(新星歴4814年7月22日)
ノアーナは今回の欠片事件がほぼ終息したタイミングで違和感に囚われていた。
彼の数十万年の想いに隠れたおそらく暗い想い。
想いが全てを覆すと考えている彼にとって今回の事件は腑に落ちていなかった。
「どうして考えもせずに、あいつらは行動したのだろうか」
彼はこの数十万年、ひたすら悩みながら考えて想いを込めて行動してきた。
おそらく欠片はその想いの反対の想いを含んでいるはずなのに、全く理知的な行動をとっていない。
「考えすぎ…なら良いのだがな」
一人隠れ家でお気に入りの紅茶を飲みながら独り言ちる。
吸収率は当初の予定を大幅に超え149%に到達した。
あれからも皆で権能や様々な能力を使い調査している。
もう全く見つからない。
「だが…俺はこの世界を守りたいが、もっと大切なものができた。あの6柱たちだけでも、守りたい…最悪を想定しよう」
もし、俺以上の強い悪意が膨大な力を蓄えて向かってきた場合…
今の俺たちでは抗えない可能性がある。
だが基本あいつらは吸収しないと強化はされない。
ならば吸収できない空間を作ればどうだろうか。
俺はおもむろにアートに念話を飛ばした。
「アート、今良いか?ああロックを解除する。隠れ家に来てくれ」
※※※※※
アースノートはガチで天才だ。
彼女の元の種族はあまりの科学の発展により滅んでしまった。
その時の最後の少女を俺は保護し、俺の拙い地球の知識を教えながら一緒に学んだのだ。
「1を知り10を理解する天才か…ホント尊敬する…少しやばいところもあるが」
空間がきしみ魔力があふれ出す。
アースノートが来たようだ。
「すまないな呼び出して…ええっ?!」
俺は思わず紅茶のカップを落としそうになった。
見たことも無い様な美少女が、裸と変わらないような薄いピンクの衣をまとい俺の目の前に現れたからだ。
「ああ、ノアーナ様…ついに…あーしを…わたしを召し上がってくれるのね♡」
意味の分からいことを呟いた超絶美少女は俺に体をわざと擦り付けるように抱き着いて来た。
「っ!!…お、おい!?」
なんだこれ!?
…やばいメチャクチャ興奮してきた…媚薬?…くっ。
俺の手が勝手にアースノートの背中をさする。
うわっメチャクチャ柔らかい…
ああ、色香を放つ、柔らかそうなふくらみを…
〇×〇×たい…
ああ…
なんて…魅力的なんだ…
くっ!?
「か、解じ…」
何とか堪え解呪を試みる俺に、アースノートは許さないとキスで俺の口をふさぐ。
「んんんん?!…んん…んう…」
アースノートが俺の髪の毛を優しく梳かす。
意識が飛びそうな、良い匂いと女の咽かえる匂いが俺を包み込む。
アースノートの可愛らしいピンクの唇の感触が、俺の意識を…
「びいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
突然けたたましく鳴り響くアラート音に、アースノートの動きが止まる。
ぎりぎりで耐えていた俺は倒れこむように横に体を投げ出した。
その時たまたま俺の膝が、アースノートの胸の先をこするように接触した。
アースノートの全身にかつて経験したことのない快感が襲う!!
「あああああん♡…あああ…あふん♡…あああああああああ♡」
俺はそのまま床に倒れた。
アースノートは失神するようにへなへなと崩れ落ちた。
こうして俺の貞操は守り切られた。
なんだこれ?
※※※※※
俺の前にはいつものぐるぐる眼鏡を装着し、涙目の緑の物体がプルプルと震えている。
もちろん会議室で、皆がその様子を観察しているが。
「おい、アート。反省したか?」
「………は、い……」
俺は大きくため息を吐く。
「あー、お前の気持ちは嬉しい。嘘じゃない…すごく魅力的だった」
「でもな、俺だってお前たちを、なるべくそういう目で見ないように努力しているんだ。大切なお前たちを雑に扱いたくないんだよ。分かってくれるか?」
「……うん…」
くはー。
いつものコイツの格好なのに、さっきのコイツが目に焼き付いていて…
糞可愛いじゃねえか!!
俺は高鳴る鼓動を無理やり落ち着かせた。
「解ったならどうするんだ?可愛くて賢いお前ならわかるよな?」
「……ごめんなさい」
これって『ギャップ萌え』とかいうやつか。
まさかリアルで経験するとは思ってなかった。
うん、一つ利口になった。
「ノアーナ様、アースノートも反省したようですし、お許しいただけませんか?」
「ああ、別に怒っている訳じゃないんだよ」
「でもしっかりと理解させたかっただけだ」
「俺の選んだお前たちはとても可愛くて美しくて魅力的なんだ」
「あまり軽率な行動はとってほしくない」
またまた炸裂するノアーナ節。
言った本人は全く気付かないが、こういうこと言うコイツが実は一番悪いのでは?と思うアグアニードなのだった。
女性陣、皆目が♡だもんね。
※※※※※
「本題だが、皆の努力で取り敢えず脅威は去ったと思う。だが対策を強化したいんだ。聖域を作成したい」
モンスレアナが口を開く
「?…聖域…ですか?」
「ああ、今回のアイツらの行動に俺は違和感を覚えているんだ。確かに厄介だったが意志を全く感じなかった…俺の想いの逆だぞ。さぞ陰険だと思っているんだが」
何故か全肯定の神々たち。
「…それでもしそういう奴らが
俺は全員を見渡す。
「それでわれらが頭脳の意見を聞きたかったんだよ」
「「「「「あー」」」」」
「ノアーナ様、順番、違う」
「そうだよー。いきなり天才に聞いても―絶対変な方向へ行くよー」
「……頼って…私にも」
ダラスリニアが『クマのよう』なぬいぐるみを抱きしめつつ拗ねたような顔で俺に零す。
「ああ、反省しよう。で、どうだ?何かいい方法が浮かんだ奴がいるか?」
「そうですわね。概念でできることをわたくしたちの権能を絡ませればかなりの強度のものを構築できますわね」
沈黙していたアースノートが口走った。
「そこに科学をぶち込みますわ。ノアーナ様。設計図の作成許可を」
アースノートの目が、科学者のそれになった。
そして守りたいという想いが溢れてきていた。
「流石頼りになるな。進めてくれ。皆も気づいた事があればどんどん言ってくれ。何しろ俺は頭が良くないんだ。皆が頼りだ。頼んだ」
こうして、逆転の礎となる聖域が構築される。
そしてこれが全ての逆転につながる副産物を多く作り出すことにノアーナをはじめ誰も気付いてはいなかった。
いやマジでグッジョブ!