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第40話 怪獣大戦争2

薄っすらと黒光りする深緑色の鱗に、巨大な翼。

30mはありそうな体躯は、所どころいびつに突き出しており、漆黒の鉱石が生え、白銀の魔力が微か漏れ出していた。

おそらく存在値は40000を超えるだろう。

姿を見て一瞬怖気が走る。


太い前足は台地に食い込むよう。

四つん這いのような格好で、禍々しいびっしりと生えている牙をのぞかせていた。

ブレスの残滓か、いまだ魔力がまとわりついている顎をこちらへ向けている。


超高温で斜線上がえぐれるように土がむき出しになっており、周りの木々は炭と化していた。


「トカゲ!!不敬…ダラスリニア?」

「………平気…問題ない」


声を交わしながら、二人はそれぞれ自分の纏う色の魔力を練り上げ、臨戦態勢に入る。


「!?っ…???」


瞬間異変に気付く。

傷が治らない。


「ノアーナ様の魔力?厄介…!!!!!???!!!!」


2柱が魔力をまとった瞬間、目の前のバハムルトは姿を消した。

頭上から大質量の、すべてを引き裂くような鋭利な爪が叩きつけられる!


「!!!【衰退】っっっ!!!!」

「…!!!!【静】っっっ!!!!きゃああっ?!!」


ドグワシャアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!ーーーーーーーーーーーーー


頭上でクロスしてガードした腕がきしむ。

濛々と土ぼこりがたち足元にはクレーターが形成された。


一瞬反応が遅れたダラスリニア。

腕が曲がってはいけない方向にひしゃげ、エリスラーナのすぐ横で倒れていた。

服を引き裂かれ胸がえぐられ、血だまりが徐々に広がっていった。


視界が真っ赤に染まる

エリスラーナは創造されて4800年、生まれて初めてブチギレた。


「こんの腐れトカゲがああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」


古の王たる伝説の古龍、黒い雷を纏い、その姿を現した。

龍化に伴いエリスラーナの存在値が80000を超える!!


顕現と同時にすべてを滅ぼす呪いを含んだ極光のブレスを放つ!


権能によりスピードの落ちたバハムルトは避けることができない。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!…ブバツ?!!――――」


直撃を受けたバハムルトが叫ぶ!

だが許さないというようにその横面に尾の一振りが叩きつけられた!!


堪らずたたらを踏むバハムルト、刹那、視界が消えるほどの極光が、まるで生えてきたかのように顕現、呪詛を含む轟雷が蹂躙する!


「グギャワ!!ッッグギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


瞬きするいとまに、もたらされた圧倒的な攻撃。

大怪獣バハムルトは崩れ落ちた。


頭は半分吹き飛び、右の腕は根元から捥げ、左の羽は吹き飛ばされ、全身からはおびただしい量の白煙が上がっていた。


生き物の焦げる匂いが周囲に立ち込める。


パキャ…ゴトッ、ガラガラッ…ゴトッ…


バハムルトから生えていた漆黒の鉱石が剥がれ落ち、土に落ちる音が響き始めた。


※※※※※


「ふーっ、ふーっ、ふーっ……?!っダラスリニア!!」


龍化を解いた反動で、エリスラーナは立っているのもやっとだった。

ふと我に返り、慌てていまだ焦げ臭いにおいに包まれている周囲に視線を向けた。


本能的に彼女を守るよう、位置取りはしたと思う。

だが憎いトカゲを滅ぼすことのみに全力を注いだため、完全に理性が吹き飛び全力で蹂躙してしまった。

気付けば、死骸を中心に、広大な死の荒野が広がっている。

背中に嫌な汗が噴き出してきた。


「!?っ…ダラスリニア!……みつけた!」


ダラスリニアは自分をはさみバハムートとのほぼ対極の位置に横たわっていた。

急いで駆け寄ると、意識は戻ってないようだが、濃紫色の魔力に包まれて出血は止まっていた。


大きな傷はゆっくりではあるが、徐々に回復し始めていた。

見届けたエリスラーナはほっと溜息を吐き、座り込んだ。


「はあっ、つかれた………きつい」


ダラスリニアの無事を確認したエリスラーナは、重い足取りでバハムートの死骸だったモノ、今は白銀揺らめく漆黒の鉱石の山へ近づいた。


すると鉱石はキラキラと輝き始め徐々に霧散し、20歳くらいの銀髪のノアーナそっくりの男性が、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


「!…回収…」


エリスラーナはぶつぶつ呟き、手に魔法石を顕現させ、男性に駆け寄りまじまじと覗き込んだ。


「ほしい、かも……」


いつも優しいノアーナ。

恋慕を抱いていることは初めから自覚していた。


でも絶対的な創造主様。

手には入らない。


なら…この子…同じ………


エリスラーナはぶんぶんと大きくかぶりを振って、ノアーナもどきに魔法石を掲げた。


ノアーナもどきだったものから膨大な魔力が魔法石にまとわりつき、持っているエリスラーナはほとばしる魔力の奔流に包まれた。


「あっ…ん♡???…からだ、全部…撫でられている…みたい?…はう♡…なかに♡……きもちいい♡…んう♡…こんなの…はじめて♡」


顔を真っ赤に染め、イケない所が疼き、足がガクガクする。

エリスラーナはぎゅっ♡と自らを抱きしめた。


大怪獣退治、完了。


※※※※※


帰還後、治療したり労ったり褒めたり。

だっこが「ギュっとしてすりすり」にバージョンアップしたり。

ダラスリニアの甘えん坊モードが大暴走したり…


などなど色々あった。

いやほんと。


最終的に149%の回収率となり、その後探索に引っかかることもなくミッションは成功したのだった。


こうして茜ちゃんがもたらした騒動は終息を迎えた。


皆がそう信じ、俺も確信していた。


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