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第175話 育つ恋心2

(新星歴4819年1月10日)


新年の大騒ぎも一段落し、通常運転に入ったグースワース。

外は大雪で、今日は珍しく皆が拠点の中で過ごしていた。


俺はいつもの7人の部屋で寛ろぐつもりで転移していくと、俺を見つけたルイーナが俺に駆け寄り話しかけてきた。


「ノアーナ様、わたしもココア飲みたいです。それから……ハグも♡」


顔を赤く染め上目遣いで可愛らしくおねだりする。

やべえ、メチャクチャ可愛い。


ルイーナは天使族と魔族のハーフの17歳の女の子だ。

柔らかそうな背中まで伸びる茶色の髪をハーフアップにし、小さな角が見え隠れしていて可愛い。


やや吊り上がり気味な大きな目には、エメラルドグリーンの瞳が色気を纏い瞬いている。

スっと通った小さくも形良い鼻と、笑うような形の艶やかなピンクの唇がルイーナの可愛らしさを引き立てる。


身長は160cmに少し届かないくらいで、華奢だが凹凸の目立つ姿が美しい。

今日はオフらしく、可愛らしいデザインのクリーム色のブラウスとキュロットタイプの茶色のパンツスタイルだ。

キュロットから覗くタイツに包まれた長い足が魅力を放つ。


俺は思わずつばを飲み込んだ。


「あ、ああ、そうだな。お前はこの前いなかったからな。じゃあついでにノニイとエルマにもご馳走しようか。すまんな、確かに飲んでみたいよな」


俺の声が聞こえたようで、ノニイとエルマも近くに寄ってきた。

エルマは最近女性寄りの衣服を着用していることが多い。


皆女性だからな。

カンジーロウは今では殆どここでは寝ていない。


何故かルイーナがジト目をするが……まあ、な。


俺は三人が座ったのを確認し、手を数度振る。

三人の前に湯気を立て、甘い匂いのココアが出現した。


何故かこの前飲んでいる三人からの視線が凄いことになっているが。


「ああ、お前らもどうだ?良かったらご馳走するが」

「「「はい。欲しいです♡」」」


息ぴったりな三人。

その様子に思わず笑みがこぼれた。


「ついでにサービスだ。さあ、召し上がれ」


俺はさらに甘さ控えめなバスクチーズケーキを出してやった。

六人の瞳がキラキラ輝く。


「ココアがとても甘いからな。ケーキは少しほろ苦い。あとでおやつは加減しろよ?」


美味しそうに六人がケーキを食べココアを飲み、幸せそうに表情を緩める。

俺は思わず本音を零してしまう。


「はあ、美少女たちが美味しそうに食べたり飲んだりする姿は、まさに天国だな。ああ、お前らは本当に可愛い」


皆の顔が真っ赤に染まる。


「もう、ノアーナ様。……勘違いしちゃいそう」


カリンがうるんだ瞳で俺を見つめる。

流石に配慮が足りなかったようだ。

俺は慌てて言葉を重ねた。


「ああ、すまん。そういう意味ではないんだ。ただな、お前らには幸せになってもらいたい。だから可愛いお前たちの素直な表情が見ることができて本当に嬉しかったんだよ」


そして優しい瞳でカリンを見つめなおした。


「っ!?……もう……知らないんだから」


照れながらもそっぽを向くカリン。

俺はほっと溜息をつく。


「あー!!ずるいの!!なんかおいしいもの食べてるの!!」

「コクコク!!」


そこにドラゴンの双子の美姫が乱入してきた。

七人の視線がロロンとコロンに突き刺さる。


「「ぴっ!!」」


ビクッと体を震わせ立ち止まるロロンとコロン。

薄っすらと目に涙が浮かんできた。

俺はともかく他の女性たちの視線が……


「ああ、驚かせたな、すまない。ふう、しょうがないな。二人もおいで。ご馳走しよう」


いそいそとテーブルに座るロロンとコロン。

気が付けば8人にもなっていて、テーブルいっぱいになってしまった。


この流れはやばいかもしれん。

俺は何となくそう思い皆に告げる。


「じゃあ俺はちょっと用事があるから……」


ルイーナが慌てて俺の横に来て服の裾をつかみ、怒ったような表情で俺を見つめた。


「ああ、あはは、うん。分かっているよ……おいで」


俺はあきらめて手を広げる。


ルイーナが俺に抱き着いてくる。

最近の彼女たちは情熱的で積極的だ。

俺は彼女の感触に思わず顔が赤くなってしまった。

甘い良い香りが、鼓動を早める。


「お、おい、恐くないのか?…お前たちは……」


体が小刻みに震えていた。

俺はため息をついて優しくハグをした。


「ルイーナ、良いんだよ………慌てないでくれ。勇気を出してくれてうれしい」

「………うん。……ありがと。ノアーナ様」


顔を真っ赤にして俺から離れるルイーナは、所在なさげにしていたが、やっぱり走ってベッドにもぐりこんだ。


それを見たノニイとロロンとコロンが、やはり俺の前に並んでいた。

エルマは顔を赤くしながらもテーブルに座ったままだ。

まあ、彼女は両性だしな。


「えっと、ノニイもか?」


真っ赤な顔で恥ずかしそうにこくりと頷く。

そして目を潤ませ俺を見上げた。


