(新星歴5023年4月30日)
エリスラーナは固まっている同胞たちを眺めると、ない胸を張り腕を組み宣言した。
「さっき欠片ゲット。これでノアーナ様と結婚。皆は不敬だからダメ」
今度は固まっていた皆が、弾かれたように口々に自分の主張を言い出す。
まあ、欲望ともいうが。
「…だめ…わたしが結婚…いちばんがんばった」
「何言っちゃてるのかしら?計測器作ったあーしが一番ですわ♡」
「ノアーナ様との共同作業♡はあはあ、こっ、子作りも、もちろん。一番ですわ♡」
「あらあらあら?今日の議題は違いましてよ」
「まあ結婚するのはやぶさかではございませんけど」
「貴方達小娘では荷が重いと思うのですけれど?」
4柱の女性陣が火花を散らす。
「あははー。さすがノアーナ様。すんごい人気―」
唯一の男性であるアグアニードはため息交じりにつぶやくのであった。
※※※※※
この200年間、神々もただ遊んでいたわけではない。
大切な創造主であるノアーナの願いを叶えるため準備を着々と進行させていた。
あの後最初に違和感に気づいたノアーナは、存在値を落とした後だった。
最悪のタイミングだった。
あれほど永遠ともいえる悠久な時間のすべてを捧げ、やっとたどり着いた安息の日々。
心から幸せそうに微笑むノアーナの様子。
力を落とすと言われたとき不満のあった神々も、その様子にできうる限り応援しようと心から願うほどだった。
まああまりに長い時間彼に会えなくて、不貞腐れて17年くらい寝ていたお子様もいたのだが…
※※※※※
「ねー、大変な仕事をしているアルちゃんいないのにー、それはだめでしょー、もー」
しょうがなくアグアニードは仲裁することにした。
話が進まない。
「むう。分かった。それはあと。それよりアースノート、進捗」
頬を膨らませながらも、本日の議題のためエリスラーナはアースノートに問いかけた。
自分から降った話を自分で後回し。
さすがは最強幼女。
「ん-?あれ、回収量増えてる?…ああエリっちの分ですわね。えーと……」
ごそごそとなぜか着ぐるみの中を漁ってこれでもないあれでもないと呟いている。
お前はド×〇もんかっ!
「ジャーン!回収値がエリッちの6400増えたから57780、蓄積値が66840ですわ!最盛期上回れますわ♡」
「って6400?!!」
おおっ!!感嘆の声が上がる。
「よゆう…アイツの追跡は?どう?」
「今は反応ないですわね。あのクソッタレはどこかにバックレやがったようですわ。まあこの前見て150000位だったから、アルテの件が片付けば…余裕ですわ♡」
「わかった。本題」
そういってエリスラーナは席に着いた。
促されて皆も席に着く。
当然ダラスリニアはお気に入りの端っこの席について『クマのような』ぬいぐるみを抱きしめた。
「皆も感じたはず。ノアーナ様今半分くらい」
「ちょっとまってー…うん。そーだねー!?えっ、たった2日で?」
「……さすがノアーナ様…すき♡」
「一気に決める気ですわね」
「たぶん手に入れた…根源魔法」
爆弾発言に、再びエリスラーナ以外が固まる。
「だからさぼりすぎ。不敬」
一昨日まで寝ていたとは思えない上から目線なエリスラーナであった。
※※※※※
ギルガンギルの塔はかつてノアーナが軌道エレベーター作ろうと、無駄に情熱を燃やした失敗作だ。
もともと実際に成功した例は見たことがない。
かつて一つの星で科学が異常に発達したときに、構想を確認しただけだ。
とはいえさすがは創造主。
暇に任せ4000mくらいまでは作り上げた。
ただ反転魔法・重力魔法を概念で縛ってもそれ以上伸ばすことが難しくなり、費用対効果と費やしすぎた時間を考え、取り敢えずそこまでで完成とした。
ノアーナの隠れ家や神たちの部屋。
会議室(ゲームセンター)
かけ流し温泉(はしゃぎ過ぎた誰かのおかげで使用禁止)
スポーツジム(意味なく稼働なし)
研究室(アースノートの寝室代わり)
客間(そもそも誰も来れない)
ブリーフィングルーム(会議室というゲームセンターで事足りる)
映画館(上に同じ)
フードコート(無人。利用なし)
図書館(時々奏が使用)など。
多くの多機能センタービルとしていて建設されていたが…
正直持て余していた。
だが、今回の200年前の事変の際は、切り札とも呼べる活躍をすることになった。
十重二十重に施した各種結界と多様な概念に神々の権能をこれでもかとぶち込み、術式の永続を可能とした絶対に感知できない部屋。
すなわち聖域を作り上げていたのだ。
いらん事を大分していた魔王様。
グッジョブである。
そして聖域ではノアーナの存在の一部を対価に、神々の権能を増幅させ、ある術式が紡がれ、世界に対して権能を機能させていた。
世界は200年の長い間、誰にも気づかれる事無く、いくつかの事象を隠ぺいしていたのである。
編みこまれた術式で再現された【虚実】の権能によって。