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第17話 村に着いた

 草薙たちは、エルケスの街から南に伸びるカレロ街道を通ってラトニ村に向かう。


 しかしその道中で、草薙にある試練が訪れていた。


「この街道、だいぶデコボコしてないですか……?」


 以前アリロ街道でナターシャの馬車に乗せてもらった時は、そんなに揺れは感じなかった。しかし、このカレロ街道はかなり凹凸が激しく、上下左右に大きく揺れる。


「カレロ街道は、この王国が建国された時に整備された街道の一つです。なので、どこか陥没があったり亀裂があったりするのです」

(にしてはだいぶ酷いな……。それとも、俺がアスファルトの道路に慣れすぎているのか?)


 そんなことを思うが、今更移動方法を変えるわけにはいかない。村に到着するまでは我慢するほかないだろう。


 そんな感じで、朝にエルケスを出発した草薙たちは、暗くなる前にはラトニ村に到着した。


「あなたが冒険者の方ですね?」


 村の入口にいた門番のような人が尋ねる。


「はい。草薙武尊と言います。こちらはパーティのミーナです」

「よろしくお願いします」

「それでは村長の家まで案内します。こちらへ」


 門番の案内のもと、少し大きめの家へと移動する。門番は家の扉をノックし、村長のことを呼ぶ。


「村長、冒険者の方が到着されました」

「ありがとう。後は私が引き継ごう」


 中から出てきたのは、白いヒゲが伸びきっているまさに老人と呼べるような男性だった。


 村長は草薙たちを中に入れる。


「遠いところ、よく来てくださいました。すぐに仕事の話をしますかい? それともまずは休憩なさりますかい?」

「そうですね……」


 そういって草薙はミーナの方をチラリと見る。しかしミーナは、頭に疑問符を浮かべているような顔をする。


(そりゃそうか。一応このパーティのリーダーは俺だもんな……)


 これはパーティ結成の申請書にも書いた事実である。ならば、パーティの意思決定も草薙が持っていることになる。


 草薙は少し考え、結論を出す。


「今日はもう暗いですし、仕事の話は明日にしましょう」

「分かりましたぞ。そしたら、こちらで用意した家に泊まっていってくだされ」

「そんな……。自分たちは野宿でも大丈夫です」

「いやいや、冒険者殿を野宿させるわけにもいきますまい。あなたたちは冒険者というだけで十分立派な人なのですから」


 それを言われ、草薙はハッとする。以前から言われている通り、冒険者になるには相当な訓練を受け、相応の実力を持っていないといけない。それだけ冒険者は大変な職業なのだ。そんな冒険者に対して敬意を払うのは当然のことであり、冒険者のために準備を惜しまないのはこの世界では普通の事なのだろう。


 そのように考えた草薙は、自分の考えを改める。


「では、お言葉に甘えて」


 こうして、この日は屋根のあるベッドで寝ることが出来た。


 翌朝。太陽が出てくる頃に目を覚ます草薙。


「うーん、今日も天気が良さそうだなぁ」


 そういって朝食と水を摂ろうと荷物を漁っていると、家の外からミーナが戻ってくる。


「あれ、ミーナさん。こんな時間に何を?」

「カイロスの世話をしていました」

「カイロス……? あぁ、馬の世話ですか。ありがとうございます」

「いえいえ。これも仕事の一つですから。タケルさんは今起きたんですか?」

「はい。朝食にしようかなと思って」

「じゃあ一緒に食べちゃいましょう」


 そういって小さなパンと干し肉を食べる草薙たち。朝食を食べ終えたら、再び村長の家に向かった。


「村長さん、おはようございます」

「おはようございますのう、冒険者の方。今日は仕事の話でしたな?」

「はい、よろしくお願いします」


 そういって村長の家に上がり、話を聞く。


「この村の西側には森がありましての。そこには村の食料を確保するためのイノシシやシカがおるんです。しかし数ヶ月前から数人の村人が失踪しておりまして、調査をしたら食人植物であるマニモストアがいたのです。その証拠に、失踪した村人の所有物である弓やら靴が落ちておった。マニモストアは小さいうちは食虫植物の特性を持っており、誰でも駆除できる植物。しかし体長が一メートルを超えると次第に人間を食うようになってくる。そして誰も駆除出来ずに今に至るのです」

「それは、何と言えばいいのか……」

「いえ、これは誰も悪くないのです。弱肉強食の世界では普通のことですからの」


 そういって村長はある紙を出す。


「これはマニモストアのいる場所を現した地図です。現在確認出来ているだけで四体いると思われます。これだけ相手するのも大変でしょうが、どうかお願いします」


 話を聞いただけだが、C級のクエストとは思えないような内容だろう。しかし、冒険者ならば助けを呼ぶ人々を助けるのが使命だ。


「問題ありません。俺がなんとかします」

「おぉ、ありがとうございます……!」


 そういって村長は感謝する。


「すぐにでも出発します。ミーナ、準備は大丈夫?」

「はい、大丈夫です」


 準備を確認した草薙は村長の家を出発する。害を成す植物を討伐するために。

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