うわあ、めっちゃ可愛いのだが……


俺はノニイに近づいて優しく彼女にハグをする。

彼女のぬくもりと優しい匂いに俺は包まれた。


「あう♡……あ…んん…好き♡」


ノニイは顔を蕩けさせ俺を上目遣いで見つめてくる。

凄い破壊力だ。

ああ、まずいな……


俺は何とか彼女の肩に手を置き少し距離をとった。

名残惜しそうに俺を見つめ続けるノニイ。


「勘弁してくれ。お前たちはとても可愛いんだよ。……我慢できなくなってしまう」

「っ!?」


俺は少し大げさに瞳に欲情の想いを乗せる。


「……俺だって男だぞ?……雑に扱いたくない」


顔を真っ赤にさせてベッドへ走るノニイ。

思わずため息がでてしまう。

慌てないでほしいと本当に思う。


その様子を見たロロンとコロンは、足が震えていた。

俺は二人の頭を撫でてやる。


「ロロン、コロン。お前たちはここまでだ。いい子だな」


少し残念そうな、恐い様な複雑な顔をしたが、二人は目を細め気持ちよさそうな顔をする。

ああ、可愛いな。


……俺にはこのくらいの距離感が心地いい。

これ以上は……俺の感情がやばい。


「よし、今日はここまでだな。俺は執務室へ行くぞ。せっかくのオフだろ?ゆっくりするといい」


俺は逃げるように転移していった。

早くネルを抱きしめたい。

そう思いながら。


もう我慢の限界だった。


※※※※※


ノアーナが転移し、ロロンとコロンが退室したのち。

部屋では女性たちが感想を言い合っていた。


ルイーナが顔を蕩けさせながら枕を抱きしめ最初に声を上げた。


「あー、もう、なに?ノアーナ様♡……カッコよすぎ♡もう、好き♡」


うんうんとミュールスも頷く。

なぜかドヤ顔だ。


「やばいよねホント。すごい甘い事平気で言うし……最後の顔、はあはあ、もう可愛い♡


我慢しながら欲情を浮かべたノアーナの顔を思い出し悶絶し、ベッドへ倒れ込む。

最後にハグされたノニイは真っ赤な顔だ。


「……今すぐ抱かれたい♡……赤ちゃん欲しい♡…はあああああ♡」


そして自分を抱きしめベッドに倒れ込む。

もぞもぞと体をまさぐり悶えまくる。


そんな様子を見ていたカリンが、決意を込めた目で口を開いた。


「私決めた」

「ノアーナ様と結婚したい。二番目でもいい。ううん、何番でもいい。ネル様の次でもいいから、誰かの次でもなんでもいい。……愛されたい、好きだって言って欲しい」


そして目からは大粒の涙が零れ落ちた。

飛び出す爆弾発言に、エルマが待ったをかけるようにカリンの肩に手を置いた。


「ねえ、皆ちょっと落ち着こう?…ノアーナ様も言ってたでしょ。慌てないでって」


皆を見回す。


「ごめんね。私はほら半分だからさ。ちょっと冷静っていうか、その…」


言いながら顔を赤く染める。

サラナがエルマに問いかけるように話しかけた。


「…エルマはどうなの。…その、ノアーナ様の事……嫌いじゃないよね?」

「う、うん。……正直良く判らないけど……たぶん……好き」


目が泳ぐ。

耳まで赤くなってしまう。


確かに中性的ではあるがエルマの顔は非常に整っている。

思わずサラナは熱いため息を吐いてしまう。


「なによ、もう、エルマもめっちゃ可愛いんだけど」


溜まらず抱き着くサラナ。

彼女は百合だ。

でも違う。

友情のハグだった。


ノニイが起き上がり大きくため息をついた。


「はああ、結局皆ノアーナ様の事好きってことだよね。もう、みんな可愛すぎか!」

「「「「「お前もな!!」」」」」


皆が顔を見合わせ笑いだす。


ああ、やっとここまでこれた。

そう思った。


でも、確かに浮かれすぎていると思う。

…まだ夢を見る。


あの恐ろしい場所でのことを……

私たちは忘れていないんだ。


ミュールスが立ち上がり皆を見回した。


「ねえ、なんかさ。私たち、つながってない?意識というか、その…前はさ、辛い事何となく共有したよね」


皆がこくりと頷く。


「最近さ……嬉しい事も…なんとなくわかる気がするの」


静寂が訪れる。

自分のベッドに腰を下ろしミュールスは言葉をつづけた。


「それから……無理していることも……カリン」


カリンの肩がビクッと跳ねた。


「エルマの言う通りだよ。きっとノアーナ様は全員受け入れてくれる。だから……もうちょっとゆっくりでさ、わたしたちの可愛いところ、見てもらおう?……ノアーナ様から『抱きたい』って……言ってもらおうよ…ぐすっ」


「あれ、なんでだろ。グスッ、悲しく‥ヒック、ないのに…うああ…ああああ」


止まらない涙。

皆の温かい心を全員が共有していた。


「そうか……嬉しくても……こんなに……泣けるようになったんだね…私たち」


六人は。


心が癒され始めたことを。

初めて認識したのだった。


心の底から。


そしてノアーナに対する恋慕の情は。

ますます大きく育っていく。


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