大日本帝国、アラスカを購入して無双する
(初版・カクヨムのみ)
https://kakuyomu.jp/works/16818093077601861143
(改稿版・ネオページ)
https://www.neopage.com/book/32465766414179700
ネタバレ防止のため空行を設けます。
本作ですが、私が初めて書いた歴史小説です。「日本がアラスカを購入する」というif要素を起点にしています。起点を考えるにあたり、二つの条件を設定しました。
・戦国時代、三国志以外の時代設定
・主人公は転生者にしない
まず、時代設定についてです。小説投稿サイトでは、戦国時代、三国志が人気です。しかし、これらを書くには専門知識が必要です。つまり、この時代にはどんな物があり、どう使用されていたかなどです。私の歴史知識は高校生レベルです。戦国時代などを緻密に描写するには知識が足りません。下手にチャレンジすると、専門知識がある方からツッコミが入りかねません。また、人気である=競合が多いということです。また、これらを書く場合、読者にも専門知識を要求することになります。ですから、戦国時代、三国志以外という条件を設定しました。
次に、主人公を転生者にしないという条件についてです。これは、先ほどの話と一部被りますが、転生者は前世で歴史オタクだったという前提が大半です。専門知識を用いて、不利な状況から成りあがるというのが一種のテンプレです。これを書くには、やはり私の知識が足りません。もう一つの意図としては、カクヨム以外のサイトでも歴史ジャンルで公開するためです。
例えば、アルファポリスでは歴史ジャンルについて、明確な定義があります。以下、公式サイトからの引用です。
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以下の要素を含む作品についてはカテゴリーエラーとなります。
・過去や未来へのタイムスリップ
・過去や未来の人物・時代への転生・転移
・その他、異世界ファンタジー要素が含まれると判断される作品
なお、上記の要素が含まれていなければ、いわゆる架空戦記や歴史改変といった内容の作品はカテゴリーエラーとはならないものとします。
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つまり、アルファポリスで投稿する場合、転生者を主人公にすると歴史ジャンルを選択できないわけです。では、どのジャンル設定をするか。異世界ファンタジーです。「転生/転移」の言葉がある場合、大衆娯楽ジャンルも設定できないためです。異世界ファンタジーは人気ジャンルですから、ここで勝負するのは不利です。こうした考えもあり、転生者を主人公にすることを見送りました。
◼️なぜ、アラスカ購入なのか
戦国時代、三国志以外となると、選択の幅が狭いです。平安、江戸、明治、大正、昭和です。平安時代、江戸時代は国内が比較的安定していた時期です。ここで歴史改変を行うのは困難だと考えました。また、昭和を選択すると第二次世界大戦を扱うことも視野に入ります。しかし、これを扱うのには神経を使います。下手に書くと炎上しかねません。消去法によって、明治もしくは大正となりました。
では、この二つの時代で、どの出来事を歴史改変の起点にするか。これは作戦として考えたというよりは、「アラスカ購入」という出来事が頭に浮かんだからです。高校時代に世界史を専攻していたためだと思われます。アラスカ購入は、ある程度の人に知れ渡っていて、かつ、世界史の範囲です。日本史の場合、スケールが小さくなりがちです。世界史であり、ifが設定しやすい。ここで、アラスカ購入を起点にすることが決定しました。
起点を決めたはいいものの、登場人物をどうするかに悩みました。史実に沿った人物を起用すると、ライト層が読む確率は下がります。そこで、幅広くアプローチするために、明治の偉人を主人公に据えました。つまり、伊藤博文、西郷隆盛、勝海舟らです。彼らを知らない人はいません。ですから、首相は伊藤博文、西郷隆盛は陸軍大将、勝海舟は海軍大将のように設定しました。また、偉人の名前を使うことで、登場人物を記号化できると考えました。例えば、ラブコメならAはツンデレ、Bはゾッコンというように、登場人物を一言でまとめることで、読者に分かりやすくしています。この手法を使うことで、読者が混乱しないようにしました。
◼️歴史改変からエンディングまで
起点を決めた後にラストシーンを考えました。これは、すぐに思い浮かびました。「全世界を日本領にするが、実は南極大陸を征服していなかった」というものです。ですから、「南極大陸を征服するまで、彼らの物語は続く」というエンディングになりました。
エンディングが決まったら、オープニングからどうつなぐかです。よく、小説は山登りに喩えられます。エンディングは山頂。途中のチェックポイントは、必ず描くシーン。チェックポイントを通過さえすればいいのですから、直線、グネグネと決まりはありません。本作では一直線にしました。これは、「今、どこが日本領か?」を作者と読者が把握しやすいようにするためです。また、グネグネにすると冗長になると考えました。
◼️第一話について
小説ですから、第一話で読者の心を掴まなくてはなりません。そして、さらに言うならば一段落目で、です。読者は第一話の冒頭を読んでブラウザバックするかを決めます。タイトル→キャッチコピー、あらすじと数ステップ踏んで第一話にたどり着きます。せっかく、ここまで引きつけられたのに、第一話の冒頭で見切りをつけられてはもったいないです。本作の冒頭はこうです。
〜〜〜
「アラスカが欲しい」
15才の明治天皇の言葉だった。その顔は少年らしく、無邪気そのものだった。
「アラスカってあのアラスカですか? ロシア帝国が買い手を求めているという?」
「それ以外ないでしょう?」
大日本帝国の首相である伊藤博文は困惑した。アラスカが欲しい!? 聞き間違いではないようだ。そして、明治天皇の喋り方はまるで「このおもちゃが欲しい」という子どもの願望のようだった。おもちゃよりも遥かに高額で、大きな買い物だ。財布は国のものである。
〜〜〜
明治天皇の無邪気な言葉から始まり、その発言に伊藤博文が驚愕する。そして、アラスカ購入をおもちゃの購入に喩える。「伊藤博文はアラスカを購入することを決意した」からはじめては、インパクトがありません。そこで、セリフから始めることにしました。二行目以降が地の文であれば、カバーできると考えました。
◼️タイトルについて
タイトルを考えるにあたっては、ライト層にも分かりやすいことを意識しました。また、成り上がりが流行りですから、この要素も含めることを考慮しました。こうして、タイトルは『大日本帝国、アラスカを購入して無双する』になりました。「アラスカ購入」が主題であることを伝え、「無双する」で国家単位での成り上がりを保証しました。
◼️前日譚と外伝(改稿版のみ)
改稿版では、前日譚と外伝を付け足しました。本作は「史実より早く大日本帝国にいなっていた」という設定ですが、それ以前については記述がありませんでした。そこを深堀りすべく、前日譚を設けました。また、政府のアラスカ購入と世界征服について、「市民からは、どう受け止められていたか」を描くために外伝を設けました。こちらは、最終話では20XX年を舞台にし、南極大陸を征服した後の日本を描きました。
結果的に、歴史ジャンルで週間ランキング最高3位、11万PVと多くの方に支持されました(初版)。また、改稿版はカクヨムコンテスト10の中間選考を突破しました。初めての1万PV越え、初めて長編で中間選考に進むなど初めて尽くしの作品になりました。これは意図せずですが、「アラスカ購入」でネット検索すると、初版が1ページ目か2ページ目に表示されるかと思います。比較的マイナーでありながらも、PVが多く、カクヨムのドメインパワーが強いためだと思われます。
長編を扱ったため、文章が長くなりました。これから歴史ジャンルを書く方の参考になれば幸いです。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
(初版・カクヨムのみ)
https://kakuyomu.jp/works/16818093077601861143
(改稿版・ネオページ)
https://www.neopage.com/book/32465766414179700