かつて誰かが言った。
「本当の強さは、力じゃない。心の奥に宿る“決して折れない意志”こそが、人を前へと進ませるのだ」と——。
炎に焼かれ、恐怖に打ちのめされ、それでも尚、立ち上がろうとする少年の姿があった。
自らの無力さに苦しみ、過去の痛みと向き合いながらも、彼は歩みを止めない。
“戦う理由”を胸に秘め、
“信じる者”の手を取り、
そして、運命に抗う最初の一歩を踏み出す。
ここに語られるのは、一人の少年が“自分”という存在を試される物語。
たとえ傷ついても、折れない心があれば、人はどこまでも強くなれる。
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(※フラッシュバック)
乾いた風が吹きすさぶ戦場跡の街。建物は崩れ、空はくすんだ色で染まっていた。
シュン「ったく、またこんな任務かよ…。オレに才能があるって言うくせに、任されるのはこんな地味な仕事ばっかりだ。」
(シュンのポケットで通信機が鳴る)
???「オレのことを言ってるのか?」
シュン(心の声)「マジかよ、この人、数キロ先でも聞こえるのかよ…」
シュン「いえ、違いますよツクヨミさん。今のはただの昔話を思い出してただけです。」
ツクヨミ「もう少しマシな嘘を考えろ。」
シュン「はいはい…」
ツクヨミ「忘れるな。この任務は重要だ。今回のお前の標的は“プロの暗殺者”だ。」
シュン「でも…10歳の子どもでしょ?そんなに警戒しなくても——」
ツクヨミ「甘く見るな。そのガキ、すでに五百人以上を殺ってる。」
シュン「…そのほとんどが、搾取ばかりしてた金持ち連中でしょ? まぁ、同情の余地はあるけど。」
ツクヨミ「俺たちは正義を語る立場じゃない。依頼をこなす、それだけだ。」
シュン「わかってますよ。でも、最近の十二家族のやり方は…吐き気がするほど醜いですよ。」
ツクヨミ「忘れるな、俺たちも似たようなもんだ。」
シュン「それは…そうかもしれませんね。」
ツクヨミ「じゃあな、仕事に集中しろ。」
(通信が切れる)
シュン「ったく、気配を消してるつもりか?まる見えなんだよ。」
(シュンの後方、影の中から少年が現れる)
テンザク「へぇ…バレてたか。」
シュン「新米を騙すには十分だが、オレを相手にするには、十年早い。」
(瞬間移動のように、シュンがテンザクの背後に回り込み、ナイフを喉元に突きつける)
テンザク「なっ——!」
シュン「これが“気配を消す”ってことだ。お前のは、ただの隠れん坊だ。」
(ブシュッ)
(シュンの背中からナイフが突き出る)
シュン(心の声)「がっ……!? まさか、最初に感じた気配は…フェイクだったのか!?」
テンザク「罠にハマったな、オレの一番安っぽいトリックに。」
シュン(心の声)「——まだある?どこに…!?」
テンザク「安心しろ、すぐに楽にしてやるよ。」
シュン(心の声)「……考えろ。こいつのゼンカエネルギーは特殊タイプか?いや、それだけじゃ——」
テンザク「この町をめちゃくちゃにした連中に、オレは一生、恨みを持ってるんだ。」
(中略)
シュン「……そんなお前に一つ教えてやる。“天才に時間を与えるな”ってな。」
テンザク「なっ——!?」
(ズシャッ)
(テンザクの身体に鎖が巻きつく)
テンザク「ど、どうやって…!」
シュン「だから言ったろ?オレくらいのレベルになると、“発動”なんて必要ない。」
(テンザク、唖然)
シュン「お前の使ってたのは“召喚エネルギー”だ。ゼンカじゃない。でもな…その才能、無駄にするのはもったいない。」
テンザク「……は?何言ってんだ?さっさと殺せよ…」
シュン「オレの部下になるんだよ。まぁ、バレたらオレも終わるけどな。」
テンザク「……ふざけんなよ」
(周囲が黒い殺気で満たされる)
シュン「オレは、“死”よりも恐ろしい存在なんだよ。」
