突然だが、
「……ギンカクくん、動力部はもう少し舳先部へ寄らせた方がいいんじゃあないかい? 見た目以上にその方が安定しそうだ」
「
「『
「
「ああ!! ……ギンカクくぅん、
かと思えば「
「ちょっと!! 運転席の居住性も大事でしょ? ふ、ふたりが運転中も寄り添えるような絶妙な配置にしたんだからちゃんと見なさいよねッ!!」
「荷台を模した『御休憩♡スペース』の間取りも最大限ラグジュアリーに仕上げたんだからッ!! ちょっと一緒に見てみなさいよッ!!」
ツンデレなんだか最早分からねえし、描き分けも困難な感じでまくし立ててくる「
「……」
いや何でいるの? みたいに、遠目で腕組みをしたまま一部始終を厳しい目で睥睨してきている「
「さあさ皆さん、お茶の時間ですよぉぅ」
笑顔で給仕しているネコルの満面の笑みを見つつ、まあいいか、とか思ってしまう俺がいる。でっかいガレージのようなこの「作業場」には、皆の熱気がこもって蒸し暑いことこの上無えが、何となくの心地よさを与えてきてくれている。
何でも、目指す「次の」邪神は外洋を挟んだ大陸にいるとのことで、船で行こうものならば20日はかかると言われた。余裕で俺が死ぬ航海となる。
なもんで、「空飛ぶトラック」を作ろうとの考えで、この港町で作業に取り掛かったのが2か月ほど前。そしたら俺が屠ったはずのクズミィ神が実は生きていることが判明し、ただその身体は七つの
利害関係が一致したのかそうでもねえのか判断はつかねえが、とにかく人手があるのは助かる、ってことで今に至る。
「……」
ここ数日の、まともに寝てねえ疲労感が不意に襲い掛かってきた。機械油の臭いが凄まじい作業場から外へ出ると、ネコルから受け取った、冷たい麦茶みてえな香ばしい/でも色は真っ青という摩訶不思議な飲み物を口に運びつつ、にぎやかさを増してきた町の様子に目をやる。
……確かにここに在る、人の営み。俺はこれからも、この「異世界」で生きていく。
そんなことを改めて脳の片隅にぷかり浮かばせていたら、
「空飛んだら酔わないとかって……そんなことあるんですかねぇ……揺れはかえって不規則でキツそうですけどねぇ」
いまさらなことを言ってくるネコルが自然に腕を絡ませてくるわけで。
すっかり神の威厳を失って人間然とした振る舞いで馴染み始めている、その……何て言うか、俺の……
最愛の女性の、
華奢なその肩にさりげなく腕を回しつつ、ゆっくりと抱き寄せる。そして、
「ま、やってみるさ。やってダメならまた次の案を考えるまでだぜ」
なぜなら。
「……俺たちの人生は、まだ始まったばかりだから、よ」
ことさらに何気なく言ったものの、その青臭さに思わず赤面し始める俺ではあるが。刹那(!)、
(ケレンミー♪)という声が、ネコルの口からなのか、それともどこかからなのか、確かに俺の耳に届いた気がした。
(終)