目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
封印祠クラッシャー☆霊野、因習村に立つ
封印祠クラッシャー☆霊野、因習村に立つ
マカロー
ホラー怪談
2025年05月19日
公開日
1.3万字
完結済
――やらかしました。 何を隠そう、封印されてたっぽい祠、倒壊しました。 言い訳させて? GPSが圏外で、電波の通じない山奥。 変な木彫りの像にぶつかって転び、寄りかかったら……ゴゴゴッ!って! バキィ!って! ――気づいたら、封印が解かれてました。 「ねえ霊野(れいの)さん、何か……空気変わってませんか?」 「たしかに。あと、あそこのカップ数、Eです。間違いない」 「そっちじゃねえよ!!」 村はすぐさまざわつき始めた。 「数百年封印していた祠が壊れた?」「なぜか生きた鶏が逆さに吊られてる!」「あと、夜な夜な“おっぱいはどこだぁ〜”って声が山に響くんだが?」 それ全部、霊野のせいでした。 「いや待ってくれ! 俺じゃない! 確かに“おっぱい霊”を降霊させたけど、彼は自立型霊だから勝手に動いてるだけで――」 「封印しろや」 「でも……彼の霊視能力、すごいんだよ? 半径50m以内なら確実に――」 「封印しろや」 さらに、村の住人が次々と“笑顔のまま石化”する現象が発生。 霊野がその霊に聞いたところ、こう言った。 「うん、あの祠の中にいたのは“笑顔を強制する神”だったんだよね。お通夜でも笑顔、火事でも笑顔。ずっとニコニコ。顔面神経、お疲れ様ってやつ」 最終的に、霊野は決意する。 「よし、俺がもう一度、封印する! ただし報酬は、村中のカップ数データで」 村長「持ってけドロボー!!」 封印はどうにか成功。 ただし、代償として霊野の顔はしばらく“作り笑い”のままだった。 「顔が、引きつる……」 「だが……それでも、おっぱいは裏切らない……!」 封印が終わったころ、山の中にふわりと現れた少女ツグミが言った。 「ねえ、霊野さん……次、壊すのは“地獄の門”にしよっか」 ――やめて。ホント、やめて。

第1話 「封印祠クラッシャー☆霊野、因習村に立つ」

都会では“イロモノ霊媒師”としてバズっていた霊野月陵れいの げつりょう

だが最近は動画の再生数も激減し、「そろそろ真面目に就職しろ」という祖母の霊の助言(※生前から鬼ババだった)により、霊野は田舎の「ヨモツ村」の心霊調査へと向かうことに。


山奥、圏外、民家の柱にお札、おやつは持ったか?


着いた先は、やたら笑顔がぎこちない村人たちが住む、どこか異様な空気の漂う因習村。


「“あの祠”にだけは、近づかないように……」

村長のその一言で、逆に火がつくのが霊野クオリティ。


霊センサーの代わりに、「カップ数探知(完全無駄能力)」をフル稼働させながら山道を進む霊野。


そして――


その祠は、壊れた。

というか、霊野が、壊した。


「ヤバいッ! 封印の札が! 封印の石が! 俺の信頼が!!」


村に広がる、異様な笑顔。

夜になると響く「ニコニコせぇや……」という謎の低音ボイス。

勝手に動き出す石像。

村の中で突然踊りだす老人会。

ポロリと出た「私たちは笑っていないといけないの……」という老婆のつぶやき。


すべての元凶は――封印祠の破壊。


霊野は悟る。


「これはホラーだ! しかも土着系! でも、ちょっとエロもある!!」


すべての始まりは、一つの祠を壊したことから――。


「あー、電波ねぇー。あ、でも女将さんのカップ数はCだ」


携帯を掲げる霊野月陵(れいの・げつりょう)が、どこからともなく聞こえる霊の声にドヤ顔を向けた。ちなみに、女将の霊ではない。近くを浮遊していた謎の浮遊霊が教えてくれたのだ。


「やっぱ俺の霊能力、ズレてんなぁ……。成仏目的が見えてこねぇ」


その能力――**「霊に質問できる(ただしほぼ胸のサイズにしか答えてくれない)」**という呪われたスキルを活かし、都会では動画配信をしていたが、最近は低評価と苦情が止まらない。

そこで祖母(故人)からの助言で訪れたのが、ヨモツ村。


「人が笑わない村なのよ……でも最近は、みんなずっと笑ってるのよ……ふふ……ふふふふ……」


出迎えた老婆の笑顔が、パッキパキに引きつっていた。目が笑っていない。歯が、妙に多い気がする。


「霊が…いるってことか。よっしゃ、イケる!」


だが霊野は楽観的だった。というかホラー耐性ゼロのくせに、霊能力だけはあるという困った体質である。




――祠、発見。


「これが……村の封印祠か……“近づくな”って言われると、近づきたくなるのが霊媒師(エンタメ系)ってもんだろ」


祠は、苔むした木造の小さな建物で、明らかに何かを封じている気配がある。貼られた札には、「笑え 笑え 笑え 笑え」とだけ書かれていた。


「怖すぎだろこれ! センスあるな!」


笑っている場合ではない。が、霊野はノリで札をベリッと剥がした。


「おぉぉぉぉぉい!? 今、風向き変わったって!?」


直後、吹いた風が祠の屋根をズラし、カランと中から出てきたのは――ニコニコ顔の木彫りの面だった。


「ヤバいやつやないかこれぇ!」


その瞬間、村全体に奇妙な“笑い”が広がり始める。




村、異変の兆し。


夜。


村の人々が、一斉にニコニコしながら踊り始める。音楽は鳴っていない。だが、耳の奥に“笑い声”が響く。


「……やばい。これ、俺のせいじゃね?」


霊野の顔から笑顔が消えた。

だが、霊たちの声は軽い。


『やっちまったな』『これは詫びろ』『面白いから続けろ』


「……反省しろよ!! 供養されてこいよお前ら!」


そこへ現れたのは、村の少女・ツグミ。無表情で、首には古い数珠。手には、木彫りの面を包んだ布。


「……あなた、壊しましたね。あの祠を」


「いや、正確には風が……!」


「……もうすぐ、“笑い神さま”が、お戻りになりますよ」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?