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第99話 迷宮攻略クエスト

(新星歴4817年10月26日)


~モレイスト地下大宮殿18階層~


茜、セリレ、ギルアデス、ラスタルムの4人は階段下の踊り場のような場所に転移してきた。

聞いていた通り辺りに敵の気配はない。


「えっと、セリレさん?よろしくお願いしますね」


「うむ、我も茜と呼ぼうぞ。茜、我のことはセリレで良い。おぬしなかなか強いな。我は強者が好きじゃ。モンスと遊びに来るがいいぞ。ああ、普通にしゃべれ。くすぐったいわ」


「うん、セリレ。今度行くね」


「勇者茜様」


ギルアデスが茜に声をかけた。


「ギルアデスさん、茜でいいです。年上の方に敬称をつけられるのはちょっと…慣れませんので」


「分かりました茜。わたしも呼び捨てで構いません。「ギル」とでもお呼びください。敬語もいりません」

「っ!……わかった。ギルさん。よろしく」


「茜、俺も普通でいい。ラスターって呼んでくれ」

「うん分かったよラスター。よろしくね」


「じゃあセリレ先頭で行こうか。地図は分かってるよね?」

「もちろんじゃ。無駄に広いからのう。最短で行くぞよ」


※※※※※


モレイスト地下大宮殿は禁忌地の一つで魔王ノアーナが戯れで実装した施設だ。

まさか本当に勇者の試練になるとは思っていなかったはずだが。


しかし冗談で済まない事態であることには変わらない。

会議室でノアーナは茜たちの無事を願うしかなかった。


そして今から、命運をかけた戦いが始まる。


※※※※※


薄暗いが壁が発光しているのだろう。

視界は確保されており、近代的な迷宮は不思議な金属で作られていた。


全く手が付けられていないことに逆に心配になったが、ギルアデスの魔眼にも全く反応がなく、茜たちは完全にスルー状態で18階層を通り抜けた。


多くの分かれ道があったが、神々の調査の結果すでに最短ルートは確保できているため4人は1刻ほどで19階層に到達していた。


19階層は1本道だ。

目の前に大きな扉がある場所に4人はたどり着いた。


扉の上には『試練の間』と書かれていた。


「ここじゃな。茜、ぬしは見ておるがよい。我の力存分に目に焼き付けておけ」

「セリレがスキル使ったら、俺が端からぶち倒す。ギルは落ち着いたら魔眼を頼む」


皆で行動の確認をした。


「よし、いくよ。皆頼みます」

「うむ」

「ああ」

「はい」


そして扉を開いた。

同時に紅い光が確認するように一斉にこちらへ向いた。


「風化!!」


セリレの体が細かい粒子になって試練の間を包み込む。


「雷撃!!」


刹那部屋中をまばゆい光が縦横無尽に駆け巡り、回路が焦げるような金属臭が灯りを包んだ。


「どうじゃ?」


茜のすぐ横にセリレは人化し問いかけた。


目の前には壊れたようにぎこちない動きの兵器らしきものが、緩慢な動きでのろのろと意味不明な行動をとっていた。


おそらく回路がショートしたのだろう。


ドグワシャーーーン、ガコッ!!ドガーーーーン

ガシャーーン……ドゴーーーン…‥…


グシャアアーーーーー!!ドゴンッ!!………


ラスターが端から殴り倒す!!

あっという間に動いているものは居なくなった。


「魔眼発動!!!」


ギルアデスは眼帯をとり、黒で縁取られ呪紋の刻まれた金色の瞳に魔力を込めた。


「……ひとつ………ふたつ………おりますな」

「こちらへ来い!!」


ギルアデスの強制の魔眼が発動し、4人の目の前に2匹のスライムがゾゾッ、ゾゾッと近づいて来た。


4人に怖気が走る。


「な、なに?この気持ち悪いスライムは?」

「なるほどのう。これは放置できぬわ………存在値8000を超えておるぞ……だが意志がないようじゃ。どうする?魔眼が効いておるということは、いずれ意志に目覚める。消すなら今じゃな。ラスター、燃やし尽くせるかのう?」


「ああ、やってみる。のろいから火力重視でぶち込んでみるか」

「深淵の業火・餓鬼界を包む煉獄の炎・顕現し焼き尽くせ………地獄顕現獄炎!!!」


ラスターが紡いだ魔法はスライムに直撃し、超高温で包み込んだ。

辺りを黒い煙が包み込む。


そして…………無傷で佇む3匹のスライムが緩慢な動きでそこにいた。


衝撃を受けた影響か、1匹が分裂したようだ。


「っ!!??」

「ダメだ魔法が効かない!」


「神器開放」

「はあああああ!!!」


茜が神器を装着し、琥珀色のブレードで切り裂いた。


「!~~~~っ!!??」


スライムはキラキラと光を放ちながら消滅した。


「神器封印」


「やっぱり私じゃないとダメなんだね」


装備を解除した茜がつぶやく。


「恐ろしい………こんなのが世界にばらまかれたら……本当に滅ぶぞ」


ギルアデスは思わずつぶやいた。

皆が頷く。


「こいつらは絶対仕留めないとだめだ。スライムは無害ゆえに世界中にいる。紛れたら対処できなくなる」


「そうじゃな。全く神たちは本当に優秀じゃな。頭が下がる。まあ魔王が優秀という事じゃな。茜、力を使ったが問題ないかの?」


「うん。これくらいじゃ全く影響ないよ。いよいよ決戦だね」


「茜、君にかかっている……こんな時に不謹慎かと思うかもしれないが、またあの可憐な姿が見られることはこのギルアデス、至上の幸福だ。さあ茜、変身するんだ」


「うっ!…………そうだった…………うう」


世界の危機に、使命感に燃えて恥ずかしさを忘れかけていた茜。

突然のファンの一言で、再度恥ずかしさが噴出した。

だが恥ずかしければ恥ずかしいほど効果が上がる攻撃だ。


実はギルアデス、今回のMVPだった。


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