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第4話

「夜行」の灯りが揺れる中、美月は首を傾け、三杯目のウィスキーを流し込んだ。


アルコールが喉を焼き尽くすように感じるが、心の中に渦巻くモヤモヤは消えない。

ダンスフロアの中央で、美月は細いヒールを響かせて激しく踊っていた。

赤いドレスがひらひらと翻る中、ふと視線を横に向けると、深山一真がカウンター横に立っていた。

本来なら美月の傍にいるはずなのに、今は一歩も桐谷琴音から離れずに守っている。


桐谷琴音は何かを言っていたらしく、彼女は深山一真近づけ、唇が彼の耳元に触れそうになっていた。

その冷徹な男が、桐谷琴音に近づかれるたびに、耳先がほんのり赤くなる。

美月は冷笑を浮かべた。


振り向くと、美月の周りはすでに若い男たちに囲まれていた。

「美月さん、飲みに行こうか?」

「LINE交換しませんか?」

「ずっと会いたかったんだ、美月さん。噂以上に美しい。」


美月は追い詰められ、動けなくなった。

断ることもできず、男たちはどんどん寄ってきて、なかには彼女の腰に手を回す者もいた。


「深山一真!」美月はもう我慢できず叫んだ。

その時、彼はようやく彼女の困っている様子に気づき、眉をひそめて人混みをかき分けて歩み寄った。

黒いスーツが彼の筋肉を際立たせ、一目で周囲の若者たちはしぶしぶ後ろに退いた。


「申し訳ございません。困っているところ、気づけませんでした。」深山一真は美月に向かって低く言った。


「知らなかった?」

彼女は一歩近づき、紅い唇がほぼ彼の顎に触れる。

「それとも、知りたくなかった?」


彼女の息がふっと近づき、深山一真は喉を一度ごくりと鳴らして後退りながら言った。

「お嬢様、酔っています。」


「安心して、私が嫁に行けば、桐谷琴音の世話は存分にさせてあげるわ。」

美月の声は、その時、舞台から突如として響いた叫び声にかき消された。


スタッフが鉄の檻を持ってきて、中には二匹の犬が興奮しながら歩き回っている。


「今夜の特別ショー!」司会者が興奮して叫んだ。

「ブラックストリームVSレッドファイヤー、ベット受付開始!」


美月は眉をひそめた。

「夜行」ではこうした血生臭い闘犬ショーがよく行われているが、彼女はそれが嫌いだった。

立ち去ろうとしたその時、鉄檻が「ギシギシ」と音を立て、錠が緩んで開いた。


その一瞬!

大きな犬が檻の扉を押し開け、人々に向かって猛然と突進してきたーー!!


周囲の叫び声が響く中、美月は深山一真が即座に反応したのを見た。彼は桐谷琴音を必死に抱きかかえ、震えるように安全通路へと向かっていた…


その同時に、 涎のついた獣の牙が美月の目の前に迫っていた。美月は恐怖に凍りつき、その場に立ち尽くして動けなかった…


「アァ……」

激しい痛みが全身を走った

血が噴き出し、美月は地面に崩れ落ちた。

すると、その犬が再び彼女に飛びかかろうとした時!


「バン!」

銃声が耳をつんざき、鼓膜が痛む。犬がその音に反応して、地面に倒れた。


彼女が最後に見たのは、深山一真が銃を持って桐谷琴音を守る背中、

そしてグルグル回って暗くなっていく天井だった。






消毒液の匂い。


美月は激しい痛みの中で意識を取り戻し、最初に目にしたのは白い天井。

脚が鉄板で焼かれたように熱く、息をするたびに傷が引き裂かれる。

彼女は辛うじて顔を動かし、目の前の光景がまだ完全に目を覚まさない頭に再び衝撃を与えた。


病室のドアの前で、桐谷琴音は深山一真の胸に顔を埋め、泣きながら言った。


「一真さんは姉のボディーガードなのに、どうして私を守ってくれたの……私が来なければよかったのに…」


男の骨ばった手が彼女の背中を軽く叩き、その声は驚くほど優しかった。


「琴音お嬢様、そんなに自分を責めないでください。」

「何度生まれ変わっても。」

彼は少し言葉を切り、指先で彼女の顔の涙を拭った。

「俺は必ずあなたを守ると選びます。」


「どうして?」桐谷琴音は涙を浮かべて彼を見上げた。


深山一真は彼女を見つめ、抑えきれない想いが瞳に滲んでいる。


「俺は…」


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