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第207話 ラーナルナの悲劇

(新星歴4821年11月12日)


「よしみんな、決戦だ。ついに追い詰めたぞ。ラーナルナの迷宮に奴が残した最後の欠片がある。ネオの情報によるとおそらく存在値は400000程度だ。茜だけでも勝てそうだが油断しない方が良いだろう。俺と茜、それからエリス、すまないがミューズ協力してほしい」


「分かった。絶対倒す。あいつらは不敬」

「うん。任せてノアーナ」

「光喜さん、絶対に勝とうね」


「ああ、絶対に勝つさ。ダニー、闇精霊で囲ってくれ。レアナは周辺の警戒、アグはバックアップ。アルテは聖域へチャージを優先。アートは解析を頼む」


「「「「はい」」」」


「良し、片をつけよう。茜、頼らせてくれ」

「もちろんだよ。行こう光喜さん」


まだ本番があるんだ。

こんな所で躓くわけにはいかない。


力を持つ本体は、まだ目覚めてすらいないのだから。


※※※※※


レイノート大陸中央に広がる禁忌地……

その真中にあるギルガンギルの塔のまさに膝元に超古代迷宮ラーナルナはその入り口を開いていた。


かつてノアーナが戯れで実装した難易度のおかしい迷宮だ。


基本誰も踏破できないように凶悪なギミックと異常な存在値を持つ伝説級の魔物と魔法をすべて弾く古代の科学力を応用した破壊兵器の闊歩する魔境。


そこに今この星の最大戦力である勇者茜と最強の大精霊ミューズスフィア、極帝の魔王であるノアーナ、神最強のエリスラーナの4名が最後の決戦の為降り立った。


「良し。最初に管理部屋へ行こう。あそこで迷宮を解除しなければそもそも中で自由に動く事が出来ない。……空気すらない場所があるからな」


「ねえ光喜さん。この迷宮ってクリアした人いるの?」

「ん?いないはずだけどな。俺が大昔遊びで入った時には半分くらいまで進んで諦めたからな。そもそも難易度がアホすぎる。……自分で創造しておいてなんだが異常すぎる」


うっ、何故か3人がジト目で俺を見てくるのだが……


「ふう、昔のノアーナバカ」

「ん。ちょっと…いや、かなりおかしかった。不敬」


「あー、なんだ……まあいいじゃないか。昔のことだ」


なんか自分の昔のやらかしたものを皆で確認するようで……居た堪れないな。

俺たちは取り敢えず迷宮入り口の横にある隠し扉を開き、ギミックと条件を改変できる管理部屋へと進んでいった。


部屋の中は不思議な鉱石で包まれ薄っすらと発光している。


何もない部屋だがあるキーワードでコンソールが出現する仕掛けだ。


「解除コード0128-大いなる災い・ここにその英知を持って我求めるものなり・アンロック・顕現せよ・大いなる祝福をもって・オールクリア!!」


部屋全体が黄金に輝きだす。

中央から50センチ四方の柱がせせりだしてきた。


「よし。ここはいじられていないようだ。えーっと……」


俺がいくつか操作すると遠くで何かが動く気配が伝わってきた。

ギミックの項目の赤い表示が全てグリーンに変わる。


「いいぞ。OKだ。……!?居た。……皆準備は良いな。飛ぶぞ!」

「「「うん」」」


俺たち4人は奴の残した最後の欠片の待つ廃品回収部屋へと転移していった。


※※※※※


俺たち4人の前にいたその欠片。

ただ強かった。


純粋な力を蓄えていた奴は、初めに俺を吸収しようとした。

しかし同化することでそれを防いでいるうちに、ミューズスフィアの拘束特化ブレスで拘束、漆黒を纏うエリスラーナのすべてを滅ぼす極悪なブレスで存在値を削った。


とどめが最強勇者の聖剣による浄化と同時に繰り出される剣戟によりぎりぎりで倒す事が出来たのだ。


「ふうっ……強かったね……危なかった」


剣を納め茜がつぶやく。


「ああ、誰か一人いなかったらおそらく負けていたな」


アイツの狙いが最初俺に限定していたおかげで問題なく行動が出来ていたからだ。

もし個別に襲われていたら……


負けていたかもしれない。


「皆、お疲れ様だ。これでしばらく時間が稼げるだろう。それじゃ……!?」


突然全身を引き裂くような魔力が溢れた。

ミューズスフィアの胸から手が生えている。


「うあっ…」


血を吐き倒れ伏す。


「「「!?」」」


「封印解除!!はあああああああああ!!!!!」


茜がそれに飛び掛かり、聖剣で攻撃を加えた!!


ズシャアアアアーーーーー


「ぐうっ!?……やるじゃねえか、お返しだ」


左腕を切り飛ばされた俺とそっくりなそいつは、右腕を茜に振り下ろす。

空間が悲鳴を上げる。


「きゃああああああああああーーーーーーー」


ズドン!!


茜の左腕が宙に舞う。

俺はブチギレた。


「ガアアアアアアアアアアアアアアーーーーー!!!!!!」


渾身の力をそいつに向ける。

だが……

その力は放出した分と俺の中の力をごっそりと奴に吸収されてしまう。

茜の左腕とともに。


「なんだよ?お前弱すぎ。……くそっ、痛てえな……帰るか」


そして奴は消えた。


「茜!!しっかりして、茜!!ノアーナ様、早く、茜がっ!!」

「っ!?茜、まずい、くそっ、グースワースへ飛ぶぞ。くっ、ミューズを抱えてくれエリス」

「うん」


※※※※※


俺たちは敗れた。

そして分かってしまった。


俺は今悪意と同化できるようになっていたはずだ。

でも奴は。


それすらも含む俺のすべてを吸収してしまう。


勝てない。

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