昼休み。学園の中庭。
風が吹き抜け、葉の揺れる音がやけにドラマチックに聞こえる――
「やっぱ、建人先輩ってすげぇなー!かっけぇわ!」
そう言ってキラッキラの笑顔を向けるのは、我が弟、霧島
原作の主人公であり、天使みたいな後輩であり、そして何より…推しの恋のお相手!!
「お兄ちゃんも先輩のこと、すげーって思うだろ?」
「……うん、めっちゃ思ってるよ(別の意味でな)」
いやいやいや、私の弟、なんでそんな攻め顔で先輩見る!?
ちょっと顔近いよ!? なんか空気が…妙に甘くない!?
これ、原作のイベントCGで見たやつじゃん!?背景ぼかして後光が差すやつじゃん!?
※なお、隣の塁(中身・美里)は必死に「オタク死す」と呟いていた。
そして、その時だった。
「……お前、晴翔のこと、好きなの?」
建人先輩が、まさかの質問。
「えっ……!?」
好きだよ!!
推しと推しの相手が一緒にいる世界、好きに決まってんじゃん!?
むしろ私が今、尊すぎて破裂しそうだよ!!
でも、建人先輩の表情はちょっとだけ曇っていて。
(あれ…これって、まさか…嫉妬してる……?)
この時、塁(中身・美里)は悟ってしまった。
原作、完全にズレてる。
ここに来てまさかの、
「主人公(弟)→建人先輩」じゃなくて、「建人先輩→塁」ルート突入の気配。
いやいや待って?私、脇役ポジで幸せだったのに、今すごい重い三角関係のど真ん中にいるんだけど!?
夢女子と腐女子の戦い、開戦のお知らせです。
でも、ここで揺らいだら“オタクとして”負けだと思うの。
だから私は、こう答えた。
「晴翔のことは、私が一番よく知ってるよ」
にっこり笑って、そう言った。
(※乙女ゲームでルート阻止するライバル女ポジの台詞になってない?これ大丈夫?)
だけど建人先輩は、そんな私の言葉に、ゆっくりと頷いて……なぜか安心したような笑みを浮かべた。
「そっか。……じゃあ、塁のことは、俺が知っていきたい」
え、待って、ちょっと待って。
ルート変わった音、今聞こえたよね!?