翌朝、ぼんやりしているうちに、男性の声が聞こえたような気がした。
おかしいな、テレビを消し忘れたのかな?
私はベッドから起き上がり、寝室の扉を開けた。
相澤慎一が誰かと電話をしているようで、私を見ると、携帯を置き、穏やかな口調で言った。
「起こしちゃった?」
そして、なぜか上半身が裸!?
眠気が一気に覚めた。そういえば、昨日相澤さんと直人が泊まったんだ。
私は鼻を触りながら、目を逸らした。
「いや…」
相澤慎一は私の不自然に気づいていない様子で、落ち着いてソファに置いてある自分のシャツを着ながら、「会社に急用があるから、いかないと。直人を起こしてくれる?」と言った。
「わかりました。」私は頷き、急いで直人を起こしに行った。
私が行こうとしたその時、振り返ると、ふわふわで可愛らしい直人がすでに寝室のドアの前に立っていた。彼は目を大きく見開き、相澤慎一をじっと睨んで、かなり不満そうな顔をしていた。
「直人、着替えて。」相澤慎一はジャケットを羽織りながら、直人に言った。
その反応はというと、「バタン」と音がして、寝室のドアが閉まった。
相澤慎一:「……」
相澤慎一はドアを開けようとした、ドアは内側からかけられた。
「鍵、持ってる?」
私は気まずく頭を振りながら、「一応ありますけど、部屋の中に…」と答えた。
相澤慎一は眉間に手をあて、冷たい声で言った。
「直人、三分以内に出てきなさい。出てこなければ、二度とここには来られないぞ。」
三分が過ぎても、部屋の中は静かで一切の音がなかった。
「直人、出ておいで!強制的に出さなきゃならなくなったら、もうこんなに優しくは言わないからな。」
それでも反応はなし。
直人くん、全然父親に顔を立てる気ゼロだ。
私は横で見ていて、笑いたくなったけど、笑っちゃいけないと思って我慢した。
「私はこの後仕事があるんですけど、直人くん、ここで少し遊んでいてもいいと思います。」
相澤慎一は顔をしかめ、携帯を取り出して電話をかけようとした。
私はこっそり覗き込むと、彼がかけたのは心理学者にだった。ちょっと呆れてしまった。
この程度のことで心理学者に電話するなんて、ちょっと大げさすぎない?
私は軽く咳をして、「私が試してみてもいいですか?」と提案した。
相澤慎一は少し迷った後、頷いた。
私はドアに耳を当てて、できるだけ優しく声をかけた。
「直人くん、この後仕事に行かなきゃいけないから、ずっと一緒にいられないの。だから、パパと一緒にお家に帰ろうか?」
中からは相変わらず何の反応もない。
「じゃあ、こうしよう。お互いに携帯番号を交換して、いつでも連絡できるようにしよう。ビデオ通話もできるよ!」
足音が聞こえた。
「直人くんと一緒にいたいけど、もし私が遅れたら、怒られるんだよ。どうしよう。」
カチッという音がして、ドアが開いた。
長期戦を覚悟していた相澤慎一の目に一瞬の驚きが浮かび、そして複雑な表情で私を見た。
わずか三つの言葉だけで、あの直人を素直に出させてしまったのだ。
前回、直人がこうやって自分閉じ込めたとき、彼ら一家は家政婦、心理学者、さらには交渉の専門家まで動員して、何時間も口をすっぱくして説得していたが、結局ドアを壊すしかなく、その結果、直人は一ヶ月も彼らと口をきかなかった。
直人くんの可愛い姿を見て、心の底からこの子はとても素直だと思った。
「直人くん、本当にいい子だね、ありがとう!」
褒められた直人くんは少しだけ機嫌が良くなり、黙って私にメモを渡してきた。そのメモには番号が書かれていた。
私はメモを受け取って、「仕事が終わったら、必ず電話するよ!」
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相澤慎一は少し疑問そうに思った。直人には携帯がないはずなのに、どこからその番号を?
彼は身長を活かして覗き込んだ。自分の番号だった。
さすが俺の息子。