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第21話 城下町の闇

レオナルドを味方に迎え入れたことで、ジュリアの計画は大きく前進した。しかし、アルフレッドの影響力を削ぎ落とすには、さらなる調査と証拠集めが必要だった。特に、アルフレッドが城下町で行っている取引の詳細を掴むことは、彼の秘密を暴き出すための鍵となる。ジュリアとレオナルドは、再び城下町を訪れることを決意した。



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慎重な潜入


ジュリアとレオナルドは変装を整え、城下町へ向かった。彼女は普段の優雅なドレスではなく、地味な服を身にまとい、周囲の注目を避けるようにしていた。市場を通り抜け、目的地である倉庫の近くまでやってきた。


「ここからは慎重に行動しましょう。倉庫の周辺には見張りがいる可能性があります。」

レオナルドが小声で言うと、ジュリアは頷いた。


二人は路地に身を隠しながら、倉庫の様子を観察した。しばらくすると、馬車が倉庫の前に到着し、大きな木箱が運び込まれていくのが見えた。


「何が運ばれているのかしら……?」

ジュリアは小さな声で呟いた。


「これだけの規模の取引だ。単なる合法品ではないだろう。」

レオナルドは真剣な眼差しで答えた。


倉庫の中から人々の声が聞こえてきたが、具体的な内容までは聞き取れない。二人はさらに詳しい情報を得るため、倉庫の裏手へと回り込むことにした。



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予期せぬ接触


裏手には、小さな窓がいくつか並んでいた。そのうちの一つは少しだけ開いており、中の様子を覗くことができそうだった。ジュリアは慎重にその窓に近づき、中を覗き込んだ。


倉庫の中では、数人の男たちが何かの契約書にサインをしている様子だった。その中心には、アルフレッドの姿があった。彼は冷静な態度で取引の進行を見守っており、その振る舞いからも、この取引がいかに重要なものであるかが伺えた。


「彼が直接関与している……。」

ジュリアは息を飲んだ。


その時、後ろから足音が聞こえた。振り返ると、一人の男が怪訝な表情で二人を見ていた。


「おい、あんたたち、ここで何をしている?」

男が鋭い声で問いかけた。


ジュリアとレオナルドは一瞬で状況を理解し、冷静に対処することに決めた。

「市場で道に迷っただけです。」

レオナルドが落ち着いた声で答えた。


「ここは市場じゃない。さっさと立ち去れ。」

男は警戒心を隠そうともせずに言い放った。


「すみません、すぐに戻ります。」

ジュリアも笑顔を作りながら答え、その場を離れた。



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情報の共有


その日の夕方、二人は屋敷に戻り、得られた情報を整理することにした。ジュリアは倉庫で見たアルフレッドの姿が頭から離れなかった。


「彼があそこにいるということは、取引の全貌を知っているだけでなく、直接指示を出している可能性が高いわ。」

ジュリアは断言した。


「それに、あの契約書……内容を確認できなかったが、何らかの違法な取引に関するものだろう。」

レオナルドも真剣な表情で答えた。


「今必要なのは、契約書の内容を直接確認する方法ね。」

ジュリアは思案顔で続けた。「ただし、再びあそこに行くのは危険が伴うわ。」


「それなら、信頼できる者に監視を依頼するのがいいだろう。僕の仲間を使えば、目立たずに情報を得ることができる。」

レオナルドが提案すると、ジュリアはそれに賛成した。



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侍女たちの協力


さらに、ジュリアは屋敷の侍女たちにも協力を依頼することにした。彼女たちには、アルフレッドが外出する際の動向を密かに監視し、報告するよう指示を出した。


「あなたたちが知ることは、私たちの計画の成功にとって非常に重要です。」

ジュリアは侍女たちに真剣な眼差しを向けた。


「かしこまりました、公爵夫人。」

侍女たちは頭を下げ、その任務を全うすることを誓った。



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次の一手へ


その後、レオナルドの仲間たちの協力も得て、倉庫での取引に関するさらなる情報が徐々に明らかになっていった。特に、取引に使われている商品が密輸品である可能性が高いことが判明し、これがアルフレッドを追い詰めるための重要な証拠となることが期待された。


「これで、彼の違法な行動を証明する材料が揃いつつあるわ。」

ジュリアは帳簿を見つめながら静かに呟いた。


「だが、次は決定的な証拠を掴む必要がある。そのためには、さらにリスクを取らなければならない。」

レオナルドは慎重な表情で言った。


「分かっているわ。でも、私はもう引き返すつもりはない。」

ジュリアの言葉には強い決意が込められていた。



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未来への覚悟


アルフレッドを追い詰めるための計画が少しずつ形を成し始める中で、ジュリアはこれからの道のりがいかに厳しいものになるかを理解していた。それでも、彼女の心には揺るぎない覚悟があった。


「私はもう、誰かの道具として生きるつもりはない。」

ジュリアは静かに自分に言い聞かせた。


彼女の復讐の道は、ここからさらに険しさを増していく。しかし、その先にある自由と未来を掴むため、ジュリアは決して足を止めることはなかった。



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