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第21話 隣国の繁栄



シャウラが隣国に渡り、「花屋の聖女」として祈りを捧げ続ける中、隣国は急速に繁栄の兆しを見せ始めた。その影響は農村から都市部にまで広がり、経済や社会全体が活気を取り戻していた。



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農村の奇跡


隣国の農村地域では、シャウラの祈りによるとされる奇跡が次々と起こっていた。


「今年の作物は驚くほどよく育っている。去年の収穫量の倍以上だ!」

「干ばつ続きで土が固くなっていた畑が、まるで魔法のように肥沃になったぞ!」


農村の農民たちは、突然訪れた豊作の波に驚きながらも、その恩恵を享受していた。特に、これまで不作が続いていた地域では、シャウラの祈りによって土地そのものが蘇るような変化が見られた。


「シャウラ様が祈りを捧げてくれたおかげで、こんなにも恵まれた年を迎えられるなんて……。」

農夫たちは涙を流して感謝の言葉を口にした。


さらに、農産物の品質が向上したことで、隣国の市場は活気を帯び始めた。特に輸出用の作物が高値で取引されるようになり、農村経済が潤うだけでなく、国全体の経済力も向上した。



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都市部の発展


都市部では、農村からの豊かな物資が流れ込むことで、商業が再び活性化していた。市場は多くの人々で賑わい、商人たちは隣国だけでなく、周辺諸国からも訪れるようになった。


「こんなに人が集まる市場は久しぶりだ!」

「隣国で買った農産物は質が良いと評判だぞ。隣国製の商品をもっと仕入れよう。」


特に、シャウラの祈りの力がもたらした豊かな環境を背景に生産された商品は、他国の貴族や富裕層の間で高く評価されていた。その結果、隣国の商業と貿易は大きな発展を遂げ、国庫は潤沢な資金で満たされていった。


「この国はまさに黄金時代を迎えつつあるのではないか?」

商人たちの間ではそうした噂が広まり、さらに新しい事業や投資が生まれるようになった。



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社会の安定


隣国の社会全体も、シャウラの祈りによる奇跡の恩恵を受けて安定していた。


「疫病が広がっていた村が、シャウラ様の祈りで完全に癒されたそうだ。」

「病院に通う人が減り、医療関係者たちも余裕を持って働けるようになったらしい。」


疫病や災害が減少したことで、国全体の生活水準が向上していた。貧困層の人々も農村の発展に伴って仕事を得る機会が増え、犯罪率が劇的に減少した。


「シャウラ様が隣国に来てから、まるで神が私たちを見守っているようだ。」

人々はそう語り合いながら、彼女への感謝と信仰を深めていった。



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隣国王の反応


隣国の王宮では、シャウラの祈りがもたらす国の変化に対して、王自身も驚きを隠せなかった。


「隣国がこれほどまでに発展するとは……。」

王は宮廷での会議中、臣下たちに語りかけた。


「シャウラ様の祈りによる奇跡が国全体に影響を及ぼしているのは明らかです。このような人物を迎え入れたことは、我々にとって最大の幸運と言えるでしょう。」


「陛下、彼女をこの国の守護者として正式に迎え入れるべきではないでしょうか?」

側近の一人が提案した。


「確かに、彼女の存在は重要だ。しかし、彼女はあくまで普通の生活を望んでいる。我々の欲望で彼女を縛ることは、結果として国全体の不利益につながる可能性もある。」


王は冷静な判断を下し、シャウラが望む形で彼女を守り続けることを決定した。彼女の祈りが国全体を支えている以上、王宮も彼女の自由を尊重する必要があると考えたのだ。



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追放国との対比


隣国の繁栄が目に見える形で拡大していく中、追放国の状況は正反対だった。飢饉と疫病が続き、国の機能が完全に崩壊しつつある追放国は、隣国と比較することでその没落がさらに際立っていた。


「隣国では奇跡が続いているというのに、我々はどうしてこんな状況に陥っているのか……。」

追放国から隣国へ避難する人々の数が増え、隣国の繁栄はさらに多くの人々を惹きつけていた。



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シャウラの無自覚な力


その一方で、シャウラ自身は自分の祈りが隣国全体にどれほどの影響を与えているのかを全く理解していなかった。彼女にとっては、毎日花の世話をしながら、訪れる人々のために祈ることが全てだった。


「皆さんが笑顔でいられるのが一番です~。」

彼女は町の人々にそう語りかけ、穏やかな笑顔を浮かべていた。


しかし、彼女のその何気ない祈りが国全体を動かしているという事実は、隣国の誰もが理解していた。人々の中には、シャウラを「神の使い」として崇める者も現れ始めた。



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