有佳の家に戻った後、私は自分が危うく転落死したことを話すと、彼女はあまりの怒りで体が震えた。
「マジであり得ない!有名な柳下家のご令嬢のくせに、どうしてこんなことをするの?」
有佳の怒った様子を見て、私は逆に冷静になった。
「有佳、こんなことで怒らないで」
私は静かに、有佳の手を軽く握りしめた。
「今すぐ柳下家に行こう。あの麻美子にちゃんとお返しをしないと」
有佳は私の手を掴んで、そのまま柳下家に連れて行こうとした。
「麻美子が認めると思う?」
私は首を振り有佳を阻止した。
あの時、屋上には監視カメラがなかった。私はただイヤリングを拾っただけ、それは必ずしも彼女のものにはならない、麻美子は色んな言い訳ができる。
「じゃあ、このまま黙っているつもり?」
有佳は私の言葉を聞き、少し冷静になった後問いかけた。
「黙る?まさか。彼女は何度も私と私の子供の命を狙ってきた。きっと次があると思う。このまま黙ってはいかない。麻美子に勝つには、ちゃんと策を講じないと」
私は薄ら笑いを浮かべながら、冷静に言った。
麻美子は同時に財力と権力を持ち、白を黒と言いくるめる。だから真正面の対決は避けないといけない。
「じゃあ、どうするつもり?」
有佳は私に尋ねた。
「彼女の次の動きを待つ。」
私は手に持っているダイヤのイヤリングを見つめながら、淡々と答えた。
今できることは、麻美子が再び行動するのを待ち、証拠をつかむこと。
「でも、こんな悪党女、次に手を出したら、今度みたいに運良くなれないかもしれないよ。」
「心配しないで、それに備えておくから。」
周りに危険があることを知った以上、必要な対策をしっかり整える、麻美子にこれ以上好き勝手させない。
「山極愛子、出てきなさい!聞こえてるでしょう!出てこい――!!」
後で必要になるかもしれないと思い、私はイヤリングをしっかりと保管し、有佳と一緒に外食に行こうとしたその時、玄関の外から母の叫び声が聞こえた。
私は眉をひそめて、ドアを開け途端、黒い影が私を襲ってきた。
急いで避けたものの、母は空振りし、地面に座り込みながら私を罵り始めた。
「正光を助けてて言ったのに、どうしてこうなったの?無傷で警察署から出して欲しかったのに……あんたは何をしているの!?どうして止めなかったの!?」
「止める…って、何を?」
母の言っていることが、全く理解できなかった。
屋上で、誠人さんは兄を釈放すると言っていた。彼はすでに刑務所で痛い目に遭っていたから。
「片方の足が使えなくなったの、わかる?もう使えないのよ」
母は目を赤くして、私を睨みつけ、再び襲うようとしたけど、有佳はすぐに彼女を止めた。
「使えられなくても結構。それに、正光の足が使えなくなったからって、愛子に何の関係があるて言うの?」
「愛子があんたのダメ息子のためにお願いしたせいで、屋上から突き落とされそうになったんだよ!」
有佳は何も知らない母を見て、私の代わりに言い返してくれた。
しかし母は全く反応せず、頭の中は兄のことしか考えていない。
誠人さんが兄の足を折ったことは予想外だったけど、兄はこれで大人しくするでしょう。
彼を責めるつもりはない。なぜなら、もう手加減してくれているから。そうでなければ、兄の残りの人生は刑務所で過ごすことになるだろう。
片足が使えなくなるのと、刑務所で死ぬのを比べれば、どちらを選ぶかは馬鹿でも分かるでしょう。
「たとえ屋上から突き落とされたとしても、それもあんた自身のせいだ!正光は何を間違ったっていうの?あんたを助けるためにこんな羽目になったんだよ!?それで、あんたは何をした?兄を見殺しにしたっていうのか!!なぜ自分のお兄さんを守れなかった!?」
母は私の腕を折る勢いで締めつけながら、怒りながら問い詰めてきた。
私は彼女の歪んだ顔を見て、泣きそうで笑ってしまった。