(※フラッシュバック続き)
テンザク(心の声)「あのとき感じた……あれは、確かに“死”だった。いや、それ以上の——」
(現代に戻る)
テンザク(心の声)「……そして今、また同じ感覚が背筋を走る。」
(テンザクの視線の先、漆黒のオーラに包まれたエデンがゆっくりと立ち上がる)
シュン「ふふっ……やっぱり実物は最高だな。」
テンザク(心の声)「これが……お前の“計画”か、シュン……!」
(シュンが一歩前に出る。風が揺れる)
(ゴッ)
(エデンが突然後頭部を殴られ、その場に崩れ落ちる)
テンザク「えっ……!?」
(漆黒のオーラが霧のように消えていく。周囲の獣たちもその場を離れる)
シュン「今の見たか?あいつの中には……興味深い“何か”が眠ってる。」
(テンザクの身体を縛っていた鎖が音を立ててほどける)
テンザク(息を整えながら)「あの力……無敵にもなりえるが、制御できなければ……世界に災いをもたらす。」
シュン「その通り。だが、それでも——見たいと思わないか?あいつが“何”になるのかを。」
テンザク(小声で)「……本当に、お前は怖い男だよ。」
シュン「言ったろ?オレは“死より怖い存在”だってな。」
(エデンの身体が自然に回復し始める。傷がみるみる消えていく)
シュン「おいおい……回復までできるのかよ。こりゃ面白くなってきたな。」
シュン「テンザク。頼みがある。」
テンザク「……なんだ?」
(場面転換:数時間後)
(エデンが静かに目を開ける)
エデン「……ここは……?」
シュン「お目覚めか。ちょっと血を流しすぎて、失神してたんだよ。」
エデン「……試験はどうなった?」
シュン「試験?そんなもん初めから無かったさ。ただの“観察”だよ。」
エデン「てめぇ……」
(テンザクが静かに近づき、手に何かを持っている)
テンザク「悪いが、時間も資源も限られてる。とりあえず、これを着てくれ。」
(訓練用スーツを手渡す)
テンザク「見た目はともかく、これが今ある中で最善だ。」
エデン「ありがとう……。ところで、あんたは?」
テンザク「テンザクだ。シュンの部下をやってる。」
エデン「そうか……よろしく。」
シュン(心の声)「まだ少しフラついてるな。体が勝手に回復してるとはいえ、完全じゃない。」
シュン「無理すんな。全快になってから話すことが色々ある。」
エデン「……いや、待てない。強くならないと……!」
シュン「フッ……その意気だ。」
(シュンが岩の上に立ち、夕陽を背に語る)
シュン「お前の力、今の時点で1%も使えてない。潜在能力は凄まじいが、制御を誤れば、お前自身が死ぬことになる。」
シュン「だからまずは肉体を鍛える。6ヶ月間、地獄を見せてやる。」
エデン「……6ヶ月?」
シュン「ああ。それが“GODS”に入学する最低条件だ。」
エデン「やる。必ずやり遂げる。」
シュン「それでこそだ。」
(シュンが黒い布に包まれた剣を差し出す)
シュン「これを使え。お前のじいさんの剣は、今のお前には扱えない。」
エデン「……ありがとう。必ず強くなる。あいつらをぶっ倒す、そのために。」
(翌朝。どこまでも赤く染まる空に、太陽が昇り始める。岩の上に、一人の少年が立っていた)
エデン(心の声)
「……寒い。体はまだ痛む。けど、それでも——」
(ギュッ、と拳を握りしめる)
エデン「もう逃げない。強くなるんだ。絶対に……!」
(遠くから、呑気で響く声が届く)
シュン「おーい、そこの新人〜!今日から地獄の始まりだぞ〜♪」
テンザク「……せめて朝くらいは静かに迎えさせてやれよ……」
シュン「甘やかしたらすぐ死ぬタイプだ。わかってんだよ、こいつは“戦う意思”だけは一人前だからな。」
(エデンが振り向き、ふっと笑う)
エデン「……かかってこいよ、“死より怖い男”」
(ゴゴゴ…!と空気が震えるような気配。やがて、エデンの新たな日々が始まる)