「しかし凄いな」
ガンドルフィは小さな小瓶に入った黄金色の液体に顔を近づけた。
「本当だな。私も実物を見るのはこれが二回目だ」
同じく私も顔を近づけた。
「そ、そんなに凄いアイテムなのか?」
「やはり私の目に狂いはなかったのです。すぐに高価なアイテムだと気付いたのであります」
「見つけたのはボクだよ。ゴブリンの胸ポケットの奥に隠しポケットがあるのにマリオットもジェラドも気付かなかったじゃないか」
「「「ねえ、シルシル。これって幾らぐらいで買い取ってもらえるの?」」」
マリオット、ジェラド、パナンの三人は倒したゴブリンが持っていた小さな小瓶が幾らで買い取ってもらえるのか目をキラキラと輝かせて私に詰め寄った。
「これは紛れもなく『
金貨三十枚という言葉に三人の子どもたちは目を丸くした。
ガンドルフィは「俺の給料一ヵ月分か……」と溜息をもらした。
「す、すげー! 三人で分けても一人金貨十枚だぜ!」
「やったのであります。これで欲しかったアレもコレもなんでも買えるのであります」
「…………」
マリオットとジェラドは抱き合って喜んだが、パナンは一人、神妙な面持ちだった。
「どうしたのパナン? 嬉しくないの? あ。わかった。金貨なんて大金を持っていたらお母さんに取り上げられると思ってるのね。大丈夫よ。これはあなたが冒険者として獲得した正当な戦利品なんだから、お母さんだって取り上げる権利はないわ。
だからちゃんと
ガンドルフィが「自由の意味とは」と呟いたような気がしたが、私は無視した。
私はパナンを励ましたが、パナンの表情は一向に晴れなかった。
私はどうしたのだろうかと怪訝に思った。
「…………たくない……」
パナンがポツリと呟いた。
「ボク、この『
パナンの言い放った言葉には私はもちろんガンドルフィ、それに何よりマリオットとジェラドも驚いた。
「な、なんでだよ、パナン。金貨十枚だぜ」
「そうですよ、パナン。あなただって欲しがってたオモチャがあったじゃないですか。このお金で買えるんですよ?」
パナンは考え直すよう二人に説得されたが「絶対にイヤだ!」と聞き入れなかった。
そして『
「あッ! 待てよ、パナン!」
「どこへいくのですか、パナン! 走るのは構いませんが大切なその
マリオットとジェラドもパナンを追って走って出ていった。
「どういうことだ?」
ガンドルフィは眉間に皺を寄せたが、私にもパナンの行動は理解不能だった。