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第20話 シャウラへの依頼



民衆の怒りが頂点に達し、国の混乱が収拾不能な状況に陥る中、王宮ではついに、シャウラを呼び戻すことが最後の手段として議論され始めた。国王と廷臣たちはその決断の重さを理解しつつも、もはや他に選択肢がないことを痛感していた。



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国王の決断


「陛下、この国はすでに崩壊の瀬戸際です。隕石の被害、飢饉、疫病、そして民衆の暴動――どれ一つとして解決できておりません。もはや、我々にはシャウラ様の力を仰ぐしか道は残されておりません。」

老廷臣ハルゼンが重々しく言葉を紡ぐ。


その言葉に、国王は長い沈黙を破って低い声で答えた。

「……シャウラを呼び戻すことが、この国を救う唯一の方法だというのか?」


廷臣たちは一様に黙り込み、うなずくしかなかった。

「追放したのは私だ。彼女を傷つけ、この国から追い出したのも私だ。それでも、彼女を頼るのか……。」


国王の顔には深い苦悩が刻まれていた。彼自身、シャウラが追放された時の民衆の不満を覚えており、その決断が間違いだったと今になって気づいていた。


「使者を隣国へ送る。シャウラに戻ってきてもらうよう懇願せよ。」

重い決断を下した国王の声は、どこか虚ろだった。



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使者の派遣


隣国への使者団は、国王の信頼する老廷臣ハルゼンが率いることになった。彼はシャウラをよく知る数少ない人物の一人であり、その誠意と経験から、彼女に思いを伝えられると期待されていた。


出発の日、王宮の門前には民衆が集まり、シャウラへの希望を口々に叫んでいた。

「シャウラ様を連れ戻してくれ!」

「彼女がいなければ、この国は滅びる!」


使者団が馬車で出発すると、その背中に向かって祈るような視線が注がれた。


「これで本当に救われるのだろうか……。」

民衆の中には不安を隠せない者も多かった。



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隣国での対面


数日後、使者団は隣国の宿場町に到着した。シャウラが営む花屋は、噂通りの穏やかな雰囲気を漂わせており、庭には美しい花々が咲き誇っていた。使者たちは、その光景に一瞬心を奪われたが、使命を果たすべく緊張を抱えたまま花屋の中へと足を踏み入れた。


シャウラは庭で水やりをしていた。彼女の穏やかな笑顔は、かつて国で見せていたものと変わらず、彼女がこの地で平和に暮らしていることが一目で分かった。


「まあ、皆さん、お久しぶりですね~。どうされましたか?」

シャウラは微笑みながら使者たちに声をかけた。


ハルゼンが一歩前に出て深々と頭を下げた。

「シャウラ様……。お元気そうで何よりです。我々は国王陛下の命を受けて参りました。どうか、我々の国にお戻りいただけませんか?」


シャウラは一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかな笑顔に戻った。

「戻る、ですか?私が……?」



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シャウラの返答


シャウラは少しの間考え込むように目を閉じ、やがて静かに口を開いた。

「皆さんの国が大変な状況なのですね。お話は分かりました。でも……私にはもう関係ありません。」


その言葉に、使者たちは言葉を失った。


「私は追放されました。その時点で、私の役目は終わったのだと思っています。今は、ここでお花を育てて、お祈りを捧げて、穏やかに暮らしているだけです。それ以上のことを望まれるのは……少し困りますね~。」


ハルゼンはなおも説得を試みた。

「シャウラ様、どうかご理解ください。我々の国はあなたの力がなければ立ち直ることができません!これは、国の存亡に関わる問題なのです!」


しかし、シャウラは静かに首を振った。

「それなら、皆さんで頑張ってくださいね。きっと神様は皆さんを見守ってくださいますよ。」


その微笑みは、穏やかでありながらも、明確な拒絶を示していた。



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使者団の帰還


ハルゼンたちは失意のまま隣国を後にした。彼らは何度も説得を試みたが、シャウラの答えは変わることはなかった。


「やはり無理だったか……。」

「彼女を追放したのは我々だ。その報いを受けるしかないのだろう……。」


帰路につく使者たちの顔には疲労と後悔の色が浮かんでいた。王宮に帰還した際、彼らが王に報告したのは、失敗の事実だった。


「陛下、シャウラ様は戻る意思がないと仰いました。我々には……もうどうすることもできません。」


その言葉を聞いた国王は、深く椅子にもたれかかり、顔を覆った。




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