いな虫が出たように咲夜はパッと黒いシールタイプの盗聴器を手から離した。遠くの教室でその声を聴いていた悠は、キーンと高音が耳に響いたため、
つけていたイヤホンを外した。
「ゴキブリみたいなリアクションだな」
「気持ち悪いね。誰がこんなことするんだろう」
「貸せ。俺にまかせろ」
琉偉は盗聴器を指先につけて、ロックな歌を大声で歌った。かなりの響きようで耳が割れるように痛くなった。鼓膜が壊れそうだった。盗聴器のスイッチを切った。
「これでいいな。撃退だ」
「そうだといいけど……怖い、尾行されてるのかな。あれ、尾行って言ったら」
咲夜は誰かが目星がつき想像すると背筋がぞわぞわした。どうすればいいかわからなくなる。無意識に琉偉のワイシャツの裾をつかんでいた。
「おい、引っ張るなよ」
「琉偉、助けて。怖いよ。どうすればいいの」
「どうすればって、目星ついてるのか? 盗聴器とか尾行するストーカー」
「信じられないけど、知ってる人」
「は? マジか?! 本人自覚症状ないってことか?」
「そ、そうかもしれない」
「お、おう。仕方ねぇな。俺が守ればいいんだろ。咲夜をね。部活終わるまで待ってられるか?」
「うん、大丈夫」
「んじゃ、放課後、昇降口でな」
琉偉はラッキーと思いながら、咲夜と一緒に帰る約束をした。咲夜はまさか、悠がこんなことするなんてといまだに信じられない。
その頃の悠は、盗聴器の内容がBGMのように聴けなかったことに悔しかった。食べていたお弁当のふたを閉めた。
中庭ではつばめの親子が鳴いていた。