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ギルドの受付嬢は元お嬢様で、たまに包丁を持って戦います。
ギルドの受付嬢は元お嬢様で、たまに包丁を持って戦います。
マカロー
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月16日
公開日
1万字
完結済
貴族令嬢だったクラリッサ=フォン=アルトハイムは、家の没落を機に自立を決意し、冒険者ギルド《赤鷲の翼》の受付嬢として働き始める。 優雅な所作と気品に満ちた美貌は誰もが目を見張るが――その中身は、面倒見がよくて口うるさい、まるで“肝っ玉母ちゃん”。 今日も冒険者たちにお弁当を配り、破れたマントを繕い、依頼書の記入ミスを叱る日々。 しかし、彼女にはもう一つの顔があった。 実は、貴族の護身術で鍛えられたクラリッサは、包丁一本で魔物を真っ二つにする戦闘力の持ち主。 しかもその力は、一般の冒険者を遥かに凌駕するレベルだった。 「戦う受付嬢? 違うわよ!ただの庶民派お嬢様だから!!…ですわ!」 気品と肝っ玉、そして包丁を携え、ギルドの“もうひとつの顔”として今日もクラリッサは大奮闘! 残念だけど憎めない、強くて優しい“元お嬢様受付嬢”の、笑って泣けるギルドライフ、ここに開幕――!

プロローグ 「ギルドの日常」

冒険者ギルド《赤鷲の翼》は、今日も朝から大賑わい。


受付のカウンターには、今日も彼女の声が響く。


「ちょっとあんた、依頼の申請書が汚れてるよ! はい、新しいの! 書き直し! ……あら、昨日はちゃんと帰って寝たの? 顔が真っ青よ!」


ツヤツヤの金髪に、真紅のリボン。貴族風のドレスをアレンジした制服に、豪奢な香水の香り――

どう見ても“高貴なお嬢様”な見た目の彼女の名は、クラリッサ=フォン=アルトハイム。


かつては大貴族の令嬢。だが家が没落してしまい、自立のためギルド受付嬢として働いている。


もちろんお嬢様らしい教養や品位は完璧なのだが――

なぜか中身は「肝っ玉母ちゃん」そのものだった。


「ご飯食べてないんでしょ!? これ、残り物だけど朝ごはん。食べてから行きなさい!」


「また鎧のまま来て! 床が泥だらけじゃない! 雑巾、そこ!」


ギルドの若手冒険者たちは、もはや彼女を“おかん”と呼んで慕っている。


しかし、彼女にはもう一つの顔がある。


ある日、ギルドの裏口から異形の魔物が侵入した。


「キャーッ!」と叫ぶ新人たちの中、クラリッサは慌てる様子もなく、自分のエプロンを脱ぎ捨てた。


「……仕方ないわね。じゃがいも切るつもりだった包丁だけど、ちょっと暴れさせてもらうわよ?」


そう言って彼女は、鉄製の包丁一本で魔物を真っ二つにした。

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