4人は最奥の手前の踊り場にたどり着いた。
扉の向こうからは不穏な気配が漏れ出していた。
4人が頷く。
茜は真っ赤だ。
「うむ。それでは茜、頼むぞよ」
「……………はい………」
キラキラした目で見つめる3人に、茜の恥ずかしさは過去最大レベルまで上がっていった。
「くっ………」
「輝く…瞳は希望の光…纏うピンクは愛の……証…みんなの…アイドル…ズッキュン、キュン…魔法少女キラリン茜…みんなのはーと…くぎづけよ♡」
『魔法少女!世界を救う!!ここに降臨!!!』
何故か変わったナレーション。
ピンクのひらひら派手派手衣装に可愛いステッキ。
両手をクロスさせ杖を持つ手は小指を立て、もう片方は顔に向けてピースサイン。顔にはかわいいウインク付き。
「今じゃ!」
「おう」
「はい」
扉を開けて茜が飛び込む!!
「ラブストーム、極み♡、えーーーい♡」
茜を中心に七色の閃光が広間を駆け抜ける。
おびただしい数のスライムが蒸発するように浄化されていく。
「ぐうああああああああああーーーーーー」
中央から絶叫が聞こえた。
「神器開放!!」
「はああああああああああああああ!!!!!!」
神器を装填しながら茜は気合を入れる。
皆の想いを胸に秘め、聖剣はほとばしる緑を纏い、音を立てながら琥珀が吹き上がる。
刃は5mを超えた。
「いっけーーーーーーーーーー!!!!!!」
真直ぐに振り下ろされた聖剣は、ノアーナそっくりのスライムを切り裂き、一瞬で蒸発させた。
部屋の中の不浄な気配が一掃されるっ!!
「おおお、可憐でさらに美しい!!」
見蕩れるギルアデス。
「くくくっ。これはかなわぬわ。我も修行じゃな」
微笑むセリレ。
「魔王様の周りは化け物ぞろいだな……可愛いけど」
うっかり本音が出るラスタルム。
こうして脅威の浄化は完了したのだった。
その後4人は念のためギルアデスの魔眼を使い、隅々まで調査を行い、今回の事件は終結を見た。
※※※※※
「ぐああああああああああああああああ」
「いてええええ、いてえええええええええええええあああああ」
どこだかわからない広い場所で、消される瞬間に転移したスライムの欠片が絶叫していた。
存在をほとんどなくしながら………
そして……………
それはスライムの因子を含んだ、ただの黒い小さな鉱石に身を落とし、永遠の眠りについた。
もう、活動することはないだろう。
※※※※※
「ねえ最近嫌なことが多いよねえ、皇后さまのお部屋係のハルイナ、盗賊に襲われたらしいわよ」
「えっ?それって大丈夫なの?」
「身ぐるみはがされて、襲われそうになった時に、なんか旅の人に助けられたみたいだけど?どうなんだろ?」
「今はどうしているの?」
「お城の救護団で手当てしてるって」
「ふーん。じゃあよかったじゃん」
「まあねえーでもいい気味」
「ひっどー」
「だってあの子、ダリルに色目使うのよ?私が付き合っているの知ってるくせにさ」
「何言ってんのよ?ダリル殿下でしょ?あんた不敬罪で捕まるよ。大体そんなわけないでしょ?婚約者いらっしゃるじゃない」
「関係ないわ。私たち本気なの」
「?どうしたの?あんたおかしいよ?」
「いいの!愛し合う運命なのよ私たち。ええ運命なの。彼は私を見るとはにかむのよ?」
「……………」
「もー本当なんだからね」
「わかったわかった。ああ、もうこんな時間だ。交代するね。あんたは遅番か」
「もう。うん、お疲れ様」
「お疲れ様、じゃあね!」
…………………
今話したの誰だっけ?
まあいいや面倒くさい。
私にはこの宝石があるんだから。
彼女はそっと、さっき拾った黒い宝石を見つめた。
石を見ていると、ダリルへの想いがどんどん湧き出してくる。
この石は私に勇気をくれる石だ。
大切にしよう。
私の宝物だ。
奪われないように、封印できる箱にしまっておこう。
これで誰にも見つからない。
ああ、ダリル……
あああ、あの女!犯されて死ねばいいのに!!!
この世界は私とダリルのものなのに…………
全部死ねばいいのに………
私たちだけの世界に雑音はいらない………