初めて手を繋げたのは十九の時。男性が苦手だった私は、彼の華奢な手と骨格の違いを肌で感じた。ビクリとする私に、微笑みながら『どうした?
私はアタフタしながら、たどたどしい日本語でパニックになってる。免疫ないのよ、それもホストの仕事をしている人なんて、特に。
女性の扱いにたけている彼は、簡単に、無意識にエスコートをする。私はお客じゃなくて『彼女』なのに、そんな事しなくていいから。
(他の女性にも同じ事するのかな?)
そう思うと不安で不安でたまらない。でもね、彼の微笑みを見ていると、彼がしたいようにしたらいいかな?って思ってしまうの。
――これが、
実際、告白したのも、好きになったのも私からじゃなかったんだけどね。最初職業とか関係なく、いつも通りに関わってたら、急に笑いだしてさ。なんでこの人、笑ってんのかな?って嫌悪感さえ感じていた。
え?それなのに、なんで付き合っているのかって?
チラリと彼の横顔を見ながら、私はあの時に戻っていく……。
◇◇◇◇◇
私の得意な事は『迷子』なの。スキルに近いのかもしれないね。道は繋がっているから、絶対たどり着ける自信があるんだ。友達に『その自信、どこから来てるの?』とよく呆れられるけど、私は、いつも通りに『大丈夫、大丈夫、どうにかなるから~』なんて危機感なんて一切感じない。
確か、彼と出会ったのは、私が一人で隣の県をドライブしてた時だったっけ。うん……そうだと……
――違うからね、大切な彼との出会いの瞬間を忘れる訳ないから。
私そこまで抜けてないし、こう見えて
いつも通り、冒険に来た私はグルングルンと色々な道を走り続けてる。窓を開けているとさ自然に囲まれているからかな?綺麗な空気が流れてて、心まで潤う感覚がするんだ。
「うーん。凄く気持ちいいなぁ」
このまま風に流れて消えてしまってもいい位、心地よくて……寝てしまいそう。家に帰宅したら
楽しい時間はつかの間なのは、いつもの事。どうしてだろう?道を走っていたはずなのに、いつの間にか狭い道へと……。
(大丈夫。道は繋がってるもの)
先に進む選択肢しか私にはないから、どんどん進んでいく。するとね、軽自動車一台分しか通れないトンネルが現れた。正直『ラスボス』並だよね。私の感覚でだけど。
「これ……進むしか……ないよね?」
チラリと助手席を確認しても、いつも隣で座っている友人はいない。一緒にドライブに行こうって言ったのに『ろくな事ないから無理!』って断られたから……今更、不安になってきちゃった。
「行こう。後戻りできないし!」
そしてトンネルの中に入った瞬間だった。運転をミスして前に進む事が出来なくなっちゃったの。
「どう……しょう」
フルフル震えながら、大好きな愛車に何度もごめんね、ごめんね、と泣きじゃくる自分がいる。こんな時『救世主』がいればなぁ……。
『どうしたの?』
「え?」
『ここ……
「えぇえぇぇぇえぇ」
『こんな所に突っ込む人、初めて見た……』
「ごめんなさい、ごめんなさい」
『いやいや謝らなくていいから』
慌てて泣きじゃくる私に、きとんと指示して不安を安定へと導いてくれる。
『ギリギリ隙間あるけど、出てくるの厳しいと思うからトランクを開けてくれないかな?』
「トランク?」
『そう。そしたら僕がトランクから入って、運転を変わるよ。それとサイドミラーを閉じて』
「ん?」
『歩行者専用トンネルだからさ。ミラーが引っかかっているのもあると思うからね。てか……強引に突っ込んだね』
「すみません」
『いやいや謝らなくていいから。その謝る癖やめたほうがいいよ?』
「……はい」
私は彼の言う通りにして、身を任せた。どうしたらいいのか分からず、見ず知らずの人を信用したって後で友人に伝えると『あんたって……』と溜息を吐けられちゃったっけ。
私の車は古いタイプだし、何の不安もなかった。トンネルに勢い余って破損もないからさ。ゆっくり開いたトランクから『お邪魔するよ』と忍者のように、スルリと入り込む彼を見て、なんて綺麗な人だろうと見とれてしまった。
――彼には内緒だけどね。
◇◇◇◇◇
あの後は色々な人に迷惑をかけてしまった。そして両親も駆けつけて大騒動。それがきっかけで、