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第212話 私の彼は夫の後輩で娘のカレシ

聖域ではアルテミリスが今まで見たことのない様な表情豊かな顔をして俺たちを待っていた。


「ただいまアルテ。ありがとう。苦労をかけた」


アルテミリスはにっこり微笑んで俺を見つめる。


「おかえりなさい。良いお顔をされていますね。あなた様のおかげで私もたくさんのものを取り戻しました。光喜様、いえ佐山君。ありがとう。茜を助けてくれてありがとう。そして栄人さんを助けてくれてありがとう」


思わず俺は固まった。

何となくそうじゃないかとは思っていたが、やっぱりそうだったんだ。

光に包まれたとき姉ちゃんが「びっくりするよん」とか言っていたのはこれか。


「…さ、沙紀さん?…ですか?」


「…アルテミリスの方が殆どだけどね。きっと私はごく少ししかこの世界には来られなかったみたい。あなたに創造される前、わたしが生まれた時に混ざっていたのね」


…いや、俺の気持ちもやることも全く変わらないんだ。

変な気遣いは彼女に失礼だ。


「俺は力を取り戻すために、あなたと儀式を行うために来ました。正直戸惑いはあります。西園寺先輩の奥さんを抱くわけですから。しかも茜の母親だ」


「でも俺は、あなたを含んだアルテのすべてを愛している」

「恨むなら恨んでください。その恨みもすべて俺が受け止めます」


アルテミリスはとてもいい笑顔で俺に告げた。


「地球ではもうとっくに死んでいるのです。5000年以上あなたに恋慕の情を抱いているのですよ?ネルさんに会ったばかりの悩んでいたあなたがとても可愛く見えるほど成長されたのですね」


そういって煌めく金色の瞳で見つめてきた。


「さすがはドMさんです。問題ありません。今私の精神の方が強いのは、運命の女神であるナツキ様の恩恵がまだ残っているからです。すぐに消えます」


「まあ、茜への愛は上限突破しちゃいそうですけどね」


ドM?……はあ…

運命の女神ナツキ?

……何やってんの?姉ちゃん。


アルテミリスは固まっている俺の後ろにいるネルに声をかけた。


「ネルさん。お互い大変な人を愛してしまいましたね。でも再転生してまで暗い感情を受け続けた佐山君はもう間違えることはないでしょう。あなたが一番わかっているのでしょう?今度こそみんなで、すべてに決着をつけましょう」


「はい。アルテミリス様……負けません。一番はわたくしです。毎日嫉妬に狂いそうですがそれ以上に愛していただきます。光喜様は以前よりずっと強くなられました」


ネルもにっこり笑う。

俺も笑うしかない。


「そして真実を知った今、時間がないのも承知しています。私が見ている前で儀式を行ってください。場合によっては私も混ざります。負けません」


「ふふっ、ええ……佐山君はドクズですね。ふふふっ」

「ええ、酷いお人です。大勢に手を出しておきながら、全力で愛するのですから」

「「ふふふふっ」」


えっと……まあ…事実だし……うん。


「ふふっ、わたしの彼は夫の後輩で娘のカレシとか、ありえませんね」

「……俺は酷い男だな!!」


※※※※※


こうして俺は200年前にアルテミリスに預けておいた俺の力を取り戻すことができた。


まあ儀式の間ネルにガチで見学されなんか変な気分になってしまったり、我慢できなくなったネルまで同時に儀式に参加するなどのトラブルはあったが……


いつもより興奮し、今まで無い様な最高の儀式となった。


俺はやっぱりクズだった。


その後色々あったものの、神々との儀式は滞りなく終わり、俺は殆どの力を取り戻した。

そして存在値を落とす前の力を取り戻す準備を始めるのだった。


※※※※※


「アルテ、ルーミーとシルビーは今どういう状態なんだ?」


俺たちは会議室に移動し、光神ルースミールと第2席のシルビー・レアンについて情報を精査することにした。


俺がルーミーに会ったのはおそらく2回だけだ。

当然アルテミリスがうまくつないでくれたため、作戦はギリギリ及第点の結果となった。

しかし現状聞いている限りだと、虚実の影響があるとはいえ腑に落ちないことが多い。


「一度ルースミールは敵の手に落ちました。おそらく今も精神支配下にあるでしょう」

「そうか、やはりな。儀式のときに呪詛をかけられた。ネルに解除してもらったが」

「心配は無用ですよ。茜、いえシルビーが目を光らせております」


「俺もその辺は詳しくないんだ。アルテ頼む。分かるようにお願いしたい」

「ええ。茜は今、聖域の最奥で凍結しています。濃い貴方様の力を引き継いでいますからね。それにちょうど17年間、茜が地球で生まれた時に、真核が引っ張られました。あなた様が欠片を持っていったおかげで防ぐ事が出来ましたが、危なかったのです」


俺は再転生の際、彼女に真核の一部を持って行っていた。

良かった。

無駄ではなかったんだ。


「あなた様が居なくなってから、漆黒や悪意はその活動をほぼ止めました。しかし種は各地にあったために、私たちやグースワースの皆と協力し対処していたのです」


「ルースミールに渡さないために」

「っ!?どういう……」

「彼女は心の奥に、悪意ではない闇を抱えていました。それを増幅させていたのが欠片であり悪意でした」


アルテミリスの目に自信の光がともる。


「ですがそれももうここまでです。明日対決するのですよね」

「ああ、ルミナにお願いしてある」

「今のあなた様ならすべて覆すでしょう。何も心配はありません」


ああ、そうだな。

今の俺ならもう悪意は怖くない。


「茜を復活させましょうか。あの子、喜びますわ」

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