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第16話 さすが俺の息子

翌朝、ぼんやりしているうちに、男性の声が聞こえたような気がした。

おかしいな、テレビを消し忘れたのかな?

私はベッドから起き上がり、寝室の扉を開けた。


相澤慎一が誰かと電話をしているようで、私を見ると、携帯を置き、穏やかな口調で言った。

「起こしちゃった?」

そして、なぜか上半身が裸!?

眠気が一気に覚めた。そういえば、昨日相澤さんと直人が泊まったんだ。


私は鼻を触りながら、目を逸らした。

「いや…」


相澤慎一は私の不自然に気づいていない様子で、落ち着いてソファに置いてある自分のシャツを着ながら、「会社に急用があるから、いかないと。直人を起こしてくれる?」と言った。


「わかりました。」私は頷き、急いで直人を起こしに行った。


私が行こうとしたその時、振り返ると、ふわふわで可愛らしい直人がすでに寝室のドアの前に立っていた。彼は目を大きく見開き、相澤慎一をじっと睨んで、かなり不満そうな顔をしていた。


「直人、着替えて。」相澤慎一はジャケットを羽織りながら、直人に言った。

その反応はというと、「バタン」と音がして、寝室のドアが閉まった。

相澤慎一:「……」


相澤慎一はドアを開けようとした、ドアは内側からかけられた。

「鍵、持ってる?」


私は気まずく頭を振りながら、「一応ありますけど、部屋の中に…」と答えた。


相澤慎一は眉間に手をあて、冷たい声で言った。

「直人、三分以内に出てきなさい。出てこなければ、二度とここには来られないぞ。」


三分が過ぎても、部屋の中は静かで一切の音がなかった。

「直人、出ておいで!強制的に出さなきゃならなくなったら、もうこんなに優しくは言わないからな。」

それでも反応はなし。


直人くん、全然父親に顔を立てる気ゼロだ。

私は横で見ていて、笑いたくなったけど、笑っちゃいけないと思って我慢した。

「私はこの後仕事があるんですけど、直人くん、ここで少し遊んでいてもいいと思います。」


相澤慎一は顔をしかめ、携帯を取り出して電話をかけようとした。

私はこっそり覗き込むと、彼がかけたのは心理学者にだった。ちょっと呆れてしまった。


この程度のことで心理学者に電話するなんて、ちょっと大げさすぎない?


私は軽く咳をして、「私が試してみてもいいですか?」と提案した。

相澤慎一は少し迷った後、頷いた。


私はドアに耳を当てて、できるだけ優しく声をかけた。

「直人くん、この後仕事に行かなきゃいけないから、ずっと一緒にいられないの。だから、パパと一緒にお家に帰ろうか?」


中からは相変わらず何の反応もない。

「じゃあ、こうしよう。お互いに携帯番号を交換して、いつでも連絡できるようにしよう。ビデオ通話もできるよ!」

足音が聞こえた。


「直人くんと一緒にいたいけど、もし私が遅れたら、怒られるんだよ。どうしよう。」

カチッという音がして、ドアが開いた。


長期戦を覚悟していた相澤慎一の目に一瞬の驚きが浮かび、そして複雑な表情で私を見た。

わずか三つの言葉だけで、あの直人を素直に出させてしまったのだ。


前回、直人がこうやって自分閉じ込めたとき、彼ら一家は家政婦、心理学者、さらには交渉の専門家まで動員して、何時間も口をすっぱくして説得していたが、結局ドアを壊すしかなく、その結果、直人は一ヶ月も彼らと口をきかなかった。


直人くんの可愛い姿を見て、心の底からこの子はとても素直だと思った。

「直人くん、本当にいい子だね、ありがとう!」


褒められた直人くんは少しだけ機嫌が良くなり、黙って私にメモを渡してきた。そのメモには番号が書かれていた。

私はメモを受け取って、「仕事が終わったら、必ず電話するよ!」


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相澤慎一は少し疑問そうに思った。直人には携帯がないはずなのに、どこからその番号を?

彼は身長を活かして覗き込んだ。自分の番号だった。

さすが俺の息子。

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