舞踏会でアルフレッドの不正が明らかになった翌日、ジュリアは冷静に次の行動に移った。彼女の目的は、ただアルフレッドの不正を暴くだけでなく、自らを彼の支配から完全に解放することだった。そのためには婚姻の無効を法的に認めさせる必要があった。
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弁護士との相談
ジュリアは信頼できる弁護士を招き、婚姻無効を勝ち取るための計画を立てた。舞踏会で得られた証拠や、リディアの証言は、法廷でアルフレッドを追い詰める強力な武器となるはずだった。
「公爵夫人、アルフレッド公爵が行った不正行為だけでなく、婚姻に関する偽りの目的も明らかにすることで、婚姻無効の主張を強固なものにできます。」
弁護士はジュリアに説明した。「つまり、彼があなたとの結婚を純粋な愛ではなく、自身の地位向上のために利用した証拠を提示する必要があります。」
「その点については心配ありません。」
ジュリアは落ち着いた声で答えた。「彼が結婚前から私を利用するつもりだったことを示す手紙や記録をすでに確保しています。」
「それならば、十分に勝算があります。」
弁護士は自信を持って頷いた。「公爵夫人、これから私たちは法廷で戦います。ご安心ください。」
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アルフレッドの反応
一方、アルフレッドは自らの評判が地に落ちたことを受け入れられず、苛立ちを募らせていた。社交界からの招待は途絶え、かつて彼を支持していた貴族たちも次々と距離を置いていた。
「全てジュリアの仕業だ……!」
アルフレッドは怒りに震えながら、部下たちに命じた。「彼女を止めろ!彼女が婚姻無効を求めるなど、絶対に認められない!」
しかし、部下たちもすでに彼を見限り始めていた。ジュリアによって明らかにされた不正の証拠は、アルフレッドが築いてきた権威を完全に崩壊させていたのだ。
「公爵様、申し訳ありませんが、今の状況では……。」
側近の一人が言葉を濁しながら答えた。
「黙れ!」
アルフレッドは机を叩きつけ、部屋を出て行った。その後ろ姿には、かつての威厳はもはや感じられなかった。
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法廷での闘い
ジュリアは弁護士とともに法廷に立ち、アルフレッドとの婚姻無効を訴えた。法廷にはリディアも出廷し、アルフレッドによる欺瞞と裏切りについて証言した。
「私は彼に愛されていると思っていました。しかし、彼は私を単なる道具として扱い、同時に公爵夫人をも利用していました。」
リディアの証言は、法廷内に大きな衝撃を与えた。
さらに、ジュリアが提出した証拠――アルフレッドが結婚を利用して地位を上げる計画を練っていた手紙や記録――が決定打となった。
「これらの証拠から、アルフレッド公爵が婚姻を真実の愛によるものではなく、自身の利益のために利用したことが明らかです。」
ジュリアの弁護士は力強く主張した。
アルフレッド側の弁護人も反論を試みたが、明確な反証を示すことはできなかった。
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判決の日
数週間後、判決が下された。裁判官はジュリアの訴えを全面的に支持し、婚姻の無効を認めると同時に、アルフレッドの不正行為についても厳しい批判を加えた。
「アルフレッド公爵の行為は、貴族としての名誉に反するものであり、婚姻の無効は当然の結果である。」
裁判官の言葉が響き渡る中、ジュリアは静かに微笑みを浮かべた。
その一方で、アルフレッドは頭を抱え、法廷を後にした。彼の顔には、敗北と屈辱が滲み出ていた。
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解放の瞬間
法廷を後にしたジュリアは、これまでの重圧から解放されたような気持ちで空を見上げた。婚姻無効の勝訴は、彼女にとって新たな自由を手にする瞬間だった。
「これで終わったわ……。」
ジュリアは静かに呟き、深く息をついた。
彼女の隣にはリディアが立っていた。
「本当におめでとうございます、ジュリア公爵夫人。」
リディアは感謝の気持ちを込めて微笑んだ。
「もう公爵夫人ではないわ。」
ジュリアは笑いながら答えた。「これからはただのジュリアよ。そして、自分の人生を自分のために歩んでいくつもりよ。」
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アルフレッドの破滅
その後、アルフレッドは全てを失った。彼の財産は差し押さえられ、社交界からも完全に追放された。かつての部下たちも彼の元を去り、孤独の中で彼は自らの過ちを噛みしめるしかなかった。
「ジュリア……貴様さえいなければ……!」
彼は誰にも届かない言葉を呟きながら、荒れ果てた屋敷で一人過ごしていた。
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新たな未来へ
ジュリアはアルフレッドとの縁を完全に断ち切り、新たな人生を歩み始めた。彼女はリディアとも友情を深め、かつてのような束縛のない自由な生活を手に入れた。
「これからは、自分の信じる道を進むだけ。」
ジュリアは前を向き、強く思った。
その瞳には、新しい未来への希望が輝いていた。