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第27話 伝説の始まり



シャウラの存在は隣国全体にとって特別なものとなりつつあった。彼女の祈りによってもたらされる奇跡の数々は、もはや偶然や幸運では片付けられない規模に達していた。人々の間では、シャウラにまつわる話が次第に脚色され、彼女の名前はすでに「伝説」として語られるようになっていた。



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伝説の広まり


農村では、シャウラの祈りが干ばつを止めた話が村の老人たちによって語り継がれていた。

「シャウラ様が村のために祈ってくださったおかげで、雨が降り、土が蘇ったんだ。」

「彼女の祈りには神が宿っている。あの方がいらっしゃれば、私たちは安心して暮らせるんだよ。」


この話は隣村へ、そしてさらに遠くの村へと伝えられていき、シャウラの名前は農村全体で崇拝の対象となっていった。


都市部では、商人たちがシャウラの奇跡を話題にしていた。

「彼女が祈った市場では商売が繁盛すると聞く。実際に取引が増え、利益が倍になった商人もいるそうだ。」

「彼女の育てた花を飾るだけで幸運が訪れるらしい。俺も一つ買ってみるか。」


商人たちの間で彼女の花が高値で取引されるようになり、隣国以外からもシャウラの花を求めて来る者が増えていった。



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神話としての昇華


シャウラの奇跡が増えるにつれ、彼女の存在は次第に「神話」として語られるようになった。一部の人々は彼女を「天から遣わされた聖女」と呼び、彼女が祈る姿を目撃した者たちはそれを神の儀式と崇めた。


「シャウラ様が花に水をやる姿を見ました。あれはただの水やりではありません。彼女の手の動きから神聖な光が放たれていました!」

「私も見た。彼女が庭で祈っている時、空に虹がかかり、鳥たちが集まっていたんだ。あれは神が彼女に微笑みかけた証だ!」


こうした目撃談はさらに美化され、多くの村や町で語り継がれていった。その結果、シャウラの名前はもはや一人の人間ではなく、神話的存在として記憶されるようになっていた。



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詩や歌の誕生


シャウラの伝説は詩人や音楽家たちにも影響を与えた。彼女の祈りによる奇跡を称える詩や歌が次々と作られ、酒場や広場で人々に披露されるようになった。


「シャウラ様の花が咲く

荒野に幸せが宿る

彼女の祈りは星をも動かし

夜空に光を描く」


こうした詩や歌は隣国中で人気を博し、特に農村では祭りの際に必ず歌われる定番となった。


「シャウラ様の歌を歌うと、今年も豊作になると信じられています!」

「この歌を聞くと、心が穏やかになりますね。」


歌や詩を通じて、シャウラの存在はさらに広がり、人々の心に深く刻み込まれていった。



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シャウラ自身の反応


一方、シャウラ自身は、自分が「伝説」として語られていることをほとんど知らなかった。訪れる人々が感謝の言葉を述べるたびに、彼女はただ微笑んで答えるだけだった。


「まあ、私がそんなにすごいことをしているなんて、全然思っていないんですけどね~。皆さんが幸せでいられるなら、それが一番ですよ~。」


しかし、彼女の無邪気な言葉や態度が、さらに人々の信仰心を強めていった。彼女が何も誇ることなく日々の祈りを続けている姿が、多くの人々にとって「本物の聖女」として映っていたのだ。



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民間信仰の形成


各地でシャウラの名前を冠した祠や石碑が建てられ、彼女を崇める民間信仰が急速に広がっていった。


「シャウラ様の祠を村に建てたら、作物がよく育つようになりました!」

「彼女の名前を呼んで祈ると、不思議と安心できるんです。」


こうした信仰は、隣国全体を一つにまとめる新たな文化的要素として定着していった。



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追放国からの訪問者


隣国の繁栄とシャウラの伝説は、滅亡した追放国から逃れてきた難民たちにも伝わっていた。彼らの中には、自分たちがシャウラを追放したことが大きな過ちだったと語る者も少なくなかった。


「私たちは彼女を追放した。それが国を滅ぼした原因だ……。」

「隣国で彼女が奇跡を起こしているという話を聞くたびに、自分の過ちを思い知らされる。」


難民たちの証言が、さらにシャウラの伝説に説得力を与えることとなり、彼女の名前は隣国の人々だけでなく、隣接する他国にも広がり始めた。



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