公爵は、セリカの知識がどこまで通用するかを確かめるため、試しに小さな領地の業務を任せることにした。まず最初に彼女に与えた仕事は、農地の一部で発生していた収穫量減少の問題だった。小さな規模の問題であり、失敗しても大きな影響は出ないと考えたため、試験的に任せるのには丁度良かったのだ。
「セリカ、この村の農地で作物の収穫が減少しているようだ。原因を調べ、報告してくれないか」
セリカはすぐにその仕事を引き受け、書類や現地からの報告を丹念に調べ始めた。彼女は前世の知識を活かし、農業に関する基本的な理論や栽培技術についても熟知していた。さらに、現地に赴き、実際の状況を確認するという積極的な姿勢を見せた。
数日後、セリカは父親の執務室を再び訪れ、収穫減少の原因を報告する。
「お父様、この問題の原因は、土壌の栄養不足と古い灌漑システムにあると考えます。肥料の成分を改善し、新しい灌漑システムを導入することで、収穫量の回復が見込めるでしょう」
セリカは問題の分析だけでなく、解決策まで提案してきた。公爵は驚きを隠せなかった。彼女の指摘は的確であり、さらに現実的な対策まで考えられている。
「……そうか。よし、試しにお前の言う通りにやってみよう」
公爵は彼女の提案を採用し、領内の役人たちに指示を出した。そして、数週間が経過し、セリカの提案が実行に移されると、農地の収穫量は驚くほど改善され、村の住民たちからも感謝の声が上がった。
「お嬢様のおかげで、収穫量が元通りどころか、それ以上になりました!」
役人たちは口々にそう報告し、公爵もまた、娘の才能を目の当たりにすることとなった。
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セリカは次々と与えられる小さな仕事で、的確な指摘と提案を行い、実際に結果を出していった。彼女に任される業務は徐々に増え、ついには父親である公爵も彼女の能力を完全に信頼するようになった。
「最初は子供の手伝いだと思っていたが……今やセリカ、お前は私の右腕だな」
公爵は感慨深げにそう言った。セリカは微笑んで頭を下げる。
「ありがとうございます、お父様。まだまだ学ぶべきことは多いですが、これからも力を尽くします」
こうして、幼きセリカは父の右腕として領地の経営に深く関わり、その才能をいかんなく発揮していくこととなった。彼女の提案が次々と実行に移され、ディオール領は着実に発展し始めた。