(新星歴4820年1月29日)
あのあと俺はグースワースでそれはもうネルに甘えつくした。
とても愛おしいネルはやはり俺にとっての女神だ。
今の俺は18股のドクズ男だが、やはり彼女のぬくもりを俺は一番に求めてしまう。
「ノアーナ様……寂しかったです」
目を潤ませ見つめられ、思い知らされたものだ。
俺のネルはやっぱり最高に可愛くて、俺は沈んでいた気持ちが上向いていくことに感謝したのだった。
まあその後は他の愛する者たちとじっくり心を通い合わせた。
いわゆる『クズの所業』を約20日間にわたり愛欲の日々におぼれていた。
もちろん背景はある。
怪しい人族の対応にめどが立ったことが俺の背中を押してくれた。
つまり信仰に信仰をぶつけ、抑制がうまくいったからだ。
元々信者の多い光神教を中心に、火神教・水神教・闇神教・風神教での巡礼をはじめ、布教活動を強化したことで多くの揺らいでいるエルフ族を取り込む事が出来ていた。
特に今までロクに布教活動をしてこなかったアースノートの布教活動が強烈なのだが……
きっとレイスは焦っていたのだろう。
『降魔教団』の教義があまりにもピーキーすぎる。
いくら不安を抱えているとしても、あまりにえげつなさ過ぎた。
結果として『降魔教団』は信者を増やす事が出来なくなり……
そして遂に、彼らの活動は最近目立つことが無くなっていた。
※※※※※
「ふふっ、最高ですわ♡レンレンちゃん。次はこの音波を使用してみてくださる?」
アースノートの研究所では、土神教の御神体である身代わり愛ドール4号のレンレンちゃんに、新たな教義、もとい音波兵器の実装を行っていた。
「……ねえアース様。私恥ずかしくて嫌なんだけど?」
レンレンちゃんはアースノートの凄まじい科学力と、ノアーナが子供の頃見た漫画のネタをもとに作り上げられたアンドロイドだ。
身長は158cm。
体重46㎏。
無駄に重力コントロールを施してある。
表面こそ人肌を再現してあるが、中身は重金属の究極破壊兵器だ。
実際はこの姿なのに200㎏以上の重量を持っていた。
輝く黄色の、足まで届きそうな髪の毛をアメンシトリーに整え、いくつにも編み込み、芸術品の様な髪型だ。
さらにゴテゴテしい装飾品をこれでもかと全身に装着させている。
まるでアニメのキャラのような派手さだ。
おまけに右眼しか見えないように工夫されていた。
当然のように左目にはありえないような乙女の最終兵器、ウインクで半径50メートル吹き飛ばす仕掛けを施してある為だ。
アースノート曰く「魔眼の代わり」らしいが……
超絶美少女で、非現実的な顔立ちと、究極に考えられたその肢体は、一目で心を奪われるほど魅惑的だ。
そしてなぜかへそ出しなのに光輝くローブを纏い、一応神らしく偽装は施してあるが……
うん。
まあエロい。
「ねえアース様?なんで『おたくそんぐ』を私が歌わないといけないの?なんか変な人ばっかり来るんですけど」
ここ最近、他の神々に負けじと、アースノートも信者集めに邁進していた。
……信者違いのような気もするが!?
「あら、何を言うのかしらこのロボットは。はあ。……オタクは星を救うらしいのですわ。昔ノアーナ様がそうおっしゃっていましたもの」
「ロボットじゃない!アンドロイドっ!!……もう、いつも頑張っているのに……」
いじけるレンレンちゃん。
無駄に高性能な彼女は殆ど人と変わらない感情を獲得している。
涙を流し座り込む。
こうなると面倒くさいのをアースノートは良く知っている。
「そうね。……じゃあご褒美上げるわ♡」
ぐるぐる眼鏡をはずし、おもむろにレンレンちゃんの顎をくいっと上げ、可愛らしい唇に自分の唇を押し当てる。
「ん♡……んあ♡…んん♡……ああ、美味しい♡」
目をトロンとさせ、アースノートにしがみつくレンレンちゃん。
やたらと色っぽい吐息を吐く。
どういう設定なのか分からないが、神であるアースノートのキスによるチャージが最高のエネルギーになっていた。
ただ……
超絶美少女同士の絡み合いながらキスする様は、とても人さまに見せられないくらいエロイのだが…まあ誰も見ていないのでいいのだろう。
そして始まる快進撃!
