「勇者ロイク・ブロサールよ。
その剣は間違いなく神託の聖剣である。
故に、汝に魔王討伐の使命を託す」
謁見の間。
ユグド=ミレニオ国王、フレデリク・ダルトワは厳かに言葉を紡いだ。
荘厳な玉座と豪奢な装飾に囲まれたこの場所で、ロイクは自分を、場違いな存在であると感じていた。
粗末な旅装のままの格好――膝丈の古びた胴衣、擦り切れた外套、土埃を纏ったままの靴――で居るので、余計に居た堪れない。
だが服を新調するわけにも、そんな時間も無かった。
貴族たちの冷ややかな視線が、ざくざくと突き刺さる心持ちだ。
(なんで、俺なんだかなぁ)
光を固めたような刀身。美しい曲線を描く鍔。手にしっくりと馴染む柄。
本物である。
――実際、何度か大樹の根に刺して抜き直してみたりもしたのだ。
ロイク自身が信じられなかったので。
だがやはり何度繰り返しても、ロイクだけしか抜くことは
しかし聖剣が本物だからと言って、自分は本当に「勇者」なのだろうか。
そう思ったのはロイク自身だけではなく。
「陛下」
一歩踏み出した者が居る。
ジェラルド・ラヴェル。騎士団長だ。
王は頷いて言葉の先を促した。
「勇者が真に勇者たるものか、見極めたく存じます。どうか、わたくしめに手合わせの許可を」
当然、と貴族たちは頷き、王も許可をする。
教団関係者たちもそれを是とし、ロイクに視線を向けた。
「……わかりました」
今更、逃げるわけにもいかない。
試合は闘技場にて行われた。
観覧席には貴族や聖職者たちが所狭しと並んでいる。
その視線の半分は興味、半分は懐疑的なものであった。
ジェラルドは輝かしい重装鎧を
対するロイクは旅装のままだ。軽装鎧すら要らぬと言う。
あまりに身軽、というよりは無防備な姿に、客席では不安げな囁きが交わされる。
だが、ロイクは右手に聖剣を下段に構えると、特に力みもせず自然に立つ。
どこか異様であった。
開始の号令と共にジェラルドが踏み込んだ。
鋭い斬撃をひらりと
一閃。
澄んだ音が響き、ジェラルドの剣は宙を舞っていた。
そしてくるくると弧を書くと、闘技場の床に音高く落ちた。
大理石の床石は傷付きやすい。大きく欠けた気がする。
高価なものだろうに……。
ロイクは場違いにもそんなことを思った。
闘技場は歓声、というよりは
ジェラルドは王国最強の騎士団長である。
それがこうも呆気なく敗れるとは。
「あの青年は化物か」
「いや、勇者なのだからあれくらいは、」
「それにしても桁外れな……」
「なんという……辺境は魔境か?」
当たらずとも遠からず。
ロイクが育った村では狼や野犬の代わりに魔獣が現れ、家畜を襲う。
また、草食動物たちも強く大きく、何をするにも命懸けの日常である。
強くなければ生き残れない場所なのだ。
そんな村でも、ロイクは最強である、ということになっている。一応。
一応、なのは今年の祭で優勝したからだ。
毎年行われる収穫祭の余興。腕比べ。今年はロイクが優勝を勝ち取った。
だが、来年勝ち残れるかはまだわからない。
強者は有り余るほどいる村である。
閑話休題。
試合を終え、ロイクは再び王の前に跪く。
「見事であった。その腕ならば、魔王も討ち取れよう」
「……は」
本当に大丈夫なのだろうか。
不安げなロイクにヴィヴァ教団の
また、
「勇者ロイク。魔王は生ける災厄。
「そのような存在を止められるのは、聖剣に選ばれし貴方だけなのです」
その言葉は重く、ロイクに
勇者とは選ばれし者。
そして抗えぬ