数日後、再び訪れたレオナルドとジュリアの間で、思いがけない瞬間が訪れることとなった。彼が抱えていた長年の想いが、ようやく形をなしてジュリアの前に現れる。その告白に対して、ジュリアは自分自身の感情と向き合うことを余儀なくされた。
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静かな午後の再訪
その日は風の穏やかな午後だった。ジュリアは庭のベンチで白いバラの苗木を眺めながら、本を読んでいた。使用人が訪問者の到着を告げると、彼女はすぐにそれがレオナルドであることを悟った。
「また来てくれたのね、レオナルド。」
彼女は彼を庭へと招き入れた。
「ここで過ごす君の姿を見ると、安心するよ。」
彼はジュリアの隣に腰を下ろしながら穏やかに答えた。その言葉には優しさが込められていた。
二人はしばらく、花々や最近の出来事について他愛もない会話を交わした。だが、次第にレオナルドの表情が引き締まり、彼の口調も慎重なものになっていった。
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長年の想い
「ジュリア。」
彼はしばらく沈黙した後、彼女の名前を呼んだ。その声には緊張が含まれていた。
「どうしたの?」
ジュリアは本を閉じ、彼の顔を見つめた。彼の視線は、どこか迷いと覚悟が入り混じったものだった。
「君にずっと伝えたいことがあったんだ。」
レオナルドは深呼吸をしてから、静かに語り始めた。「僕はずっと、君のことを大切に思ってきた。幼い頃から、君は僕にとって特別な存在だった。」
ジュリアは驚きで目を見開いた。彼が何を言おうとしているのか、その瞬間にすべてを理解したわけではなかったが、胸の奥がざわめくのを感じた。
「君がアルフレッドと結婚したとき、僕は君の幸せを祈ることしかできなかった。でも、君がどんなにつらい思いをしているかを知ってから、ずっと後悔していたんだ。僕がもっと早く行動を起こしていれば、君をあの状況に追い込まずに済んだのかもしれないって。」
「レオナルド……。」
ジュリアは彼の言葉に返すべき言葉を探したが、何も見つからなかった。
「でも、今こうして君と再び会うことができた。これが僕にとっての新しいチャンスだと思っている。」
レオナルドの目は真剣だった。そして次の瞬間、彼は大きく息を吸い込むと、決意を込めてこう言った。
「ジュリア、僕は君を愛している。ずっと君を愛してきた。そして、これからも君のそばにいたい。」
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ジュリアの戸惑い
レオナルドの言葉に、ジュリアの心は揺れ動いた。彼の誠実さは伝わってきたし、彼がどれだけの思いを込めてこの言葉を紡いだのかも理解できた。だが、彼女自身の心はそれに応える準備ができているのだろうか。
「レオナルド……私は……。」
彼女は視線を落としながら、小さな声で呟いた。
彼が自分のことを長年思い続けてくれていたことに感謝の気持ちを抱く一方で、彼女にはまだ過去の傷が癒えていない部分があることを痛感していた。
「僕は急かしたくない。ただ、君にこの気持ちを伝えたかったんだ。」
レオナルドは彼女の心情を察し、優しい声で続けた。「君の気持ちが追いつくまで待つ。だから、無理をしないでほしい。」
ジュリアはその言葉に救われたような気持ちになった。彼の愛は、彼女にプレッシャーを与えるものではなく、そっと包み込むようなものだった。
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心の中の葛藤
その夜、ジュリアは自室で一人、レオナルドの言葉について考えていた。彼が自分を愛してくれているという事実は、彼女にとって驚きでもあり、喜びでもあった。だが同時に、自分が彼の思いに応えられるのかどうかについては大きな不安を感じていた。
「私はまだ、誰かを愛することができるの?」
彼女は自問自答を繰り返した。アルフレッドとの結婚生活の中で、彼女の心には深い傷が残されていた。その傷が完全に癒えるには、まだ時間が必要だと感じていた。
「でも、レオナルドは私を急かさないと言ってくれた。それが彼の優しさなのね。」
彼女は静かにそう呟きながら、窓の外に広がる星空を見上げた。
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未来への一歩
翌朝、ジュリアは新しい日記を開き、ペンを取り出した。彼女はそのページに、レオナルドとの会話と自分の感情を書き綴った。
「私は彼の気持ちに感謝している。でも、今の私にはまだ答えを出す準備ができていない。でも、彼が待つと言ってくれたことが、私にとってどれだけ救いになったか分からない。」
ジュリアは最後にこう記した。
「私はきっと、この先で彼に答えを出すことができる。それがどういう形であれ、私自身の気持ちとしっかり向き合おう。」
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結び
レオナルドの告白は、ジュリアにとって新たな感情と向き合うきっかけとなった。彼女はまだ完全に自分の心を整理できていないが、彼の言葉が彼女の心に希望を灯したことは間違いなかった。未来への一歩を踏み出すための時間が、二人の関係をどう変えていくのかは、これからのジュリア次第だった。