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第15話

私は投げつけられたものを素早く避け、歯を食いしばりながら、全身の力を振り絞って麻美子を押しのけた。

麻美子は天使のような顔をしているけれど、まさかこんなひどいことをするなんて。


麻美子は私が反抗することを予想していたようで、彼女は後ろに仰け反り、罠にはめたような冷ややかな表情を浮かべていた。その姿を見た瞬間、私は何かに気づいた。


すぐに手を伸ばし、麻美子をつかもうとしたけど、その瞬間、彼女の後頭部が床にぶつかり、血が流れ出した。血の匂いが部屋に広がり、私はその血を見て、体が震えた。

血……どうして血が出ているの?こんなに激しくぶつかっていないはず!


「麻美子!」


私は動揺しながら麻美子見る際に、ドアの外から誠人の少し緊張した声が聞こえた。

顔を上げると、黒い衣装を着た誠人が冷徹な表情を浮かべ、麻美子に歩み寄ってきた。


「私は……わざとじゃない、柳下さんが先に手を出したから……」


唇が青白くなり、私は真実を伝えようとした。


「山極さんは、まだ子を奪ったことを恨んでいるから、私に危害を加えたの。痛いよ、誠人……」


麻美子は弱々しく誠人に寄りかかりながら、訴えるように言った。


「いい度胸だ!」


誠人は麻美子を抱き上げ、冷徹な眼差しで私を睨んだ。


「彼女は多分、自分のお兄さんのことを心配して焦っているんだろう。誠人、彼女は昔あなたに仕えていたし、あなたの子を妊娠したこともあるから。今日は彼女を許してあげて」


麻美子は誠人の手を握り、まるで何事もなかったかのように、静かな声で言った。


私は麻美子の白々しい姿を見て、怒りがこみ上げてきた。

この世界には、こんなにも恥知らずな女がいるとは。


「愛子、お前の兄は監獄で一生過ごすことになる。それが麻美子に対するお前の罰だ」


私は何かを言おうとしたその瞬間、誠人が冷たい表情で私に向かって言った。


「話を聞いて!」


誠人の言葉に、私は全身が冷たくなった。

誠人が、麻美子の一方的な言い分だけを信じて、私が麻美子に危害を加えようとしていると思い込んでいる。


「彼女を追い出せ、もう顔すら見たくない」


誠人は私を一瞥し、執事に私を追い出すよう命令した。最初、兄を許すつもりだったように見えたのに、麻美子が……麻美子が私を悪者に仕立て上げ、誠人が私を信じられなくさせ、兄を許す機会を与えないようにした。


私は突然、麻美子の目的に気づいた。彼女は誠人に、兄を許させたくないと気づいた。


「誠人!麻美子が私を傷つけようとしたから、私は反撃した!傷つけるつもりはなかった、麻美子がすべてを仕組んで、私を罠にかけたんの……!」


「麻美子を悪く言うとは。お前は何様のつもりだ? 」


誠人は死んでいる人を見るような目で私を見つめながら言った。


私は誠人の横顔を見て、動けなくなった。麻美子は私をちらっと見て、得意げに笑った。


「誠人、彼女を追い出して。もう彼女を見たくないの」


彼女は誠人の胸に寄りかかり、小さい声で言った。


「愛子、お前の大哥が監獄でひどい目に遭っても、それは全部お前が引き起こしたことだ。これが麻美子を傷つけたお前の罰だ」


「誠人、私の話を聞いて……!」


私は必死に説明しようとしたけど、誠人はそのチャンスを与えず、すぐに私を引きずり出させ、誠人の別荘から追い出された。


私はしゃがみ込んで、胸が苦しくて堪えきれなかった。

誠人……どうして少しも信じてくれないの?




その後、誠人が言った通りに、警察に兄をいじめるように指示した。大哥はひどく殴られ、母が警察署に行った時、泣きながら騒いでいた。そのせいで警察から電話がかかり、母を迎えに来るよう言われた。もし迎えに来なければ、彼女を逮捕すると。


昨日、私は誠人のところで雨に濡れ、体調が悪くなった。母が警察署で騒いでいると聞き、有佳と一緒に警察署に向かった。


警察署の前に着くと、母は地面に座り込んで、兄を釈放しなさいと胸を叩きながら騒いでいた。

兄はメディアで誠人を中傷し、誠人の会社で騒ぎを起こしたことで、すでに犯罪行為と見なされ。


しかも、誠人は財閥の御曹司で、兄が誠人に逆らうなんて、まるで命を懸けるようなことだった。

誠人の命令がなければ、兄が釈放されるわけがない。




「もういい加減にして、あなたも捕まるつもりなの?」


母はそんなことお構いなしに騒ぎ続け、私は怒りと焦りがこみ上げてきて、思わず母の腕を掴んで大声で言った。


「誠人にお願いしたんよね。どうして正光がこんなにひどく殴られているの?」


母は私を見て、地面から立ち上がると、突然拳を振り上げて私の胸を叩いた。


私はその衝撃で少し後ろに倒れたが、母は止まることなく、私を叩き続け、罵声を浴びせてきた。

その言葉はとても辛辣で、私はあの夜誠人の別荘前で跪き、麻美子にいじめられ、誠人に誤解されて苦しんでいたことを思い出した。


私は自分がこんなに尽力してきたのは一体何のためだったのか?


「もううんざりだ! 私はあなたたちに何も借りていない! 兄が間違ったことをしたんだから、私は助ける必要はない! 私だって人間よ! あなたが昨夜、誠人の別荘で頼んでいるとき、どれだけ恥ずかしかったか、あなたはわかっているの!? 麻美子に傷つけられ、誠人に誤解された時、どれほど苦しかったか、あなたは一度も気にしたことがない!」


長い間抑え込んでいた苦しみが一気に爆発し、私は母に向かって叫んだ。



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