目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第5話 「記憶のカケラと、ほころぶ想い」

「本当の願いって何なのよ……こっちはその“願い”が分からないから苦労してんだわ!!」


放課後の教室で一人、塁(中身・美里)は机に突っ伏していた。

管理者の言葉が脳内でぐるぐるしている。


(晴翔に“本当の願い”を思い出させろ、って言うけど……攻略対象じゃないどころか、弟ポジですらルート存在しなかったんだけど!?)


「兄ちゃん?」


そんな時、ドアがそっと開いて、晴翔が顔を覗かせた。


「購買のシュークリーム、まだあったから買ってきた。兄ちゃん、好きでしょ?」


「……っ、ありがと晴翔……推しじゃなくても、あんたは天使……!」


「???」


無垢な笑顔に、一瞬だけ全てを忘れそうになる塁だが、ふと彼の手元にある古びたノートに目が止まる。


「それ、何?」


「これ? たぶん小学校の頃のやつ。ロッカーの奥から出てきたんだ」


ページをめくると、幼い字で書かれた「将来の夢」やら「大切なもの」が並んでいた。


その中に、一枚だけ……明らかに他とは雰囲気の違うページ。


『世界が変わっても、あの人と一緒にいられますように』


「……晴翔、これ書いたの覚えてる?」


「え……? いや、全然……そんなの書いたっけ……?」


笑ってごまかす晴翔。しかしその目は、一瞬だけわずかに陰る。


(思い出せていない……これが“記憶のカケラ”? もしかしてこの世界が“バグってる”せいで、本当の願いごと消えてるのかも……)


すると、空間が一瞬だけ揺れる。


「っ……やば、ルート進行がまた乱れた?」


塁のスマホに、あの白ローブ管理者からの通知が届く。


『ヒント:記憶の欠片を三つ集めよ。願いは過去に宿る』

「……記憶の“カケラ”を探す、ね。はいはい、ゲーム的お使いミッションきたー!!」


けれど次の瞬間、スマホが再び振動。


『追伸:建人、君に気持ちが傾いてるっぽいよ? 推しに攻略される未来、回避する気ある?』

「ギャアアアアアア!!」


夕暮れの教室に塁の叫びがこだました――。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?