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第211話 200年ぶりの神々たち

(新星歴5023年4月30日)


「同時転移を申請……許可………よし皆飛ぶぞ」


俺はネル、ムク、コロン、ロロンを伴ってギルガンギルの塔の会議室へと飛んだ。


そこにはあの時と変わらない、5柱が目に涙を浮かべて待ち構えていた。


俺は急速にかつての自分を取り戻していった。

俺の中のノイズが驚くほどの速さで消えていく。


「みんな久しぶりだ。……ありがとう、俺は戻ってこられた。皆のおかげだ」


皆に会ったことで、それだけで俺は存在値が上がることを自覚した。


「ノアーナ様、おかえり、抱っこ♡」


エリスラーナが飛びついてきた。

俺は優しくエリスラーナを抱き上げ、頭をなでてやる。


「ただいまエリス。ははっ、相変わらず軽いな?ちゃんと食べてるか?」

「ん、問題ない」


俺の裾を『クマのよう』なヌイグルミを抱えたダラスリニアが目に涙を浮かべ引っ張る。


「……ノアーナ様……………おかえり」


エリスを下ろし、優しく抱きしめ、キスをした。


「ダニーただいま………ありがとう。お前のおかげだ……愛してる」

「……うん………役に立てた」


怪しいオーラを全開にして緑の謎物体がハアハアしながら近づいて来た。

飛びついてくる前に、俺の方からいきなり抱きしめた。


「っ!??!?…あっ……」

「ただいまアート…可愛いお前の本心が聞きたい」

「…ノアーナ様…会いたかったの…ぐすっ、寂しかった…うああ……」


アースノートは俺の胸に顔を埋め泣きじゃくった。


「レアナ、こっちにおいで」


俺はアースノートとの抱擁を解いて、モンスレアナに向き合った。

アースノートは名残惜しそうにしていたが、おとなしく席に戻っていった。


「ついに成し遂げられたのですね。お疲れさまでした……おかえりなさいませ」


俺はモンスレアナを抱きしめる。


「ああ、お前のようないい女に負けたくないからな」

「ふふ、言うようになりましたわね。お慕いしております」


一通り抱擁を終え、俺はアグアニードに問いかけた。


「アグ…お前も力を増したな。さすがは俺の同士だ」

「っ!もー、なんか前よりー、もっと人たらしになってない?…おかえりーノアーナ様」


「そうか…アルテは聖域か?…皆知っていると思うが、ネルたちのおかげで俺は根源魔法にたどり着いた。そして因果が終息したんだ。茜を復活させる。そして表の事象を片付ける。力を貸してくれ」


神々が目を見張る。

茜の状況を俺が知っていることに驚いたようだ。

200年いなかった俺が、なぜ茜のことを…と。


「根源魔法は凄まじい力だ。俺はグースワースの皆と完全につながった。虚実にまみれていた情報でも俺にはわかる。それで把握した」


「アグ、もう一つ頼みたい。ムク、来てくれ…アグ、悪いがムクに『神滅の氣』を伝授してほしい。資格はある。頼む」


「っ!!!…死んじゃうよー…大丈夫―?!」


ムクがすっとアグアニードに礼をしながら口を開く。


「偉大なる火の神アグアニード様。お久しぶりにございます。かような機会、光喜様の口添えなくしては、わが矮小な身では永遠に頂くことはかなわないでしょう。この命、すでに光喜様に捧げております。どうぞご慈悲を頂戴したく存じます」


ムクの願いに、アグアニードが神聖な炎の衣を纏い再顕現した。


「…承知した。その方の覚悟、火の神である我が間違いなく受け取った。なれば時間が惜しい。我がテリトリーである紅蓮の洞穴へ共に行こう。厳しい修行だ。死ぬな」


「ありがたき幸せにございます。光喜様、行ってまいります」

「ああ、信じている。終わったらグースワースへ戻ってこい。会得すればその力、できないことの方が少なくなるだろう」


「光喜様の御心のままに」


ムクを連れだって、アグアニードは転移していった。


「エリス、お前にも頼みたい」

「ん、そのホワイトドラゴン。……!?……まさか?」

「ああ、おそらく彼女たちは……覚醒するはずだ」

「ん、わかった……追い込んでみる……おいで」


ロロンとコロンがおそるおそるこっちに近づいてくる。

エリスラーナが力を少しだけ開放する。

…3割程度か?


「「っ!!!!!」」


ロロンとコロンがヘナヘナと崩れ落ちた。


「甘えすぎ、不敬。鍛える」


エリスラーナが二人を伴い転移していった。


「ネル、一緒に来てくれ。聖域に行く」

「っ!?ノアーナ様?あそこは…決められたものしか…」


モンスレアナが慌てて俺を止める。


「大丈夫だ。ネル」


俺はネルと手をつなぐ。

お互いを想いやりながら。

二人の心が重なり、黄金に輝く暖かな光が二人を包む。


そして俺たちは聖域に転移した。

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