---

収穫祭から数日が過ぎ、ヴェルナの心は穏やかな日々の中で微妙に揺れ動いていた。エリオットが伝えた真摯な想いは、彼女の中に新たな光を灯していた。これまで自分を支えてくれた彼の存在が、単なる信頼できる協力者以上のものに感じられるようになっていたのだ。

「エリオットは、私にとって……。」

ヴェルナは執務室で一人、考え込んでいた。彼への感謝と尊敬、そしてそれ以上の感情が心の奥底で芽生えつつあることを自覚していた。

その時、ドアが軽くノックされ、エリオットが現れた。彼はいつもの冷静な表情で、手にいくつかの書類を持っていた。

「ヴェルナ嬢、先日の供給路に関する報告書がまとまりました。」

彼は静かに言った。「必要であれば、次の対策会議で使用してください。」

「ありがとう、エリオット。」

ヴェルナは書類を受け取りながら微笑んだ。「あなたがいてくれると、本当に助かるわ。」

「恐縮です。」

エリオットは少し頷き、書斎を出て行こうとした。しかし、ヴェルナはふいに彼を引き止めた。

「エリオット、少しだけ時間をもらえる？」

彼女の声には、どこか躊躇と決意が混ざっていた。

---

二人は庭園のベンチに並んで座り、初夏の柔らかな風に包まれていた。ヴェルナは何を言うべきかを考えながら、エリオットの横顔をちらりと見た。

「エリオット。」

彼女は意を決して口を開いた。「私はあなたに感謝しているだけじゃなくて……もっと特別な感情を抱いているみたいなの。」

エリオットは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに穏やかに微笑んだ。

「ヴェルナ嬢、あなたがそう感じてくださるだけで、私にとっては十分です。」

彼の声には、深い優しさと喜びが込められていた。

「でも、私はまだ自分の気持ちに確信が持てなくて……。」

ヴェルナは視線を落としながら続けた。「あなたを困らせたくはないの。」

「それでいいんです。」

エリオットは静かに答えた。「時間をかけて、あなた自身の気持ちを見つけてください。私はどんな時も、あなたのそばにいます。」

彼の言葉に、ヴェルナは心の中で安堵を覚えた。彼が自分を急かすことなく、そっと見守ってくれる存在であることに、改めて感謝の念が湧き上がった。

---

その夜、ヴェルナは自室で一人、エリオットとの会話を思い返していた。彼の優しさと誠実さが、自分にとってどれだけ大きな支えになっているかを再確認した。

「エリオット……。」

彼女は静かに呟いた。「あなたとなら、これからの未来を一緒に歩んでいける気がする。」

その言葉に、自分の中で揺れていた感情が少しずつ形を成し始めていることを感じた。

---

翌朝、ヴェルナはいつも以上に清々しい気持ちで執務に臨んだ。彼女はエリオットへの思いを心に秘めながらも、領地改革と住民たちの未来を最優先に考える姿勢を貫いていた。

エリオットもまた、彼女の姿を見つめながら、自分の感情を静かに整理していた。ヴェルナが見せる強さと優しさ、そして住民たちに向ける誠実な思いが、彼の中で彼女への想いをさらに深めていた。

その日、エリオットはヴェルナに新たな提案を持ちかけた。それは、領地での経済活動をさらに発展させるための新しい商業ルートの開拓だった。

「ヴェルナ嬢、このルートが確立すれば、領地全体の収益がさらに安定します。」

彼は詳細な地図を広げながら説明した。「ただ、この計画には少しリスクも伴いますが、試みる価値は十分にあると思います。」

ヴェルナは地図に目を通しながら慎重に考え込んだ後、頷いた。

「確かにリスクはあるけれど、それ以上に得られる成果が大きいわね。住民たちの負担にならないよう、慎重に進める必要があるけれど、あなたの提案に賛成よ。」

「ありがとうございます。」

エリオットは穏やかに微笑みながら答えた。「私が全面的にサポートしますので、安心してください。」

---

その夜、エリオットは一人で書類を整理していた。彼の心の中には、ヴェルナへの想いが強く渦巻いていた。彼は自分がどれだけ彼女を支えたいと思っているかを改めて実感していた。

「ヴェルナ嬢が成し遂げようとしていることは、本当に素晴らしい。」

彼は自分に語りかけるように呟いた。「彼女の隣に立つには、私もさらに努力しなければならない。」

---

一方、ヴェルナは自室のバルコニーに出て、夜空を見上げていた。満天の星が広がる空は、彼女の心を穏やかにし、未来への希望を抱かせた。

「私はこれまで一人で戦ってきたつもりだったけれど……。」

彼女は静かに呟いた。「エリオットがいてくれることで、こんなにも安心できるなんて。」

その言葉は、これまで閉ざされていた彼女の心の扉が少しずつ開いていることを物語っていた。

---

数日後、ヴェルナは住民たちとの会合に出席した。そこでは、新たな商業ルートの計画についての説明が行われた。彼女は住民たちの意見を真摯に聞き入れ、計画に反映させることで、彼らとの信頼関係をさらに深めていった。

会合が終わった後、エリオットが彼女に近づき、静かに言った。

「ヴェルナ嬢、今日の会合での対応は見事でした。住民たちも、あなたが本当に彼らのことを考えていると感じたはずです。」

「ありがとう、エリオット。」

ヴェルナは微笑みながら答えた。「でも、あなたが支えてくれるからこそ、私は自信を持って進めるの。」

彼女の言葉に、エリオットは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「その言葉をいただけるだけで、私は十分に報われます。」

彼の声には、深い感謝と誠実な思いが込められていた。

---