リディアとの初めての対話で、ジュリアはアルフレッドの裏切りの一端を確信した。しかし、リディア自身もまた、彼によって利用されている存在であることを理解したジュリアは、彼女を協力者として引き入れることを決意する。そのためには、彼女の信頼を完全に得る必要があった。
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リディアの不安
翌日、ジュリアは再びリディアの屋敷を訪れた。リディアは前日の対話で心が揺れ動いていたようで、落ち着かない様子を見せていた。
「ジュリア公爵夫人……なぜ私にここまで関わろうとしてくださるのですか?」
リディアはおずおずと問いかけた。
「それは、あなたが私と同じように彼の犠牲になっているからよ。」
ジュリアは静かに答えた。「アルフレッドは私たちを利用して、自分の目的を果たそうとしている。それを許すわけにはいかないわ。」
リディアは俯き、手の中でドレスの裾をいじりながら呟いた。
「でも、私は彼のために生きてきたと思っていました。彼が与えてくれるものが私のすべてだと信じて……それが嘘だったなんて、どう受け止めればいいのか分かりません。」
ジュリアはリディアのそばに座り、その手を優しく握った。
「リディアさん、あなたの気持ちは間違いではありません。彼が巧みに操ってきたのです。けれど、これからは彼に支配されるのではなく、自分の意志で生きていく力を持つべきです。」
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リディアの過去
リディアはしばらく黙っていたが、やがて自分の過去について語り始めた。彼女は裕福な家庭に育ったが、家族が事業に失敗して没落し、アルフレッドに救われたのだという。
「私は家族を支えるために、彼の元で暮らすことを選びました。最初は彼が私たちを助けてくれたことに感謝していました。でも、次第に気付き始めたんです。彼は私を家族のために助けたのではなく、私自身を彼の道具として使うために救ったのだと。」
彼女の声は次第に震え始めた。
「彼は私に高価な衣服や宝石を与えてくれましたが、それは私が彼にとって飾り物であることを思い知らせるだけでした。私は家族のためにこの生活を受け入れましたが、結局、彼にとって私は使い捨ての存在だったんですね。」
ジュリアはその話を聞きながら、深い共感を覚えた。彼女自身もまた、アルフレッドによって自分の人生を翻弄されてきたからだ。
「リディアさん、私も同じです。彼は私を公爵夫人として利用し、自分の地位を高めるためだけに私と結婚しました。」
ジュリアは穏やかな口調で語りかけた。「でも、私たちには力があります。彼を止め、私たち自身の人生を取り戻す力が。」
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協力の決意
リディアはジュリアの言葉に心を動かされ、目を潤ませながら頷いた。
「私にできることがあれば、教えてください。私はもう彼に支配されるだけの存在ではいたくありません。」
ジュリアはほっとした表情を浮かべながら言った。
「ありがとう、リディアさん。あなたの協力があれば、彼を追い詰める計画をさらに進めることができます。」
「彼がどんな不正をしているのか、私も知りたいです。そして、それを止めるために力を尽くします。」
リディアは決意を込めて言った。
ジュリアは彼女に計画の概要を説明した。アルフレッドが行っている不正取引や、その証拠を探し出すための具体的な方法についてだ。そして、リディアがその手掛かりとなる情報を持っている可能性が高いことを伝えた。
「まず、あなたが知っている情報を教えてください。彼が普段隠しているものや、部下たちが話していたことなど、どんな些細なことでも構いません。」
ジュリアは慎重に話を進めた。
リディアは記憶をたどりながら答えた。
「彼の書斎の奥に、隠し部屋があります。私は直接見たことはありませんが、彼の部下たちがそこに書類を運び込んでいるのを聞いたことがあります。」
ジュリアの表情が引き締まった。
「それは重要な情報ね。その部屋に彼の不正を証明するものが隠されている可能性が高いわ。」
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新たな同盟
リディアの情報を得たジュリアは、彼女を新たな協力者として迎え入れた。彼女たちはアルフレッドを追い詰めるための次なるステップについて話し合い、その具体的な計画を立て始めた。
「これで、私たちは一歩前進しました。」
ジュリアは微笑みながら言った。「あなたと私が力を合わせれば、彼を必ず追い詰めることができます。」
リディアもまた、小さく微笑んだ。
「私も今までの自分を変えたいです。彼に支配されるだけの存在ではなく、自分自身のために生きたいと。」
「それがあなたの新しい人生の第一歩です。」
ジュリアは励ますように言い、リディアの手を握りしめた。
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次のステップへ
二人の女性の連携は、アルフレッドの支配を打ち破るための強力な武器となった。リディアの協力を得たことで、ジュリアの計画はさらに具体性を増し、彼を追い詰めるための次なる一歩が見えてきた。
「私たちの戦いはまだ始まったばかり。」
ジュリアは静かにそう呟きながら、新たな決意を胸に抱いていた。