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妹の代わりに受付嬢をしているのは、イケメンでつよつよな冒険者〜ただし、妹にしか興味がない残念なシスコン野郎です〜
妹の代わりに受付嬢をしているのは、イケメンでつよつよな冒険者〜ただし、妹にしか興味がない残念なシスコン野郎です〜
星空永遠
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月22日
公開日
1万字
連載中
俺は妹のことが好きだ。むしろ愛していると言ってもいい!板よりも板な、その乳も、低身長なのがコンプレックスなのも、中でも外でも少し生意気なところも、すべてが愛おしい。 俺の妹は世界で一番可愛い!だから、そんな可愛い妹からのお願いなら、どんなことでも聞いてやる。 風邪で受付嬢が出来ない?よし、お兄ちゃんに任せろ。俺がお前の代わりに受付嬢をやってやる! こうして、俺は妹の代理で受付嬢をすることになったのだが…… 「受付嬢って、クレーム処理とか冒険者の愚痴とか聞いてて、正直、面倒なんだよねぇ〜。だから明日からも私の代わりにやってくれる?可愛い妹のお願いなんだから、むしろ聞いて当然じゃないの?」 兄の前でも生意気な口を聞ける妹、マジで可愛い。だから妹のどんな無茶ぶりにでも答えるよ。だって、それが兄ってものだから。 そんなわけで俺は今日も受付嬢やってます。もちろん、冒険者の仕事も忘れてないぞ。 なんという過重労働。可愛い妹からのお願いとはいえお兄ちゃん、そろそろ過労死しそうだよ。

プロローグ

「ユエちゃ〜ん! こっち向いてー!」


「ユエさん。オレでも出来る依頼ってない!?」


「仕事が終わったら飲みに行かない?おれ、ユエちゃんと二人きりで飲みたいな〜」


 見るからに汗臭そうなオッサンたちが、私……いや、俺を目当てに声をかけてきた。


「仕事が終わったら、私の帰りを待ってる兄に食事を作らないといけないので。だから、ごめんなさい」


 息を吐くように嘘をつく俺の名はアレン。今はワケあって女装をして、ギルドの受付嬢をしている。


「兄想いなユエちゃんも可愛すぎか!」


「兄妹仲が良すぎるとか羨ましい〜」


「来世では、オレがユエさんの兄貴になる予約しとかなきゃ!」


「……」


 誰だ? 最後にえげつない発言した野郎は……ぜってぇ許さねぇ。


「最近のユエちゃんって別人みたいだよね」


「わかる〜! 前のメスガキも良かったけど、今の清楚な感じも良いっていうか〜」


「「「結論、ユエちゃんは可愛い!!」」」

「だよな〜!」


 受付嬢なのにメスガキ発言をしているユエは可愛い。それには同意だ。


 だがしかし、今も来世でもユエの兄は俺だ。異論は認めん。


 ユエは正真正銘、俺の実の妹。


 そんな俺は妹の格好をして、お得意の営業スマイルを浮かべながら働いている。しかも、男のときは冒険者をしながら。


 なんという過重労働。可愛い妹からのお願いとはいえお兄ちゃん、そろそろ過労死しそうだよ。


 ☆  ☆  ☆


 ここは、とあるギルド。


 冒険者たちは、自分のレベルやパーティーレベルに合わせて、掲示板に貼ってあるクエストをやる。


 簡単なところでいえば、スライム狩りや薬草採取など。それなりのレベルだと強い魔物を倒したり、ドラゴン退治をする。


 狩ってきた魔物の一部や魔石なんかを売って生活するのが冒険者。


 冒険者という響きだけで憧れる者も数多くいる。この世界で冒険者になれるのは十三歳から。


 それ以下の子供たちは早く冒険者になりたいのか棒を振り回して、魔物討伐ごっこをしている姿を街ではよく見かける。


 だが、子供が考えているほど現実は甘くない。冒険者の多くは若くして命を落とす。その理由の一つはダンジョンだ。


 何十階もあるダンジョンは一度潜れば二、三日はダンジョン内で寝泊まりする者もいる。


 未だかつて最上階まで攻略した者はいないと言われるほど、ダンジョン攻略は過酷なものだ。


 それに加え、冒険者は依頼中に風呂に入れないなんて当たり前だし、戦いが終わったと思ったら、次の戦いが始まるなんてのも日常茶飯事だ。


 危険区域じゃなくとも、テントを貼って就寝していた冒険者たちが腹を空かせていたドラゴンから食べられた、なんて話もある。だから、冒険者は決して楽な職業ではない。


 それでもデカい魔物を狩り、その魔物が高く売れれば、その金で飲む酒は極上だ。


 冒険者の最終目標は魔王を倒すこと。なんて言われているが、今まで魔王に会ったなんて者は見たことはないし、もし仮に魔王を見たものがいれば、そのパーティーは全滅だろう。


 この街では魔王という存在がとうに忘れられている。が、もし魔族が街を攻めてきたらどうするのか。


 そのための冒険者だ。だからこそ冒険者は街の外に出てクエストをして、日々レベルを上げていくのだ。


 故に冒険者は、まわりから尊敬されたり感謝されたりする。が、最近の冒険者は、やや気が緩んでいる気がする。そもそも空気が以前とは違う。


 用もないのにギルドに集まる冒険者たち。

 それもこれもユエを目当てに群がってくる変態共。


 ……ユエは誰にも渡さない。


「オレさ〜。ユエちゃんのお兄さんと知り合いなんだよね。だから今日はオレとユエちゃんとお兄さんの三人で食事しない? オレ、うまい酒知ってるよ」


「お前なんか知らない」


「え? ユ、ユエちゃん?」


 ……ヤバい。気を抜いたら、うっかり素の声が出てしまった。それもこれも、目の前の野郎が悪い。


 俺と知り合い? ユエとお近付きになりたいからって、あからさまな嘘をつくな。


「今日は、どうしても兄と二人きりで食事がしたいんです。それと用がないなら、私に話しかけるのはやめてください」


「オレはぁ〜、用がなくてもユエちゃんと話したいんだよぉ〜。……ヒック」


「私は受付嬢としての仕事がありますので、クエストを受ける気がないなら、今すぐお引き取りください」


 さっきから呂律もろくに回ってねぇし、なんだか酒臭い。さてはコイツ、どこかの酒場で一杯ひっかけてきたな。


「ユエちゃんはつれないなぁ〜。でも、さっきスゲーイケボが聞こえたような?」


「あなたの幻聴だとは思います」


「うぉー! いつも聖女のように優しいユエちゃんから冷たくあしらわれた〜! 興奮するー!」


「おれは今から魔物の討伐したいので、クエストお願いします!」


「わかりました。こちらへどうぞ。やる気のある冒険者様は私のところに来てください」


 今日もユエとして完璧だな。いや、本物のユエのほうが一億倍かわいい。


 そんなユエこと俺は本日も受付嬢の仕事を頑張っています。

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