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第25話 暴かれる愛人の影

イザベルという愛人の存在、そして彼女の背後に隠されたアルフレッドの不正が徐々に明らかになりつつあった。ジュリアは彼女をただの愛人とは見ておらず、アルフレッドが進める政治的陰謀の一端を担っている可能性を感じ取っていた。さらなる証拠を集めるため、ジュリアとレオナルドは次なる行動に出る決意を固めた。



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邸宅への再訪


ある晩、ジュリアとレオナルドは再びイザベルの邸宅を訪れた。今回は潜入を目的としており、警備が緩い夜を狙って行動した。邸宅の裏手から中を覗き込むと、使用人たちが慌ただしく動き回っているのが見えた。


「彼女が何か重要なものを隠しているのは間違いない。」

ジュリアは小声で言った。「この邸宅には、アルフレッドの計画に繋がる証拠があるはずよ。」


レオナルドは頷きながら答えた。

「内部に入るリスクは高いが、それだけの価値がある。僕が先に様子を探る。」


「いいえ、私も行くわ。」

ジュリアは毅然とした表情で言った。「これは私自身の戦いよ。」


二人は慎重に邸宅の裏口から中へと忍び込み、物音を立てないように進んでいった。



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愛人の私室での発見


ジュリアとレオナルドが邸宅の奥に進むと、一つの豪奢な部屋にたどり着いた。部屋の中には高価な家具や装飾品が並び、まさにアルフレッドの愛人が暮らす場所という雰囲気を漂わせていた。


「ここがイザベルの私室ね。」

ジュリアは周囲を見回しながら呟いた。


机の上には書類が積み重なっており、その中にジュリアが目を引かれるものがあった。それはアルフレッドがイザベルに宛てた手紙だった。彼女は手紙を拾い上げ、中を確認した。


「……彼女を利用して取引を進めているわ。」

ジュリアは手紙を読みながら静かに言った。「これが彼の陰謀の一端を示している証拠になる。」


さらに、机の引き出しを開けると、一冊の帳簿が出てきた。そこにはアルフレッドが関与する取引の詳細が記されており、違法性が明らかなものだった。


「これで彼の不正を暴く材料が揃いつつあるわね。」

ジュリアは帳簿を閉じ、慎重に元の場所に戻した。



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イザベルとの対面


その時、足音が近づいてくるのが聞こえた。二人は急いで部屋の隅に身を潜めた。ドアが開き、現れたのはイザベルだった。彼女は部屋に入り、ジュリアたちの気配には気付かず、机の上の手紙を確認し始めた。


ジュリアは一瞬の迷いの後、意を決してイザベルに声をかけた。

「イザベル。」


驚いたイザベルは振り返り、ジュリアとレオナルドの姿を見て硬直した。

「あなたたちは……誰?」

イザベルは怯えた表情を浮かべながら問いかけた。


「私はジュリア・コーウェン。アルフレッドの妻よ。」

ジュリアは冷たい声で答えた。


その言葉に、イザベルの顔が青ざめた。彼女は何かを隠そうとするかのように口を閉ざしたが、ジュリアはその態度を見逃さなかった。


「隠しても無駄よ。あなたが彼と何をしているのか、大体は分かっているわ。」

ジュリアは一歩前に進み、イザベルを見据えた。



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取引の真相


イザベルはしばらくの間、何も言わなかったが、やがて観念したように口を開いた。

「私は……ただ、彼に救われただけ。家族を失い、行き場がなかった私を彼が助けてくれたの。」


「それで、彼の不正に加担しているの?」

ジュリアの問いに、イザベルは苦しそうな表情を浮かべた。


「私は彼に言われた通りにしていただけ……取引に関わる書類を預かり、必要なときに彼に渡すだけ。それ以上のことは知らないわ。」

イザベルの声には本心からの後悔が滲んでいた。


ジュリアはその言葉に確かな嘘がないことを感じたが、それでも彼女がアルフレッドの不正の一部を担っていることには変わりなかった。


「分かったわ。」

ジュリアは冷静に答えた。「でも、あなたがその取引に関与している以上、責任は免れない。これ以上彼に利用されるつもりなら、私に協力して。」


「協力……?」

イザベルは戸惑いながら問い返した。


「彼の全てを暴くために。あなたの手元にある証拠が必要なの。」

ジュリアは静かに答えた。



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イザベルの選択


イザベルはしばらくの間考え込んでいたが、やがて小さく頷いた。

「分かった……。でも、私にできることは限られているわ。」


「それで十分よ。」

ジュリアは彼女の返答に満足そうに頷いた。「これ以上彼の思い通りにはさせない。」


イザベルはジュリアに数枚の書類を差し出し、それがアルフレッドの取引を示す具体的な証拠であることが分かった。



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次なる一手


邸宅を後にしたジュリアとレオナルドは、手に入れた証拠をもとに次の行動を計画した。アルフレッドの不正を公にする準備が整いつつあり、彼を追い詰める道筋が見え始めていた。


「これで彼を倒すための材料が揃ってきたわ。」

ジュリアは手にした書類を見つめながら静かに呟いた。


「だが、これからが本番だ。」

レオナルドは慎重な表情で答えた。「奴が反撃に出る前に、一気に仕掛ける必要がある。」


ジュリアは決意を新たにし、復讐のための次なる一手を進める準備を整えた。愛人の影を暴いたことで、アルフレッドの崩壊は時間の問題となりつつあった。



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