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第6話

三日後。

美月一人でウェディングドレスを試着しに行った。

何とか気に入ったドレスを見つけたが、すっかり夜になってしまった。


「そろそろ帰ろうか」と思い、美月は店から出た。


突然、背後から誰かに襲われた。

薬の強い匂いが鼻に突き刺さり、彼女は数回もがいた後、意識を失った。



目を覚ますと、美月は自分が何も見えないと気づいた。

目隠しをされ、両手は椅子に縛りつけられて、動くこともできない。


「パーン!」

空気を切る音が響く。

鞭の音だ。


鞭が無情に振られ、美月は背中を丸めて痛みに耐えた。


縄が手首を締めつけ、未知の恐怖が目の前の闇を一層深くした。

美月は唇を噛みしめ、悲鳴を必死にこらえた。


「お前は、触れてはいけない人に手を出した。」

知らない男の声が遠くから響いた。


「ビシッ!ビシッ!ビシッ!」

鞭が続けざまに降り、空気を裂く音が耳をつんざく。

そして降れる度に美月の肌が裂けていく。


美月は必死に唇を噛みしめ、声を出さないように耐えた。

誰だ?

誰がこんなことを?


意識が朦朧としてきた頃、ようやく暴行が止まった。


その後、電話の音が響いた。

「ご指示いただいた任務を完了いたしました。」


電話の向こうから、聞き覚えのある男の声が聞こえた——

「彼女を戻して。」


その一言に、美月の血が凍りついたように冷たく感じた。

深山一真だ。

深山一真がこの男を命じたのだ!


桐谷琴音に鞭を一発振っただけで、九十九発の鞭でお返しするってこと?!

激痛が全身を包み、美月は耐えきれず、完全に意識を失った。


病院。

美月は目を覚まし、背中の傷が熱く焼けるように痛むのを感じた。

外で、看護師たちがささやく声が聞こえてきた——


「見て、あの人。すごくイケメンだね。彼女さんにすごく優しいし…」

「ほんとだよね、大した傷ではないのに、あんなに心配してるなんて。ほら、304号室の人、傷だらけなのに誰も来なかった。」


美月は点滴の針を抜き、壁を支えにしながら、ゆっくりと廊下に向かって歩き出した。


やはり、隣病室の前で深山一真を見かけた。

彼はクラスを持って、桐谷琴音に水を飲ませていた。

桐谷琴音は甘えるように何かを言って、深山一真は指で彼女の口元の水を拭い、優しい眼差しを向けていた。


美月は壁に寄りかかりながら、その光景を見つめ、目の奥がじわりと潤んでいくのを感じた。


美月は自分を理解できなかった。

なぜ、もう諦めると思っていたのに、心臓がこんなにも痛むのか。

まるで鈍い刃で少しずつ肉を削られているかのようだ。


泣くな、美月。

彼女は自分に言い聞かせた。

だって、誰も心配してくれないから。


退院の日、美月が家に到着したばかりの頃、後ろからはお馴染みの足音が聞こえてきた——


深山一真だ。


二人は視線を交わし、無言のままで立ち尽くし、美月の携帯が突然震え、桐谷正志の名前が画面に表示された。


「明日、琴音の誕生日パーティだ。」

「最近、琴音が泣いてばかりで、君と仲良くしたいって言ってる。来てくれ。」


「行かない。」


「そこまでする必要はないだろう?」桐谷正志は声を強めた。「天野家の方ではすでに日取りが決まっていて、君が嫁いだ後は……」


彼女はすぐに電話を切り、隣に立つ深山一真を見上げた。

「行くべきだと思う?」


男の輪郭が灯りの下で一層冷たく見えた。


深山一真は数秒間沈黙した後、低い声で言った。

「はい。」


「わかった。」

彼女は口角を少しだけ引き上げ、「じゃあ、あなたの言う通りに。」


誕生日パーティは桐谷家の古い邸宅の温室で行われた。

美月が墨緑色のドレスを着て到着した時、すでに多くのゲストが集まっていた。


シャンデリアの下、桐谷琴音はピンクのフリルのドレスを着て、まるで本物のプリンセスのように周囲に囲まれていた。


「姉さん!」桐谷琴音は嬉しそうに駆け寄り、彼女の腕を取ろうとした。


美月はそれを軽く避け、机の上に並べられた桐谷正志からの誕生日プレゼントに目を向けた。限定版のバッグ、ティファニーのネックレス、そしてポルシェの鍵。


「琴音は小さい頃からいい子で、それはそれは可愛くて。」

桐谷正志は優しそうな顔で桐谷琴音の隣に立ち、まるで……以前、美月の隣に立っていたように。


その時、白いドレスを着た自分が、父に高く持ち上げられ、母は優しく微笑んでいた。

今、すべてが変わってしまった。


ケーキを切った後、誕生日パーティーは社交の場となった。


桐谷琴音の親友が彼女を引き寄せて小声で言った。

「琴音、今日こんなにたくさんの御曹司が来てるけど、もしかして、お見合いさせるつもり?」

「でも、聞いた話では、もう天野家と婚約してたんじゃないの?」


桐谷琴音は少し笑って、わざと美月の方を見ながら言った。

「あれはもう破棄されたわ。」

「それはよかったよ、天野蓮は今や植物状態らしいじゃない。あんな人のところに嫁いだら、孤独死するだけじゃない?」


親友は目を細めて言った。

「じゃ、琴音、どんな男がタイプ?」


周りのゲストも好奇心で桐谷琴音に目を向けた。

桐谷琴音の顔が赤くなり、ゆっくりと答えた。

「まず、私をすごく愛してくれる人。私の名前を胸に刻むくらいの愛が欲しい。第二に、勇気がある人。望月山に百年に一度咲く『望月バラ』を摘んでくれる人、第三に……」

その時、宴会場の扉が突然開いた。


「風間様からの贈り物をお持ちしました。琴音様、誕生日おめでとうございます!」

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