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第53話 新たな陰謀と知恵の力



ロワンスが去った後、セリカとドライドは、彼が簡単に諦めるとは思えず警戒を強めていた。しばらくの間は何事もなく、領地の運営は平穏に進んでいたが、ある日、ロワンスの部下と名乗る男が再びセリカに接触してきた。


「お嬢様、ロワンス様の代わりにお話を伺いに参りました」と、部下は低姿勢で名乗り出た。


セリカは警戒を解かず、部下の要件を静かに待った。彼は表面上は丁寧な態度をとりながらも、話しの節々に圧力を感じさせる言葉を織り交ぜてきた。


「お嬢様、私どものご提案を再考いただけると幸いです。ご承知の通り、ディオール領の発展には資金が必要であり、我々が提供する融資はその理想的な資金源となり得ます。しかし、お嬢様が不本意とあらば…他の勢力にこの機会を提供するのも一つの手かもしれません。」


部下の言葉には、明らかな挑発と脅しが含まれていた。ディオール領の経済的な発展に対するセリカの熱意と、それに伴う責任感を逆手に取ろうとする意図が見え隠れしていたのだ。


「そのような脅しに屈するつもりはありません」と、セリカは毅然とした態度で答えた。「ディオール領の発展は私の責務ですが、それに不正な手段を用いることは決して許されません」


部下は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべ、「それでは…」とだけ言って立ち去った。


彼が去った後、セリカはドライドに向き直り、深い考えに沈んだ。「彼らは私たちを脅しで屈服させようとしているわけね。…どうにかして、完全にこの悪徳業者たちを排除する方法を考えないと。」


その後、ドライドと共に、彼らが仕掛けてくるであろう次の罠や陰謀に対処するため、法的な抜け穴を塞ぐことや、領内の金融における管理体制の見直しを進めることを決意した。


その時、サエが部屋に入ってきた。彼女は最近、セリカの頼れる知恵袋としても活躍しており、特に契約書や文書に関する知識は目を見張るものがあった。


「お嬢様、こちらに最近送られてきた新たな契約書のコピーがありましたので、目を通しました」とサエが報告する。


セリカはその契約書に目を通すと、すぐに奇妙な点を発見した。「また違約金の条件が含まれているわね。しかも、内容がさらに巧妙に書き換えられている…」


サエが微笑み、「ええ、細かな言い回しで内容を複雑にして、素人が見落としやすくしているようです。しかし、この契約の要点を要約してみると、簡単に問題点が見つかると思います」と、すぐに契約書を要約して見せた。


「これは、少しでも返済が遅れると全財産が没収されるような条件ですね。お嬢様、このような契約は、絶対に受け入れるべきではありません」とサエは冷静に分析した。


セリカはサエの洞察力に感心しながら、「そうね、サエ。ありがとう。あなたの力がなければ、気づけない部分も多かったわ」と感謝を伝えた。


ドライドも静かにうなずき、「サエ様のような才能を活かせることが、ディオール領の強みになっています。彼らの策略に対抗するための良い盾となるでしょう」と述べた。


こうしてセリカは、サエの協力を得ながら、ディオール領に潜む悪徳業者たちの影響を排除するため、さらなる知恵を絞っていくことを決意した。そして、悪徳業者たちの陰謀に対し、法律や管理体制を強化し、ディオール領の安全と未来を守るべく行動を開始したのだった。



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