シャウラを追放した国は、隕石の衝撃による災厄から立ち直るどころか、状況が悪化の一途をたどっていた。隣国が豊かさを増す一方で、追放国では飢饉、疫病、暴動が連鎖的に拡大し、国そのものが崩壊の危機に瀕していた。
---
隕石の傷跡
隕石の落下地点を中心に広がった荒廃は、追放国全体に拡大していた。土地は焼け焦げ、不毛の荒野と化し、作物を育てるどころか、飲み水すら確保できない状況に陥っていた。
「井戸の水が枯れた!これでどうやって暮らしていけばいいんだ!」
「他の村でも同じだ。隕石が落ちてから、土壌も水もダメになった……。」
農村地帯では、住民たちが次々と村を捨て、都市へと流れ込んでいた。しかし都市部も飢餓と疫病に見舞われ、受け入れる余裕などなかった。
---
疫病の拡大
隕石の衝撃で発生した毒性のあるガスが国中に広がり、人々を蝕み始めた。特に水源が汚染され、疫病が蔓延する中で医療体制は完全に崩壊していた。
「村の半分が病気で倒れている……助けてくれる医者もいない……。」
「薬も食べ物もないのに、どうやって生き延びろというんだ!」
病人が次々と命を落とす中で、民衆の間には恐怖と絶望が広がっていた。疫病にかからない者たちでさえ、飢餓や暴動の危険にさらされ、生き延びることが困難な状況だった。
---
民衆の絶望と怒り
国の崩壊が進む中、民衆の不満と怒りは国王と宮廷に向けられていた。
「シャウラ様を追放したせいで、神の加護が失われたんだ!」
「国王と貴族たちが私たちを滅びに追いやったんだ!」
暴動が頻発し、民衆は食料庫や宮殿を襲撃するようになった。王都では衛兵たちが民衆を抑えることができなくなり、一部の貴族は自分たちの財産を守るために兵を引き上げてしまった。
「これ以上は防ぎきれません、陛下!」
衛兵隊の隊長が叫ぶ中、王は玉座に座り、うつむいたまま動かなかった。
---
国王の苦悩
王宮では、崩壊する国を前に、国王と廷臣たちが打つ手を失っていた。特に、シャウラを追放した決断が間違いだったと理解している者も多かった。
「もしシャウラ様がまだいてくださったら……。」
「彼女の祈りがあれば、この災厄を防げたはずだ……。」
国王はかつての決断を深く後悔していたが、それを覆す術はなかった。さらに、隣国の繁栄が追放国の没落を際立たせ、民衆の不満を増幅させていた。
「隣国ではシャウラ様が花を育てながら、国を豊かにしていると聞きます。」
「それに比べて、我々は……この有様だ。」
隣国との対比は、王にとっても致命的な打撃だった。自国が崩壊する様子を目の当たりにしながらも、隣国の成功を羨むしかない現実が、国王の心を蝕んでいった。
---
貴族たちの逃亡
国の崩壊に伴い、多くの貴族たちは自らの財産を持ち出し、隣国や他国への亡命を試み始めた。
「これ以上この国に留まるのは危険だ。」
「隣国に逃げれば安全に暮らせるはずだ!」
彼らの亡命は、国のさらなる崩壊を加速させた。貴族が支配していた土地は無法地帯となり、農民たちは指導者を失って混乱の中に放り出された。
「貴族たちは逃げ出し、我々だけが取り残された……。」
「もう誰も信用できない……。」
民衆の間では、シャウラを呼び戻すしか救いがないという声がさらに高まっていたが、すでにそれを実現する手段すら失われつつあった。
---
信仰の消失
追放国で最も深刻な問題の一つは、信仰の消失だった。シャウラがいなくなり、奇跡が失われたことで、人々の信仰心は崩壊していた。
「神なんて存在しない!」
「もし神がいるなら、どうして私たちを見捨てたんだ!」
神殿は襲撃を受け、司祭たちは逃亡した。宗教によって支えられていた国の統治システムが崩壊し、民衆は完全に混乱の中に陥った。
---
最後の瞬間
ついに、追放国は国家としての機能を失った。飢餓や疫病で人口の大半が失われ、生き残った人々は隣国へと避難するか、荒野をさまようだけだった。
王宮は荒廃し、国王は誰にも看取られることなく玉座で息絶えた。彼の死が広がった時も、それを悲しむ者はほとんどいなかった。
「この国は……終わった……。」
最後まで残った老兵が呟きながら、王宮を後にした。
---
隣国への波紋
一方で、隣国では追放国からの難民が急増していた。彼らは隣国の豊かさに驚き、シャウラの存在を目の当たりにして、後悔と感謝の入り混じった声を上げた。
「シャウラ様がこの国を救ったんだ……。我々の国が彼女を追放していなければ……。」
隣国の人々は難民を受け入れる一方で、シャウラの力に対する信仰を深めていった。
---