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第13話 災害の発生

 隣国での穏やかな日々が続く中、その平和を突如として破る出来事が起きた。ある朝、宿場町の市場が賑わう中で、遠くの山から激しい地響きが響き渡った。


「なんだ!?地震か?」

商人たちが商品を押さえ、周囲を見回す。地面が微かに揺れ続ける中、町の人々は不安げな表情を浮かべた。


「いや……あれはただの地震じゃない!」

一人の男が叫んだ。遠くの山肌から煙が立ち上っているのが見えた。さらに、煙の合間から黒い影が次々と現れ、空へ飛び立つ。巨大な翼を持つ魔物たち――その数は数十にも及び、隣国の山間部を目指して飛び始めた。


「魔物の群れだ!」

その声に、町全体が一瞬で混乱に陥った。



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町に迫る危機


魔物の群れが最初に襲ったのは、宿場町から北にある小さな農村だった。村人たちは突然の襲撃に逃げ惑い、農作物や家畜が次々と荒らされていく。


「助けてくれ!」

「誰か……誰か止めてくれ!」


村の鐘が鳴らされ、周囲の町に危険が伝えられると、宿場町にもその報せが届いた。町の人々は、魔物の脅威が自分たちにも及ぶのではないかと怯え、店を閉じて避難の準備を始めた。


そんな中、一人の農夫がシャウラの花屋に駆け込んできた。


「シャウラ様、お願いです!どうか助けてください!村が魔物に襲われていて……!」


シャウラは水やりをしていた手を止め、真剣な表情で農夫に向き合った。

「まあ、大変ですね……皆さん、怪我はないですか?」


「怪我人も出ています!ですが、もう手に負えません。この町も危険に晒されるかもしれません……!」


農夫の必死な声に、シャウラはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。

「わかりました。私にできることがあればお祈りしますね。」



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祈りの奇跡


シャウラは花屋の庭に座り、農夫と町の人々が見守る中で静かに手を合わせた。彼女の祈りはいつもと変わらず穏やかで、心に響く優しい声が響いた。


「どうか、村の人々が無事でありますように。魔物たちが静まり、皆さんが安心して暮らせますように……。」


祈りが終わると、庭を包む空気が一変した。風が吹き抜け、花々が一斉に揺れたかと思うと、その場にいた人々の心に安らぎが広がっていくようだった。


農夫は不安そうな顔で尋ねた。

「これで……本当に村が救われるのでしょうか?」


シャウラは微笑みながら答えた。

「きっと大丈夫ですよ。信じる心が大切ですから~。」


その言葉に半信半疑の農夫だったが、祈りにすがる思いで村へ戻っていった。



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魔物の撤退


農村では、魔物たちが村中を荒らし回っていたが、突如として状況が変わり始めた。巨大な黒い翼を持つ魔物が空で急に方向を変え、どこか遠くへ飛び去り始めたのだ。


「どうしたんだ?」

「魔物たちが去っていくぞ……!」


村人たちは戸惑いながらも、魔物たちが一匹残らず山の奥へ戻っていくのを見守った。


さらに、襲撃によって荒らされていた作物や家畜が、まるで元通りになっていくかのように復活していた。枯れかけていた木々が青々と茂り、村全体が再び命を取り戻したようだった。


「これが……奇跡なのか?」

村人たちは驚きと感動の表情で互いに顔を見合わせた。そして、農夫が口を開いた。

「シャウラ様が祈ってくださったんだ……。あの方が救ってくれたんだ!」



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町での反響


農夫が村の出来事を宿場町に報告すると、町中で話題が広まった。


「シャウラ様の祈りが、魔物を退けて村を救ったらしい!」

「やっぱり、あの方はただの花屋じゃない。神様が遣わした存在だ!」


人々はシャウラのもとに集まり、感謝の言葉を述べ始めた。シャウラは困ったように笑いながら応えていた。


「そんな大げさなことじゃないですよ~。私はただ、お祈りをしただけですから。」


それでも、人々の間では彼女が「花屋の聖女」としての存在を確信する声が強まっていった。



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御者の視点


その光景をそばで見守っていた御者は、改めてシャウラの力の大きさを実感していた。


「彼女の祈りが、これほどまでに強力な影響を及ぼすとは……。」

御者は自分の国が、彼女を追放したことの重大さを痛感していた。


しかし、それ以上に不安を覚えていたのは、隣国がシャウラの力に注目し始めている兆候だった。


「彼女を巡って争いが起きなければいいが……。」

御者の胸に、微かな焦りが芽生え始めた。



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