『――その後、この山道では度々鬼火が旅人を狂わせると噂になり、とある高僧がここを訪れ死した人々の供養と共に、怨霊となった伊助の魂を雪隆と共に封じ、新たな祠を建立したそうです』
パソコンの画面の向こう、薄暗く目の辺りまで暗くした語り部が口元に艶やかな笑みを浮かべている。
心霊系YouTuberの「ヨリ」はその卓越した話術で視聴者を魅了する怪談師であり、その声には人を惹きつける魅力があった。
そんな彼がフッと息を吐くと、これまで息をするのも忘れていた視聴者も同じく息をした。
『今もこの祠は何処かにあり、件の村も何処かにあるそうですが、既に禁足地とされていると聞きます。山間の廃れた山道、その途中、季節外れの彼岸花を見つけたらご注意ください。彼らは封じられてはおりますが、消えたわけではないのですから』
そう伝え、配信は終わってしまう。
「ねぇ、面白そうじゃない?」
これを聞いていた女子大生が口にする。それに他の数名が同意した。
「見つかるかな?」
「それっぽいの探せばいけるんじゃない?」
なんて言いながらスマホを操作すると、それっぽい雰囲気の場所を偶然にも見つけてしまった。しかも、それ程離れていない。
「暇だしさ、明日とか」
「いいけど」
酒の勢い、ほんの遊び……。
それが後にどんな結末になるのかを彼女達は知らない。
この地にはまだいるのだ。
愛しい男の骸を抱え、血の涙を流す青年の怨嗟が。