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第206話 グースワースの奮闘と開く地獄

世界大戦がはじまり、ノアーナが不在がちになっていたグースワースだが、ネルを中心にその力をアナデゴーラ大陸を守るため振るっていた。


「ネル、俺たちのグースワースを守ってほしい」


願われたネルに迷いはなかった。


「ムク、ナハムザート、カナリア、カンジーロウ、ミュールス。あなたたちを各リーダーとします。総括はわたくしが。ノアーナ様の願いです。絶対に死ぬことは許しません。この大陸を守ります」


「「「「「はっ」」」」」


「レーランさん。わたくしたちを助けてはいただけませんか」

「ネル……当たり前ですわ。ロロンとコロンも最善を尽くさせます」

「ありがとうございます。……リア」

「う、うん」

「ルミナラス様を呼んでくれる?」

「えっ、ルミねえ?」

「ええ、あの方の古代魔法が必要になるでしょう?私も習得します」


ネルの真剣なまなざしに武者震いをするリナーリア。

もうふざける段階ではないことを彼女も理解していた。


「分かった。呼んでくるね」

「お願いね」


これで準備は整った。

絶対にこの大陸を守る。


「ナハムザート。荒野までの安全確保とクリートホープを警戒」

「はっ」

「ムク、あなたは内部からミユルとガイワットを。ミュールスも同行してください」

「はっ」

「分かりました」


ネルはため息をつく。

そして再度目に力を宿した。


「カナリア、メイド部隊と連携し、回復特化へと移行してください。在庫など関係なく全部使うつもりで使用を許可します。救える命は必ず救ってください」

「分かったわ」


「カンジーロウ、レーランさん」

「はっ」

「ええ」


「拠点であるグースワースを守ってください。わたくしも同行します」


こうしてグースワースの奮闘が始まった。

結果的にここが希望になった。


アナデゴーラ大陸の被害はほとんど出すことなく、大戦は収束に向かったのであった。

もちろんグースワースに被害はない。


ネルはやり遂げた。

はずだった。


※※※※※


(新星歴4821年11月12日)


ノアーナが神たちの力を集結しラーナルナに挑むその日。

悪夢がガイワットを襲う。


目覚めた悪意の塊、もう一人のノアーナが降り立ってしまった。

地獄がその蓋を開ける。


※※※※※


「なあ、ナハムザートさん、嫌な予感しませんか?くうっ、うろこがピリピリする」

「ああ、まずいな。こんな感じ初めてだ。くそっ、嫌な予感しかしねえ」


ナハムザートとイペリアルはガイワット港の近くを巡回していた。


どんよりとした雲が嫌な予感に拍車をかける。

その時遠くの方からざわめきが起こった。

同時にとんでもない魔力が吹き上がる。


良く知っている。

間違えるわけはない。

だが……


それは悪意に包まれていた。


「う、うあ……だ、ダメだ……こいつは……」


力を増した故にナハムザートは正確にその力を捉えてしまっていた。

存在値の底が見えない。

最低でも500000。


この世界で敵うものが居ない力だ。

そして始まる爆発的悪意の奔流。

刹那音が消え黒い閃光に世界が染まる………


「っ!?」


目の前で起きたことが理解できない。

にぎやかだった雑多な街並みが……

一面の荒野と化していた。


全力で魔力を放出し防御に徹したはずだった。

しかし……


立っているのは全身ズタボロにされたナハムザートだけだった。


「魔王に近しもの」


その称号に守られていた。


しかし隣にいたはずのイペリアルも……


そして町の人たちも……


一瞬でそのすべてを奪われていた。


「はははっ、はーはっはっははははは、あああ、もろいな、これじゃ詰まらねえ……ああん?なんだよ、あっちが当たりか。ハハッ、どーれ、行ってみるか」


そしてそれを為したであろう者は何かをつぶやき転移していった。

ナハムザートの心が音を立てて崩れ落ちた。


※※※※※


「っ!?」


愛おしいノアーナの魔力に似たナニカが降り立った瞬間、ネルの心に絶望が舞い降りていた。


「う…うあ……無理……あああ……」


「っ!?そ、そんな……」


レーランも、

ロロンも、

コロンも、

ミュールスも、

カンジーロウも、

ムクも。


存在値1000を超えた者だけが感知してしまった。

希望を持つ心をへし折られた瞬間だった。


そして世界では、体が徐々に鉱石化し、やがて死に至り、漆黒の鉱石になる謎の病気が蔓延し始めていた。

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