シャウラが追放され、隕石の落下が国全体を襲った後、国の秩序は急速に崩壊していった。被害を受けた村や町が次々と荒廃し、飢えと病に苦しむ民衆の不安と絶望が限界に達したとき、人々は追放された聖女シャウラの存在を再び思い出し始めた。
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混乱に包まれる民衆
隕石の直撃を免れた地域でさえ、その余波に苦しんでいた。飢饉が深刻化し、疫病が村々を侵食していく中、国中に広がるのは「聖女を追放した報いだ」という噂だった。
「シャウラ様がいた頃は、こんな災厄はなかった。」
「神は我々を見放したのではないか?」
市場や村の広場で交わされる言葉には、希望よりも絶望が色濃く漂っていた。日常生活が破綻しつつある中、食べ物を巡る争いが日常茶飯事となり、親族同士ですら互いを疑うようになった。
「お前、どこでそんな食料を手に入れたんだ?」
「俺の畑だ!返せ!」
「これは俺たち家族の分だ!奪うな!」
争いは暴力へと発展し、隠し持っていたわずかな食料すら略奪される事態となった。もはや平和な日常は失われ、民衆の目には疲労と絶望だけが浮かんでいた。
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シャウラへの後悔と懺悔
特に、シャウラの存在を知っていた者たちは、彼女が国を守っていたという確信を抱くようになった。かつて彼女の祈りに救われた人々の証言が次第に広がり、それが国全体の噂となっていた。
「シャウラ様が祈ってくださった時、私たちはこんな不安を感じたことがなかった……。」
「どうしてあの方を追放してしまったんだろう?これは罰なのか?」
農村に住む老婦人は涙ながらに語った。
「彼女がいてくれた頃は、作物が育たないなんてことはなかった。雨が必要な時に降り、私たちは安心して暮らせたんだ。」
「もしあの方が戻ってきてくれたら、この地獄のような日々も終わるのではないか……。」
人々の中にはシャウラの名前を唱えて祈りを捧げる者も現れた。しかし、シャウラのいない祈りに奇跡が起きることはなかった。
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王都の混乱
王都では、民衆の怒りが爆発し始めていた。飢えに苦しむ人々は王宮の門前に集まり、シャウラの追放が災厄の原因だと訴えた。
「国王よ、なぜシャウラ様を追放したのだ!」
「彼女を呼び戻せ!さもなければ、私たちはもう生きられない!」
その声は日増しに大きくなり、ついには暴動へと発展した。飢えた民衆は王宮の倉庫を襲撃し、食料を奪い取ろうとした。衛兵たちはなんとか防衛しようとしたが、兵士自身も飢えと疲労に苦しんでおり、士気は低下していた。
「もうこれ以上は……耐えられない!」
衛兵たちの一部は職務を放棄し、暴徒に加わる者さえ現れ始めた。
王宮の門前では、無数の民衆が集まり、叫び声を上げ続けていた。
「私たちを見捨てるな!シャウラ様を返せ!」
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新しい聖女への不信
その一方で、リナリア聖女への不満が爆発的に広がっていた。国の人々は、新しい聖女が何もしていないという事実を知り、彼女の力に疑問を抱き始めた。
「リナリア様はただ祈るだけで何も起きないじゃないか。」
「シャウラ様のような奇跡を一度でも起こしてみろ!」
リナリアが祈りを捧げる神殿の前にも抗議の声が押し寄せた。ついには、暴徒が神殿に押し入り、リナリアの元へ詰め寄る事件も発生した。
「お前は偽りの聖女だ!何もできないなら聖女の座を降りろ!」
「シャウラ様を追放しておいて、何の力も発揮できないなんて……!」
リナリアは恐怖のあまり、神殿の奥に閉じこもり、出てこられなくなった。
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信仰の崩壊
この状況下で、国の信仰そのものが揺らぎ始めていた。長い間、国民を支えてきた神への信仰が、シャウラの追放と災厄の発生をきっかけに崩壊しつつあった。
「神なんて存在するのか?」
「もし本当にいるなら、どうしてこんな仕打ちを受けるんだ!」
かつて神殿を支えてきた司祭たちは、民衆からの非難に耐えきれず、次々と地方へ逃亡していった。信仰が失われることで、国全体の秩序が完全に崩壊し始めていた。
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