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第18話

有佳の家に戻った後、私は自分が危うく転落死したことを話すと、彼女はあまりの怒りで体が震えた。


「マジであり得ない!有名な柳下家のご令嬢のくせに、どうしてこんなことをするの?」


有佳の怒った様子を見て、私は逆に冷静になった。


「有佳、こんなことで怒らないで」


私は静かに、有佳の手を軽く握りしめた。


「今すぐ柳下家に行こう。あの麻美子にちゃんとお返しをしないと」

有佳は私の手を掴んで、そのまま柳下家に連れて行こうとした。


「麻美子が認めると思う?」


私は首を振り有佳を阻止した。


あの時、屋上には監視カメラがなかった。私はただイヤリングを拾っただけ、それは必ずしも彼女のものにはならない、麻美子は色んな言い訳ができる。


「じゃあ、このまま黙っているつもり?」

有佳は私の言葉を聞き、少し冷静になった後問いかけた。


「黙る?まさか。彼女は何度も私と私の子供の命を狙ってきた。きっと次があると思う。このまま黙ってはいかない。麻美子に勝つには、ちゃんと策を講じないと」


私は薄ら笑いを浮かべながら、冷静に言った。

麻美子は同時に財力と権力を持ち、白を黒と言いくるめる。だから真正面の対決は避けないといけない。


「じゃあ、どうするつもり?」


有佳は私に尋ねた。


「彼女の次の動きを待つ。」


私は手に持っているダイヤのイヤリングを見つめながら、淡々と答えた。

今できることは、麻美子が再び行動するのを待ち、証拠をつかむこと。


「でも、こんな悪党女、次に手を出したら、今度みたいに運良くなれないかもしれないよ。」


「心配しないで、それに備えておくから。」


周りに危険があることを知った以上、必要な対策をしっかり整える、麻美子にこれ以上好き勝手させない。




「山極愛子、出てきなさい!聞こえてるでしょう!出てこい――!!」


後で必要になるかもしれないと思い、私はイヤリングをしっかりと保管し、有佳と一緒に外食に行こうとしたその時、玄関の外から母の叫び声が聞こえた。

私は眉をひそめて、ドアを開け途端、黒い影が私を襲ってきた。


急いで避けたものの、母は空振りし、地面に座り込みながら私を罵り始めた。


「正光を助けてて言ったのに、どうしてこうなったの?無傷で警察署から出して欲しかったのに……あんたは何をしているの!?どうして止めなかったの!?」


「止める…って、何を?」


母の言っていることが、全く理解できなかった。


屋上で、誠人さんは兄を釈放すると言っていた。彼はすでに刑務所で痛い目に遭っていたから。


「片方の足が使えなくなったの、わかる?もう使えないのよ」

母は目を赤くして、私を睨みつけ、再び襲うようとしたけど、有佳はすぐに彼女を止めた。


「使えられなくても結構。それに、正光の足が使えなくなったからって、愛子に何の関係があるて言うの?」


「愛子があんたのダメ息子のためにお願いしたせいで、屋上から突き落とされそうになったんだよ!」


有佳は何も知らない母を見て、私の代わりに言い返してくれた。

しかし母は全く反応せず、頭の中は兄のことしか考えていない。

誠人さんが兄の足を折ったことは予想外だったけど、兄はこれで大人しくするでしょう。


彼を責めるつもりはない。なぜなら、もう手加減してくれているから。そうでなければ、兄の残りの人生は刑務所で過ごすことになるだろう。

片足が使えなくなるのと、刑務所で死ぬのを比べれば、どちらを選ぶかは馬鹿でも分かるでしょう。


「たとえ屋上から突き落とされたとしても、それもあんた自身のせいだ!正光は何を間違ったっていうの?あんたを助けるためにこんな羽目になったんだよ!?それで、あんたは何をした?兄を見殺しにしたっていうのか!!なぜ自分のお兄さんを守れなかった!?」


母は私の腕を折る勢いで締めつけながら、怒りながら問い詰めてきた。

私は彼女の歪んだ顔を見て、泣きそうで笑ってしまった。



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