※※※※※
「みんな―♡今日も盛り上がっちゃうよー♡せーのっ、れっつごー!!」
「うわあああああああああああああああ」
「可愛いいいいいい!!!!!」
「好きいいいいいいいいいいい!!!!!!」
「はあはああはあはあはあはっはああははあああ♡」
レイノート大陸の東に位置する小島では、今日も布教活動という名のコンサートが開催されていた。
今ここに来ることのできる『入信申込書』はプラチナチケットとなっていた。
高額なお布施まで必要だというのに、すでに6か月待ちらしい。
「ふふふ、うまくいきましたわね。これでもうボッチ神とは言わせませんわよ♡」
何気に以前眷属の確認の時のことを根に持っていた彼女はほくそ笑む。
すでに信者という名の、レンレンちゃんを信望する者は2万人を超えていた。
「……アート、コイツら集めでどうする気だ?まあ、抑制にはなるのだろうが……」
久しぶりにグースワースでだらけていた俺はアースノートに呼ばれ今コンサート、もとい布教活動を見学しているのだが……
「ええ、取り敢えず信者を獲得して、そののちこの星に有意義になるであろう教義を刷り込みますの。ああ♡信じ込んでいる『心の清らか』なかわいいこの男たち、きっといい団体になりますわ♡」
ううむ。
まあ天才のやることだ。
きっとうまくいくのだろうが……
正直不安しかないのだが!?
そもそもコイツ、国すら持っていない。
確認しなかった俺もいけないが神々の住むレイノート大陸に国が5個しかなく、神を奉っている国が4つしかない時点で気付くべきだったな。
ちなみにレイノート大陸にある5つの国家と治めている神々だが、モンテリオン王国はアルテミリス。
ナグラシア王国はアグアニード。
ルイースフット王国はエリスラーナ。
エリシアナ評議国はモンスレアナがそれぞれ奉られ、基本その国の方針にかかわっている。
で、もう一つの国、自由都市国家ラムダルのみ、特に神を奉ることなくいつの間にか人々により運営がなされていた。
もちろん現在の首長とのつながりはあるが。
ダラスリニアはアルカーハイン大陸の魔国が本拠地だ。
「なあアート、拠点はどうするつもりだ?この小さな島というわけにもいくまい?まだ自由都市国家ラムダルが残っているが、そこにするつもりか?」
「いいえ、ノッド大陸にしようと考えております。どうもキャルルートルン近辺で怪しい動きがありますもの。徹底的に調査いたしますわ」
確かに厳しい環境の中、ひっそりと自主的に土神教のような物が信仰されてはいたが。
土着の民にとって台地は生きていくための重要なファクターだ。
それを信仰するのも頷ける。
「分かった。……すまないな。俺はお前ほど賢くないからな。いまいちお前の考えが理解できていなかった。これからも頼む」
隣で興奮しているアースノートをそっと抱き寄せる。
ああ、コイツ、本当に魅力的で可愛い。
「んあ♡もう、ノアーナ様……疼いちゃいますわ♡」
そして抱き着きてくるアースノート。
彼女の感触とうっとりするようなにおいに包まれる。
欲望が沸き上がってくる。
「なあ、その……二人きりになれないか?」
「っ!?……うれしい♡」
やたら盛り上がっているコンサート会場を二人で後にし、俺たちは隠れ家でお互いをたしかめあった。
ああ、俺は本当に恵まれている。
決して一人じゃない。
いやマジでアースノート、凄く可愛い。
ああ、やばいな。