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第12話


【side ルーベン】


 遡ること三十分前。

 ホールに集まった令嬢たちを、俺はホール上層の窓から確認していた。


「華奢で、銀髪で……ああ、俺は彼女の瞳の色すら知らなかった」


 老婆の姿のときは紫色の瞳をしていたが、本当の彼女の瞳は何色なのだろう。

 ホールを見ながらひたすら銀髪の女を探していたはずなのに、とある茶髪の女に目がいった。瞳は紫色だが、どこからどう見ても茶髪……なのに、妙な確信があった。

 彼女だ、と。


 彼女はホールの端に控えていた使用人に何かを言うと、ホールから出て行った。

 急いで彼女のあとを追う。

 追いかけてから、彼女の行き先がトイレだと気付き、どうしようかと唸った。

 しかし彼女はトイレには入らず、なぜかこそこそと大きな花瓶の陰に隠れ、そしてスカートの中から杖を取り出して自身に魔法を掛けた。杖を持ち込んでいたらしい。

 ……城の警備体制を見直した方が良さそうだ。


 しかし困った。

 彼女が使ったのは目視不能の魔法だったからだ。

 彼女と話したいという気持ちもあったが、それ以上に目視不能な状態で彼女が何をするつもりなのかが気になった。


「まさか盗みを働くつもりか?」


 彼女はそんなことをしないと思いたいが、ではなぜ王城に杖を持ち込んで目視不能の魔法を掛けたのかと問われると、答えに困る。

 そして俺は魔法に詳しくはないため、これでは彼女の痕跡を追うことが出来ない。


「仕方ない。王宮魔術師たちに頼むか」


 今夜は、思っていた以上に大変なパーティーになりそうだ。




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