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第41話 強硬

 根本と柴崎が、大石に対して連続攻撃を仕掛けているものの、その巨体に見合った強靭な肉体に苦戦していた。


「クソッ! コイツ固すぎる!」

「柴崎! 文句を言う暇があるなら攻撃を叩き込め!」


 根本と柴崎は、大石の周りをグルグル回るように移動しながら攻撃を入れていくが、あまり効果がないように見える。大石は腕で胸から顔をガードしているだけで、特に何もしていないからだ。


『お前らの攻撃はこんなものか? だったらこっちから行くぞ!』


 そういって二人の攻撃がなくなった瞬間を狙って、大石は急に腕で二人のことを薙ぎ払う。

 その攻撃をまともに食らった根本と柴崎は、霊園の墓石群の中へと吹き飛ばされてしまった。


『ふぅ。攻撃の手数は多かったが、一回ごとの攻撃は大したことなかったな』


 大石が首をゴキッと鳴らしていると、そこに神藤たちがやってくる。


「大石。さっきは不覚を取ったが、今度こそ決着をつける」

『富士見、ようやく殺される覚悟が決まったか』

「君に殺される筋合いはない。神無月機関は僕の手で終わらせる」

『やれるもんなら、やってみな!』


 そういって大石は、大きく飛び上がって富士見に襲い掛かる。

 それに対して、上島がすぐに攻撃を仕掛ける。


「エルエスの福音書9章17節」

『師は長老に「そのまま行きなさい、あなたが信じるように事が進むでしょう」と言われた。その時に、父からの祝福があった』


 すると、十字架を中心に巨大な半球状のバリアが出現した。バリアに大石の拳がぶつかるが、バチバチと激しい衝撃が発生する。それでもなお、破壊するには至らなかった。

 バリアの下の空いている隙間から、神藤が飛び出す。そのまま直刀を突き出す。


「悪しき霊魂この世に栄えず、絶えず根の国向かうべし」


 祝詞を上げ、直刀に能力を付与する。直刀の先端が光り、それが矢の先端のようになった。

 それを大石の足元に向けて突き刺す。大石は回避することなく、そのまま直刀の攻撃を受け入れた。

 直刀は大石の脛に深く刺さり、その周辺の皮膚や筋肉を浄化させる。


『そんなものか。なんとも弱い』


 大石は余裕の表情を見せる。すると、浄化による肉体の崩壊よりも、大石の肉体の再生のほうが早く、直刀が空けた穴をどんどん埋めていく。


(くっ……! これは駄目だ……! このままいると俺のほうがやられる!)


 神藤の決断は早かったようで、後ろに下がった時に大石の空いていた手で神藤のいた場所を殴っていた。


『貴様、すばしっこさだけは一流だな。だがそれで俺に勝てると思うなよ!』


 大石はバリアから一度離れ、今度は地面ギリギリのローキックを入れてくる。

 その射程は神藤のいる場所まで届きそうだった。

 そこに割り込んできたのが、富士見である。日本刀で大石の足首を斬る。それにより、神藤はローキックを受けずに済んだ。


『ほう、俺の体を完全に斬ってくるとは……。富士見も成長しているようだな』

「そうかな。これが本来の僕の力、とは思ったりしないんだね」

『昔のお前のほうが、もっと戦いがいのある奴だった』


 そういって大石は片足で立ち上がる。その間に、斬られた足首からどんどん再生していく。


「あの時は無茶できたからね。今の僕が無茶すると、体に堪えるんだよ」

『お互い歳を取ったものだな。だが先に死ぬのはお前のほうだ』


 斬られた足が完全に再生すると、大石は右手を大きく引く。


『はぁっ!』


 そして勢いよく前に突き出した。それにより衝撃波が発生した。しかしただの衝撃波ではない。実体を持った衝撃波というべきで、地面のアスファルトを抉りながらこちらに飛んでくる。


「神藤君!」

「はい!」


 その衝撃波を神藤と富士見が刀で受け止める。しかし、受け止めてからも衝撃波は止まることはない。まるで推進装置でも付いているかのように、衝撃波はジリジリと神藤たちのことを押す。


「ハラスへの手紙1章4節」

『父と師を信仰する真実の子ハラスへ。父と私たちの救世主たる師から、恵みと平穏があなたにあるように』


 上島による状態向上の光が神藤と富士見に降り注ぐ。それにより、神藤と富士見はそれにより、グググ……と衝撃波を押し返す。


「うぉぉぉ……!」


 神藤は直刀を握る手が強くなる。


「はぁ!」


 そして神藤と富士見は、衝撃波をぶった斬った。衝撃波は複数の衝撃波へと分かれ、あらゆる方向に飛んでいく。


『ほう、少しはやるじゃないか。富士見はともかく、そっちのガキがここまでやってくれるとはな』

「神藤君は僕たちの仲間だ。仲間を守り、一緒に戦うのは当然のことだろう?」

『そんな考えなんぞ、とうの昔に捨て去った。俺が、この俺がこの世で一番強い!』


 そういって大石は咆哮を上げる。


「神藤君、そろそろ胸の刺青に行けるかい?」

「大丈夫です」

「分かった。君に託すよ」


 そういって三人は、また構えなおす。

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